Wizards Storia エピソード0

薄倉&iokiss

プロローグ

かつてこの大陸は一つの大国【ルストリア】が治めていた。


 この世界の魔力の源となる五つの『原魔結晶石げんまけっしょうせき』を人々は大切に守り、魔力のバランスを保ち平和に穏やかな暮らしが続いていた。


 魔力と上手く共存し、豊かになったルストリアの文明は栄えたが、同時に人口は増え続け、それにより小さな争いの火種が、繰り返し起きていく事態となる。

 やがては魔法を武力として使い、殺し合いを始める者たちまで現れた。


 事態を重く受け止めた国王と執政官達は、一国で治めきる事が困難と判断。

 原魔結晶石がある大地を起点に、五つに国を区切り、王家血族者や信頼の厚い家臣達と手分けして各国の統治を行う事とした。



――王国歴 300年


 こうして四方に分かれた四つの国

 北の火の国スルトは火の原魔結晶石

 南の風の国シーナは風の原魔結晶石

 東の水の国ミクマリノは水の原魔結晶石

 西の土の国ラミッツは土の原魔結晶石

 そして中心に位置する国ルストリアは雷の原魔結晶石を守護している。

 ルストリアを宗主国として引継ぎ、調停者の役割を担う。

 四つの国は従属国として誕生した。

 各国の治政は悉く成功し、治安は回復し再び安寧を取り戻した大陸。


 しかし、千年以上続いた平和は、緩やかに、崩れ始めていく……


 大陸全土が平穏であった時代を、覚えている者など地上から消えた頃。

 国境を隔てた事により、芽生えた自国民意識

 それにより生まれてしまった、他国民差別

 貿易による繁栄の差異から生じる、貧富問題

 連なって生まれる、国土領域の不平・不満


 多くの欲望が、多くの思想や理念を生みだしていく。

 魔力を武力に変換する育成が、各国で盛んに行われ、魔力適正者から多くの魔法使いが誕生した。

 やがて、禁忌とされる魔術の研究にさえ着手をしていく。

 各国同士での侵略、略奪の争いは激化の一途を辿る。


 調停者としての役割を担う中央国ルストリアは、どの国よりも強大な軍事力を持つ国となった。

 武力を抑止力として、他国をなだめる為には、力を持たざるを得なかった。

 同時に貿易の中心点でもある為、どの国よりも文明の栄えた国家となる。

 多くの人間がルストリアへ避難、亡命を望んだが、全てが受け入れられる事はなかった。


 落としどころなど見えない争いに、民衆は疲弊し、混乱と憎しみを生んだ。

 やがて国政への不信感が溜まりに溜まり、内戦が起こる国もあった。

 大陸全土にはかつてない程、多くの血が流れた。


 もはや平和は 大陸から国へ、国から個へと

 単位を変えてしまっていたのである。


 このまま混沌とした戦争の果てに待つのは、魔力均衡の崩壊……

 この大陸は五つの原魔結晶石がバランスを保つことにより、住みよい大陸を維持している。

 その為に原魔結晶石は、石守いしもりの家系が代々、強力な結界で守り続けている。しかしこの混沌の世に自国の力を強大化させる、または他国の滅亡の為に、

原魔結晶石の均衡崩しという、最大のタブーがいつ起こるかも分からない。


 均衡の崩壊は、やがて人類の絶滅へと至る。


 古くからの言い伝えによると、均衡を崩した原魔結晶石は暴走を始め、天と地から過剰な高濃度の魔力が溢れだし、それは人体には瘴気となり、猛毒となる。魔力耐性の低い人間は魔力中毒状態となり、成す術もなく絶命に至る。この災厄の死者数は、人口の九割に達し人間は死滅するであろう、と。


 遠い昔、人々が住むには魔力濃度が高過ぎた大陸を、石守の先祖達が長い年月を掛け、安定化させたが、その叡智と努力がこの大乱の戦禍に飲み込まれようとしていたのだ。

 そして高濃度の魔力は、魔法使い達にとっては強力なエネルギーとなり、さらなる力と破壊が考えられる。


――王国歴1481年


 事を憂いた中央国ルストリアと各国の有識者達は連携を取り、大陸全土に危機を伝え「大陸和平条約」を提唱。

 戦禍に巻き込まれている民衆が、これを後押しする形となり、大陸中の空気が争いから平和へと傾き始め、条約は締結に至る。


 しかし、荒み切った国の統治は新勢力の勃興を促し、戦争難民たちの救済問題の具体案も未だ無く、各国領土内における資源の分配や、交戦国の間での負債……


 多くの課題を残したまま、この魔力均衡維持問題を起点に、大陸争いは膠着状態となり、仮初めの平穏が再び訪れる事となった。


――王国歴1484年


 未だ残り火が燻り続ける大陸に、未曾有の危機が迫ろうとしていた……

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