第2話 間違エル

「ねえ、見えてるんでしょ?」


「……」


「ねえねえ、見えてるんでしょ?」


「……」


「ねえねえ、本当は気が付いてるんでしょ?」


 無視し続ける。

 生まれつき霊感がある故に、こういうことには昔から慣れている。

 こういうのは、無視し続ければいずれ消えるのだ。


「いつまでお風呂入ってる気なの、早く出なさぁい」


「……はぁい」


 母から呼ばれて、湯船から上がった。

 さすがに、粘り過ぎたようだ。


「なーんだ、やっぱり気が付いてるんじゃない」


「えっ?」


 天井から逆さまにダランとぶら下がっている女が母の声を発した瞬間、今夜は母が町内会の旅行で家にいなかったことを思い出した。

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