第122話 ツノ!!!
私は頭に触れて感じる、未知の手触りに驚きと共に不思議な感覚を感じます。
ツノに触れると微かにですが、ツノを触られている感覚があるのです。
つもり、このツノは私の頭から生えていて、神経が通っているということになります。
「ツノですね」
「ツノだね」
【進化ミズモチさん】『ヒデ〜ツノ〜』
ミズモチさんまで認めてくれました。
「あの〜私って、魔物になったのでしょうか?」
「いや、私も初めてのことだからわかんないって!結局、報告案件だよね!これっ!」
「やっぱりそうですよね」
「うん。ちょっと、ユイとギルドマスターを呼んでくるから、これでも被ってて」
そう言ってカリンさんが渡してくれたのは、魔女さんたちが被るようなとんがり帽子でした。
「ありがとうございます」
「うん。店はちょっと休憩の札を出しとくから、誰も入れないようにね」
ショップに一人で残され、私は居た堪れない気持ちでいっぱいです。
何度触っても、ツノがあります。
「ミズモチさん。私はどうなってしまうのでしょうか?」
【進化ミズモチさん】『ヒデ〜ナカマ〜』
「仲間というのは、私も魔物なのでしょうか?」
少しだけショックです。
これまで普通の人として生きてきました。
まだ、体は清いままなのです。
一生に、一度ぐらいは恋愛などもしたいと思ってきました。
ですが、魔物になってしまったということは、もう普通の恋愛はできないということでしょうか?もしこのまま鬼になれば、動物園とかでたくさんの人々に見られるような人生を送ることになるのでしょうか?
私として、尊厳がなくなっていくのかも知れませんね。
「お待たせしました!」
勢いよく扉が開かれて、息を切らせたユイさんがショップへと入ってきました。
私の顔を見たユイさんは何を思ったのか、座っている私の前にきて頭をギュッと抱きしめてくださいました。
「心配しないでください!必ず冒険者ギルドは、ヒデオさんを守ります!」
ユイさんの行動の意味が全くわかりません!!!
ですが、私のことを思ってくれているのは凄く伝わってきます。
「ありがとうございます。ユイさん。自分でも現状が把握できていません。なんとお答えすれば良いのかわかりません」
「大丈夫です!大丈夫ですから!ただ、思ったよりもヒデオさんが落ち着いておられてよかったです。カリンから、ヒデオさんが魔物になって暴走を始めたと……カリンに騙されました」
顔を赤くしたユイさんは、いつものクールな印象から慌てん坊な可愛い印象へと本日はモードチェンジされたご様子です。
「ギルドマスター連れてきたよ!おっ、なんだなんだ?二人ともいい感じか?」
カリンさんはイタズラを成功させたので、上機嫌ですね。
代わりにユイさんはプリプリした顔をして、カリンさんの頭をはたいていました。
「痛っ!マジで痛い!」
「……」
ギルドマスターが吐息のような声を発したので、私はとんがり帽子を脱いで、ツノを見せました。
ギルドマスターはマジマジとツノを見た後に、ユイさんを見ます。
ユイさんもツノを確認して、私の瞳を見ました。
「阿部さん。スマホのステータス画面を開いていただけますか?」
「ステータス画面?」
「はい。もしも異常状態であれば、記載されている可能性がありますので」
「なるほど!思いつきませんでした」
スマホを取り出して、冒険者アプリを起動しました。
私の魔力と連動して、スマホ画面にステータスが表示できる冒険者アプリを作った人は天才ですね。
名前 アベ・ヒデオ
年齢 40歳
討伐数 2317
レベル 10
職業 ビーストテイマー
能力 テイム
登録魔物 ホーンスライム(ミズモチさん)
状態:鬼人化
「はっ?」
私は、自分のステータス画面を見て、驚きの声を出してしまいます。
状態:鬼人化?
このような項目は今までありませんでした。
「やっぱり状態異常なんですね」
ユイさんはスマホの画面を見て納得されました。
ギルドマスターもユイさんの言葉に頷かれました。
「ユイさん?」
「ヒデオさん。今のあなたの状態は、特殊丸薬による現象だと思われます」
「特殊丸薬?」
「はい。私も知らなかったのですが、ギルドマスターが他支部で聞いたことがあるそうです。その時は鬼ではなく、獣人化させる特殊丸薬だったそうです。
特殊丸薬を飲むと、獣人化できるようになって、獣人の力を使えるようになった冒険者がいたと。もしかしたらヒデオさんも状態異常であれば、ご自身で鬼人化を発動と、解除をできるかも知れません。試して頂けますか?」
ユイさんが言われるがままに、私は自分で鬼人化解除と念じて見ます。
ツノがなくなったのか、自分ではわかりません。
「どうですか?」
「なくなっていませんね」
ユイさんの言葉にどうすれば、鬼人化が解けるのか……
「ミズモチさん。何か知りませんか?」
【進化ミズモチさん】『へ〜ん〜し〜ん〜な〜し〜」
「へっ?」
「どうされたんですか?」
「えっと、ミズモチさんが不思議な言葉を言われたので、試してみます」
三人の前で、私は恥ずかしいですが……某有名ヒーローがするようなポーズを取って言います。
「変身無し!」
こういう時は解除とかではないんですね。
「あっ!」
「おお!!」
「ん」
三人に反応がありました。
「どうですか?」
「ツノがなくなりました!」
ユイさんが嬉しそうに報告してくれました。
よかったです。
どうやらミズモチさんの言う通りにしてよかったですね。
【進化ミズモチさん】「へ〜ん〜し〜ん」
「変身!」
ミズモチさんが言うようにポーズを取れば……
「あっ!ツノが生えました」
「生えたね」
「……」
どうやら、私は人間ではいられるようですが、鬼人に変身できる能力を手に入れたようです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます