かわいそうなアホウドリ
夢水 四季
かわいそうなアホウドリ
僕の住む島には、冬になると、アホウドリが繁殖のために立ち寄ります。
僕は、アホウドリなんて、ひどい名前をつけられて、かわいそうだなと思いました。
ある日の学校帰りのことでした。
一羽のアホウドリがエサを食べようとしていました。
アホウドリは、小魚やオキアミというエビのようなプランクトンなどを食べます。
しかし、そのアホウドリが食べようとしていたのは、プラスチックのゴミでした。
「そんなもの食べてはダメだよ!」
僕は慌てて駆け寄りました。
アホウドリは、僕の声に驚いたのか、慌てて逃げて行きました。
僕は、アホウドリがゴミを食べずに済んで、ほっとしたのですが、海岸を見渡すと、沢山のゴミが落ちていました。
スーパーのビニール袋、ペットボトルなど、どこかから流れついたものなのでしょう。
僕は、見える範囲のゴミを拾っていきましたが、すぐに手から溢れるほどになってしまいました。
そこで、落ちていたビニール袋で、まだ破れていないものの中にゴミを入れていくことにしました。
その日は、暗くなるまで、ゴミ拾いをして、家に帰りました。
まだまだ、ゴミは残っています。
次の日、僕は家から大きなゴミ袋を持って学校へ行きました。
また、帰り道にゴミ拾いをするためです。
海岸に着くと、アホウドリがいて、何かを食べていました。
「ダメだよ!」
僕は叫びましたが、今度のアホウドリは気にせずに、ゴミをムシャムシャと食べてしまいました。
僕は間に合わず、がっくりしました。
アホウドリは、僕がいるのもお構いなしで、他のゴミを食べようとします。
その度に、僕はアホウドリに「これは食べ物じゃないよ」と注意して、彼がゴミを食べないか見張りながら、ゴミ拾いをしました。
そのアホウドリは、僕が帰るまで、くっついていました。
本当に帰らないといけない時間になったので、僕はアホウドリに「いいかい? ゴミは絶対に食べてはいけないよ」と強く言ってから、別れました。
家に帰った後も、あのアホウドリが、僕の言いつけを守っているか、心配でした。
僕は、毎日、ゴミ拾いを続けました。
しかし、いつまで経っても、ゴミはなくなりませんでした。
冬の終わりの、ある日のことでした。
僕は、いつも通り、ゴミを拾いに海岸に行きました。
冷たくなったアホウドリが落ちていました。
僕はアホウドリを抱えて、島唯一の動物病院に連れて行きました。
お医者さんは、まず汚れた僕の手をよく消毒しました。
それから、悲しそうに「残念だけど、もう死んでいるよ」と言いました。
「また、間に合わなかった……!」
僕は、わんわんと泣きました。
お医者さんが、僕のお父さんに連絡してくれて、その日は家に帰りました。
次の日、動物病院から連絡があったので、僕は学校帰りに、そこへ寄りました。
お医者さんは、まずアホウドリをちゃんと埋葬したことを教えてくれました。
そして、アホウドリのお腹の中に入っていたものを見せてくれました。
沢山のプラスチックのゴミでした。
これが、お腹の中にたまって、ちゃんとした栄養がとれなくなって、アホウドリは死んでしまったのだそうです。
僕は、とてもとても、悲しくなりました。
アホウドリが死んだのは、ゴミを海に捨てた人間のせいです。
僕は、学校の友達にアホウドリのことを話しました。
海岸でゴミ拾いをする仲間が増えました。
でも、まだまだゴミは捨てられていきます。
僕達の仲間が、もっともっと増えて、いつか、かわいそうなアホウドリがいなくなることを願っています。
かわいそうなアホウドリ 夢水 四季 @shiki-yumemizu
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