《4/10書籍発売》道にスライムが捨てられていたから連れて帰りました

第121話 丸薬？

三島さんに怒られたことで、私はすぐにでもお返しをしたい衝動を抑え込みました。態度は平静を装っております。

カオリさんは、私が思っているよりも平然とした顔をされていたので、やっぱり気にされていないようです。

私の内心では葛藤が渦巻いております。

バレンタインのお返しをするのにも礼儀作法があったことを知りませんでした。

ネットで調べて見ると、お返しする物によって相手に伝える意味が変わるそうでう。

カオリさんと三島さんへ購入したクッキーは、「友達でいましょう」という意味が込められています。

カオリさんに送る物としては間違っていないと思います。

ですが、三島さんからきつく言われました。

「もう少し考えなさい」そのことです。

ユイさんは高級なチョコを頂いたので、同じく高級チョコを返そうと思っておりました。「これまでと同じ関係でいましょう」という意味なので、仕事仲間でいつもお世話になっているので、ユイさんへのお返しとしては合っていますよね？

ハルカさんは、お肉とチョコを頂きました。

お菓子とは別の物を渡そうと思っています。

これに関しては、作法とは違うので意味すらわかりません。

シズカさんのことを考えると…… 未だに胸がドキドキします。動悸が止まりません。

はぁ、皆さんとは良い関係を築いていたいです。

良き友人でいたいのですが、人間関係とは上手くいかないものですね。

まさか、渡す物によって相手の態度や行動を変えてしまう恐れがあるとは、なんと恐ろしいイベントなのでしょう。

「そういえば、白鬼乙女さんに頂いたお薬がなんなのか調べてもらわないといけませんね。久しぶりにカリンさんのところへいきましょうか？」

週末に新しいダンジョンの情報も得たいので、私は冒険者ギルドへとやってきました。

「カリンさん。お久しぶりです」

「おお！阿部さんお久〜」

ニヤニヤとした顔で、私を出迎えてくれたカリンさん。

いつも通りの軽いテンションです。

「ユイから、バレンタインのチョコを渡された？」

「ええ、高級チョコを頂きました」

「ほうほう、ユイもやるねぇ〜」

「えっ？何がでしょうか？」

「うん？相変わらず、阿部さんはマイペースだね」

カリンさんは何やら一人で納得されております。

私は、腑に落ちない気分になりますね。

本日はアイテムを鑑定してもらうために来たので提出しました。

「何？またヤバい物？」

「それを鑑定してもらいにきました」

「それもそうだね。でも、見た目は丸薬だね」

「丸薬ですか？」

「ちょっと普通の物よりも色は黒いが強いし、少し大きいけど。ほら、これ」

カリンさんが説明をしながら出してくれたのは、深緑色をした小さなお薬でした。

「これが丸薬ですか？」

「うん。これを鑑定すると、丸薬って表記されて、強化薬って解説が出るんだよ。飲んだ個数や種類によって強化される内容が変わるんだ。この深緑の丸薬は一番多く発見されてて力を強くしてくれんだよ。まぁ一時的なドーピング的な物だね」

白鬼乙女さんは、いつも凄い物をくれますね。

白金さんのお礼に訪れたはずなのに、逆に丸薬を頂いてしまいました。

「とにかく鑑定してみるね」

「はい。お願いします」

カリンさんが鑑定してくれるのを待とうと思っていましたが、カリンさんはすぐに顔を上げられました。

「やっぱり丸薬だった。ただ、普通のやつよりも上位版みたい…… 全能力強化だって」

「えっ？」

「普通は、一つの能力なんだけど。これ全能力強化……ねぇ、阿部さん」

「わかっています。また問題になるんですよね？」

「うん。こんなの初めて発見されたから報告しないと……」

カリンさんの表情が暗いです。

またご迷惑おかけすることになりそうです。

「ねぇ、阿部さん。それ飲む気ある？」

「えっ？」

「もしも、ここで飲んでくれたら、私しか知らないから大事にしなくていいって言うか」

隠蔽のススメ！！！

確かに、白金さんは隠すことができません。

あの時も、ユイさんにカリンさん、ギルドマスターにも言わないことを約束してもらいました。色々と面倒をかけてしまっています。

「これって、飲んでも大丈夫なんですよね？」

「まぁ、人体強化されるだけだよ。阿部さんが冒険者として強くなるだけだと思う。全なんて見たことないから、どれくらい強くなるのかはわからいないけど」

少しだけ覚悟が入りますね。

【進化ミズモチさん】『ヒデ〜ダイジョウブ〜？』

「ミズモチさん。これ、飲んでもいいと思いますか？」

リュックの中にいるミズモチさんに近づけます。

ミズモチさんは、しばらくじっと丸薬を見た後で……

【進化ミズモチさん】『ヒデ〜ナカマ〜ノンデ〜』

「よくわかりませんが飲んだ方が良いと思うのですね。わかりました」

ミズモチさんが私に危害を加えるとは思いません。

私は意を決して丸薬を飲みました。

あれですね。正○丸っぽいです。

「うぇ〜変な匂いがします」

「どっ、どうなの？」

カリンさんが恐々と言った様子で質問をしてきました。

丸薬が喉から胃に入っていく感触を感じながら、しばらく待っていると全身に力が漲っていくのを感じます。

「おお！凄いです。今までよりも凄く力を感じます」

「う〜ん。見た目にはムキムキになったりはしてないけど……ねぇ阿部さん」

「はい？なんです？」

「それ、何？」

カリンさんがそれと言って指差したのは私の頭でした。

ハゲですか？ハゲを言われているんですか？流石にカリンさんでもそれは……

そう思って頭に手を伸ばすと不思議な感触がしました。

「へっ？」

「ツノ生えてるよ！」

「ハァーーー！！！！」

私のハゲ頭にツノが生えています！！！