閉架の中の人

そうざ

The Person in the Closed Stack

 業務カウンターでこっそり電子図書を読み耽っていると、現れたエーダさんが馴れ馴れしく僕の肩を揉みながら猫撫で声を出した。

「閉館後に何か予定あるぅ?」

 いつもならば電子端末を取り上げ、挨拶代わりに僕の脳天をひっぱたく癖に、どうやら何か面倒臭い仕事でも押し付けようという腹らしい。

「閉架書庫に入ってみたくなぁい?」

 近々閉架図書を点検整理するとは聞いていたが、今日がその日とは思わなかった。閉架書庫には貴重な書籍類が保管されている。防犯上の理由から、実際に作業を取り仕切る〔特命司書〕にしか点検整理の実施日時は知らされない。今回、エーダさんはその〔特命司書〕に選ばれたのだ。

「作業者の一人が急病でね、人が足りないんだよぉ」

 作業は〔特命司書〕の他に四人の〔準司書〕を加えた計五人で行う決まりで、もし当日に一人でも作業者が欠けたら一旦延期になり、これもまた防犯上の理由から、五人の作業者は改めて選定される事になるらしいが、次にまた同じ人間が選ばれるかどうかは判らない。

「俺さぁ、千載一遇の好機を逃したくないんだよぉ」

 前回、閉架書庫が開封さられたのは百年前の事。今回の点検整理が完了したら、次回の開封はまた百年後になる。その間は完全に封印され、誰も入る事は出来ない。

 閉架書庫に足を踏み入れた事のある人間は、図書業界で羨望の的になる。殊に〔特命司書〕の任を果たしたとなれば、司書として箔が付く。

「古い珍しい書籍が沢山詰まってる書庫だぞぉ~、こんな機会がなきゃ滅多にお目に掛かれないぞぉ~」

 僕は無類の書籍好きだ。三度の飯の最中もその前後でも必ず何かしらを読んでいる。書籍と言っても勿論、全て電子図書で、紙の書籍を実際に手に取った事のある人間なんてこの世界にはほとんど居ない。それこそ世界に冠たるここ皇立図書館の関係者くらいだろう。僕がここのアルバイトを希望したのも紙の書籍に対する憧れがあってこそだ。

「でも、バイト風情の僕が入れる訳が……」

「そこはまぁ、〔特命司書〕に選ばれたこの俺が何とかするからさぁ」

 残業代も出るぞ、と微笑むエーダさんを余所に僕は、遂にこの時が来た、と胸を躍らせていた。


               ◇


「サイズはフリーだから。それから首のファスナーは二重になってるから」

 それだけ言うと、エーダさんは三人の〔準司書〕と作業手順の最終確認を始めてしまった。

 ロッカールームの鏡に、まるで宇宙飛行士のような僕が映っている。まさかこんな大袈裟な準備が要るとは思ってもみなかった。この先、数時間はトイレに行けないと言うので、食事は勿論、水分の摂取も制限された。

 その上で長ったらしい誓約書を書かされた。開架図書の整理整頓に携わった事を口外しない。書庫内の書籍を持ち出さない。書籍を修復不能なまでに損傷させた場合の賠償責任はどうたらこうたら――全文に目を通すまでもなく片っ端から承諾させられた。

 そして最後に、僕の為に急遽用意された偽造IDカードを見せられた。僕は晴れて四人目の〔準司書〕になった訳だ。

 気密室で念入りに全身の滅菌処理をし、いよいよ勇者達の出陣――となったが、小さな専用昇降機に鮨詰めになった僕等の何と無様な事か。

「ここは核攻撃でもびくともしないらしいよ」

「いざという時には政府首脳とかが逃げ込むんですかね」

「冗談じゃない。ここは人類の至宝おたからたる神聖な閉架書庫エリアだぞ。政治家ぞくじんに土足で踏み入られて堪るかってんだ」

 そう言ってエーダさんが笑うと、皆も調子を合わせて笑った。緊張感がないのか、緊張故の軽口なのか。

 やがて地下三千メートルにまで到達した昇降機は無骨に停止し、僕達を陰気な世界へと吐き出した。

 そこには暗闇しかなかった。忽ち不安が増した。

 エーダさんはそんな僕を鼻で笑い、ヘルメットの紫外線防止型ライトを灯した。途端にまた別の不安が僕を強張らせた。

 思いのほか間近に怪物が大口を開けていた――と見えたのは、書庫の巨大な扉に細密に施された彫刻だった。闇とライトとで陰影が強調され、今にも雄叫びを上げそうな迫力だ。

「元々この扉は古代カッパン文明の図書神殿に取り付けられていた物だ。表面の彫刻はカッパン文明が奉じていたシッピツという知の神だ。かつて書物は知の象徴だったって事だな」

 扉の中央、丁度シッピツの禍々しい口腔内に小さな穴が五つ並んでいる。鍵穴らしい。

「君もこれを持って」

 エーダさんから手渡されたのは、煤けてはいるものの工芸品と呼ぶに相応しい細工入りの鍵だった。

 四人の作業者が横並びになり、それぞれが鍵穴の前に位置した。僕も倣って端に立つ。地上世界ではデジタルの偽造IDが幅を利かせるが、閉架書庫のある地下世界ではアナログの鍵が物を言うらしい。

「では、先ず鍵を差し込んで下さい」

 エーダさんがいつになく神妙に音頭取りをする。

「せぇので行きますよ……せぇの」

 一斉に鍵を回した。何かが外れる鈍い音が響いた。無事に解錠されたらしい。

「これが五人も必要な理由だったんですね」

「他にもある」

 エーダさんが顔を綻ばせ、率先して扉に手を掛けた。一人、二人、三人と加わってもびくともしない。僕も重労働に加わらざるを得なかった。

 ようやく扉が手前に開かれると、長い年月動いていなかった空気に混じり、古書特有の臭いが辺りに漂った――筈だが、全身を作業服に包まれているので実感は出来ず、書庫内の温度や湿度を常に一定に保っている空調システムの作動音だけが微かに聞こえるだけだった。

 書庫内の電灯は頼りない。これも熱線や紫外線を放出しない特殊な光なのだと言う。

 薄明りの下、ビル街のようにそびえる書架と、そこに収められた書籍の列が浮かび上がる。小説、評伝、学術書、辞典、図鑑を始め、漫画、絵本、大衆雑誌の類まで、古今東西のありとあらゆる言語で記された書籍が揃っている。

 どれがどのくらい貴重で、どれくらいの価値があるのか、僕にはまるで判らない。が、それぞれに競うように物体としての存在感を醸していた。

 これが本来の書籍の姿なのだ。

 地上でも書籍はされている。しかし、全てがデジタルデータ化されていて、物としての実体はない。書籍は『物』なのか、『情報』なのか――そのどちらでもあるのだろうが、『本物』という言葉が脳裏を掠めた。ここに収められている物が本当の『本』なのだと思った。

「それじゃ、手分けして状態を確認して行くぞ」

 点検整理は単純な作業だった。携帯型劣化探知カウンターを書籍に近付け、紙の傷み具合を調べて行く。許容範囲外の劣化を感知すると、赤い警告ランプが知らせてくれる。当該書籍を書架から取り出し、追って防劣ぼうれつ処理班が然るべき処置をするのだと言う。

 楽しい作業を期待していた僕に与えられたのは、退屈な時間だった。司書達が選び出した書籍をカートに載せて一箇所に集めておく、単なる雑用且つ力仕事だ。

 残業手当の目算を立てながら書架の谷間を右へ左へ往復する単調な時間が始まった。

 除けられた書籍は程度の差はあれ褪色していて、染みが折れや虫食い穴がある。表紙が紛失しているもの、背の部分からばらけそうなもの、中には焦げ跡があるものや落書きされているものもあった。どれも乱暴に扱われた末に貴重な書籍として救い出されたようだった。

 側に〔準司書〕の一人、ビーザキさんが居たので、僕は感嘆を込めて問い掛けた。

「結構、保存状態の悪い書籍があるんですね」

「俺達が確認してるのは傷みじゃないよ」

「えっ? じゃあ、何をチェックしてるんですか?」

「劣化だよ」

「傷みと劣化、何が違うんですか?」

 すると、通り掛かったシーモトさんが先に回答した。

「傷みは、当館うちに所蔵された時点で元々存在していたもの」

 いつの間にか背後に居たデームラさんが説明に割り込んだ。

「劣化は、所蔵後に自然にまたは事故的に負ったもの」

 要するに、室温や湿度を的確に管理された空間でも百年という歳月は一部の書籍に僅かながら劣化を起こさせる為、防劣ぼうれつを施す。修復ではなく、飽くまでも防劣。人の目では判断出来ない劣化の進行を食い止めるのが、点検整理の役割なのだ。

「おぉい、こっちの本も運んでくれぇ」

 遠い闇の彼方からエーダさんの声がした。そそくさと駆け付けると、防劣の対象物がカートの上に山積みになっていた。

 カートを押そうとしても、びくともしない。予想以上の重量だった。書籍が集まるとこんなにも重いのか、これぞ情報の真の重みか、と思い知らされた。

「おっ……押せませんっ」

「他のカートも使って少しずつ運ぶんだよ」

 山の中に一際ひときわ分厚い本があった。表紙の切れ目から覗けたページには人の名前に数字が添えられ、無味乾燥に列記されているだけだった。

「あぁ、それは電話帳。個人情報保護の意識がなかった時代の産物だ。至る所に無造作に置かれていて、誰でも只で自由に閲覧出来たらしい。野蛮な時代の象徴だな」

 次は写真の集合体。若い女性が色褪せた表紙で笑っている。何故かくすんだビニール袋で包まれていて、中身までは確認出来なかった。

「通称、ビニ本だ。そのビニール包装も当時のままらしい。その道のマニアならビニールだけでも欲しがるだろうよ」

 そして、版は小さいがその割に厚みのある冊子。

「トリセツだ。家庭用電気機器の取扱説明書って訳だ。実機の小型化に反比例してトリセツの厚みは増して行く傾向にあったらしい」

 子供の筆致らしい汚い文字と、そこに赤い〇や×が記された薄っぺらいノートのようなものもある。

「それは恭しく扱えよ。初代皇王が幼少時に解いた算数のドリルだ。後にも先にも満点を取ったのはその一冊だけらしいから尚更に貴重だ」

 僕は一冊一冊を慎重にカートに振り分け、もう何度目か分からない運搬用昇降機への往復に出掛けた。

 自分自身の薄い影を道連れに書架の山峡を進んでいると、不図、視線のようなものを感じた。司書達は黙々と作業に当たっている。他に誰も居ない空間だ。

 それぞれの書籍がそれぞれの経緯でこの書庫に集まって来た。読み飽きられ、読み捨てられ、中にはこの世に誕生したものの歯牙にも掛けられず、廃棄される寸前に救われた書籍もあるかも知れない。

 そんな紆余曲折の末、あの実に恐ろしいシッピツという大喰らいの怪物に呑み込まれ、やっと安住の住み処に辿り付いた書籍達。百年振りに訪れた人間達をどんな気持ちで見詰めているのだろう――そんな風に思いを馳せると、ここが養老院のようにも墓地のようにも見えて来る。否、ここはシッピツの胃袋の中だ。そして今、僕自身も呑み込まれている。作業服の中で鳥肌が立つのが判った。

 運搬用昇降機に書籍を預け、僕は大きな溜め息をいた。汗が作業服と身体とを不快に密着させる。ここに来てどれくらいの時間が経ったのだろう。飲まず食わずだから、疲労が回復する余地がない。

 また薄暗い通路を引き返していると、誰かが置いたカートの山の一番上に載せられたファイルに目が留まった。表紙の隅に貼られた分類項目欄には『小説』と記されている。休憩がてら何気なく表紙を開けた。手書きの紙がファイリングされている。

 タイトルらしき文字に続く文章は縦書きだった。まるで複雑な図形の羅列にしか見えない。どうやら東洋の文字らしい。複雑な形の文字の要所要所に比較的単純な形の文字が組み込まれている。世界的にも珍しい独特の文字文化を形成していたという極東の小さな島国――何という名だったか、その国の人間が記した『小説』なのだろう。

 国名を思い出すのに必死で、僕はカートを押す手から意識が離れてしまった事に気付かなかった。次の瞬間、書籍の山のバランスが崩れた。慌てて支えようとするも間に合わず、床面へと雪崩を起こしてしまった。

 書庫の空気が一瞬にして凍り付いたような気がした。音を耳にした司書達が一斉に駆け付けて来る。ヘルメット越しでも皆の顔が引き攣っているのが判った。

 僕の足下には表紙やページがばらけた本が散乱していた。僕は一瞬の放心状態から我に返り、直ぐ様、散らばった本を拾い集めた。

「馬鹿野郎っ! 慎重に拾い上げろっ!」

 エーダさんの怒声が響く。

 僕の掌から、慌てて拾い上げた紙片が薄氷のように脆くも壊れて行く。床に落ちる紙片の中には、木材の削り滓のように飛散するものや、粉状にまで砕けるものさえあった。

 僕は他の司書に両腕を引っ掴まれ、その場から退けられた。さっきまでの汗が一瞬にして蒸発し、気化熱の作用で身体が冷たくなる。僕は、皆の慌てつつも冷静な作業振りを焦点の定まらない目で見守るしかなかった。

 その時、少し離れた書架の下から紙切れが覗いている事に気付いた。東洋の文字――さっき見たファイルの一枚だ。雪崩の勢いであらぬ所まで滑って行ったらしい。

 僕は震える指でそれを拾い上げた。すると、紙の表面から黒い物が剥離し、虚空に舞った。咄嗟に腕を差し伸べると、空気に流れが起き、それを更に中空へと舞い上がらせた。薄暗い電灯の下、それは桜の花弁のように踊った。

 僕は平静を取り戻しながら、ゆっくりと落下して来る文字らしきもの――東洋の古代文字など解さない以上、としか形容しようがないそれを慎重に受け止め、恐る恐るまじまじと見入った。

 思わず司書達を窺う。作業に夢中で誰もこの一大事に気付いていないようだった。

 僕は原稿の、多分この辺りから剥落したのだろうと勝手に判断した箇所に、確保した文字を押し付けた。文字は大人しく定着してくれた。そして、僕は何食わぬ顔でファイルの束の中に原稿を差し入れた。失敗に失敗を重ねたくないという心理が僕を突き動かしていた。

 その時、僕はまた何かの視線を感じた。


               ◇


 翌日から僕は何食わぬ顔でカウンター業務をこなしていた。

 僕の所為で損傷を負った幾つかの本は何とか修復が可能という事だったが、全ての責任を負うのは〔特命司書〕のエーダさんで、向こう半年の減給処分が下された。

 エーダさんにとって今度の一件は、羨望の的どころか、箔が付くどころか、汚点になってしまった訳だが、不自然なくらい僕に恨みがましい事を言わなかった。

 そもそもバイト風情の僕を偽造IDで閉架書庫に入れた事実が明るみになれば、エーダさんを始めそれを知っていた〔準司書〕達も減給程度では済まされない。変に僕を叱責して不正を明るみにされたら敵わない、と踏んでの態度なのだろう。

 しかし、僕がやってしまった本当の大罪――文字の剥落の件については、未だに誰も気付いていない。

 僕は、あやふやな記憶を頼りにあの全く読めない文字を館内の汎用レファレンス用コンピューターで調べてみた。僕が棄損した紙に書かれていたのは、何処の誰の何という作品だったのか、古今東西のあらゆる書籍情報が詰まったアーカイブならば何かしら判る筈だ。

『極東』『島国』『小説』『題名』『四文字』――僕は暇を見付けては思い付くままに検索を重ね、やがて或る題名に辿り着いた。


『人間失格』


 こんな形の文字が並んでいた気がするが、何処となく違うような気もする。ピースの配置を間違えたジグゾーパズルのような違和感が付き纏うのは何故だろう。

 この題名が四つの『漢字』から成る事や、作者名、執筆された年代、大まかな内容等も判ったが、僕の関心事はそこにはなかった。

 僕はこの四文字を電子端末の中でいじくり回した。やがて、瞼に焼き付いた形と自分が犯した過ちの正体とがぴったりと一致する瞬間が訪れた。


『入間失格』


 あの日、薄暗がりの虚空を舞った文字は『入』だった。僕はそれを正しく戻せた筈だ。なのにこのもやもやは何だろう。

 不図、古代カッパン文明の知の神シッピツの咆哮が聞こえた。

「よう、何やってんだ?」

 はっとして振り返ると、いつの間にかエーダさんが居た。

「あ……あのう」

「何だ、まだ気にしてんのか?」

 本当に綺麗さっぱり水に流してくれたのか、への定期的な監視なのか、エーダさんはどちらとも付かない笑みを湛えている。

「俺達はを全うする仕事をしたんだぞっ、もっと胸を張れぇ」

「正義だなんて大袈裟な……」

「大袈裟なもんか、皇立図書館ここの閉架書庫はあらゆる正当性を担保してるんだぞぉ」

?」

「まぁ、これは都市伝説の類なんだけどな……」

 エーダさんが急に声をひそめた。

「あらゆる文書は、閉架書庫に所蔵された途端にそれが原本オリジナルになって、世の中に流通している物は写本コピーに過ぎなくなるらしい」

 僕の怪訝な顔を見て、エーダさんは幾らか語気を強めた。

「例えば、原本オリジナルに誤字があったとしても、世間は写本コピーを通じてそれを正しい記述と認識してしまう」

「明らかな間違いがあったら誰かが指摘するでしょう?」

「出来ない!」

 エーダさんの顔が迫って来る。

「何故なら、世に溢れる無数の写本コピーが独りでに原本オリジナルの内容に準じてしまい、からだ。それが正当性って言葉の意味さ」

「……そんな、そんな馬鹿な」

「そんな馬鹿な事を未来永劫に亘って具現化させるのが、知の神シッピツ様の御業みわざなんだよ」

 僕は震えそうになる手を気にしながら、電子端末の画面に並んだ四文字をエーダさんに見せた。例の小説がどれだけ有名なのかをどうしても知りたかった。

 一瞬エーダさんの動きが固まって見えたのは、気の所為だろうか。が、直ぐにいつもの調子で言った。

「司書だからって所蔵品の全てを把握してる訳がねーだろ。そもそも俺は小説なんて低俗なもんは読まねーんだよっ」

 そう言って、エーダさんは電子端末を取り上げるが早いか、僕の脳天をひっぱたいた。


 僕は今、誰かに会う度に同じ質問をぶつけている。でも、期待する回答には出合えていない。

 もしくだんの小説を知っている人が居たら、是非、今一度タイトルを確認して欲しい。貴方は『入間失格』の表記に何の違和感も抱かずに居られるだろうか。

 知の神シッピツは今もあの張り詰めた暗闇で僕を嘲笑あざわらっている――そんな気がしてならない。

 次に閉架書庫が開け放たれるのはまた百年後だ。

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