あとのまつり

聞きなれない声がした。しかも、池の方から?声のする方を見ると、カエルが毬の近くを泳いでいる。


ちょっと待って!!!

これって、あれだよね、毬を取ってもらったカエルにキスしてやって、しかも、一緒のベッドで寝ようって言われて

壁に投げつけたら実は王子様でした。

っていう ”危ない王子様” 否 ”カエルの王子様” だよね。


えええええっと でも 僕 王子なんだけど?

キスして、一緒に寝て壁に投げつけたら、、、どうなる訳?うわあ 王子と結婚?そもそも、呪いって王子(僕)でも解くコトできるの?


「キスしてくれるなら 毬を取ってあげるよ」


カエルが池の中から僕を見ながら言う。

僕は黙って頷く。そして、毬を持って僕の前まで来たカエルを素早く捕まえる。 


僕は空いている手の人差し指に自分の唇をつけてから捕まえているカエルの口に押し付けた。


「はい お礼の(間接)キスだよ」


その時にようやく、カエルは自分のカン違いに気づいたらしい


「ゲゲゲ お前 姫じゃなくて オトコか?」

「うん 姫はお姉さまだよ」


僕が答えると、カエルは怒りだした。


「お前 だましたな?」

「何のこと?」


勝手にカン違いしたのはカエルだし、僕はちゃんとキスしてやったよ?


「フン お礼(しかえし)は必ずするからな ゲゲゲ」

「それ 要らないよ」

「まあ 遠慮するな」


カエルはそう言って 池にぽちゃんと帰って行った。



*****


姉上は、その後も健やかに育って、綺麗なお姫様になっている。カエルに遭遇した形跡は無いし、もう毬で遊ぶ歳でもない。もしかして、ここは”カエルの王子様”のお話じゃなかったのかな?


久しぶりに庭の池の近くを通りながらそんなことを考えていると


「よお 王子」


聞き覚えのあるような、無いような声に呼び止められる。

何?姫?って一瞬固まったけど あの時のカエルだと思い出した。あれから、4-5年たっているのにカエルったらよく僕があの時の王子だって分かったね


「おかげ様でばれてないみたい」


面白そうだから話を合わせてみる


「よかったな で俺の受けたのと同じ呪いをお前にプレゼントする方法を学んできたんだ。待たせたな」


「待ってないし、いらないってば」


僕は背中を向けようとしたけれど、時すでに遅し、目の前に影絵が上映されて ナレーションが始まった。


「むかしむかし、あるところに、とても美しい王子様がいました。

 王子はとてもうぬぼれや そして美しい物が大好きで、醜い物が大嫌い。

 そんな王子に恋をしたカエルに 王子は冷たく当たります。

 そして とうとうカエルの呪いをうけて王子はカエルにされてしまうのです。

 その呪いを解く方法はたったひとつ お姫様にキスしてもらう事」



***


その翌年から、なぜかカエルがやって来て僕に求婚する。

その度に 僕は彼女(カエル)をもてなし やんわりと求婚を先延ばしする。だって、冷たく当たったら僕はカエルの呪いを受けて、カエルにされてしまうらしいもの。


いつまでこの生活が続くのかなあ?

でも 僕はカエルになりたくないし、この呪いの解き方だって分からない。っていうか、カエルが求婚に来る、のはまだ呪いじゃないよね?

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