第103話 スノーベアーの雪山 1

シズカさんが去られて、私は物陰で座り込んでしまいました。


「ミズモチさん」


リュックからミズモチさんに出てきて貰って、ギュッと抱きしめます。


【進化ミズモチさん】「ヒデ~どうしたの~?」


「私は………どうすればいいのでしょうか?シズカさんはお祝だと言っていましたが、凄く恥ずかしくてドキドキします」


【進化ミズモチさん】「ドキドキ~?」


「はい。こんなことは久しぶりです。キスはハルカさんともして、二度目なのですが………ハルカさんは、彼氏さんを亡くされて心が弱っていました。誰かに甘えたいのだと思えたのですが…… シズカさんのお祝いはハルカさんのキスとは違う気がするのです」


私は何を言っているのでしょうか?40歳のオッサンが20歳も年下の女性にトキメクなど気持ち悪いと思われる行為です。


ですが………


女優さんのように美しくて、可愛いシズカさんがキスをしてくれました。

触れただけの軽いキスだと彼女は思っているかもしれません。

ですが、私のような者にキスをしてくれたと言うことがこんなにもドキドキするとは思いませんでした。


【進化ミズモチさん】「ヒデ~ドキドキ~」


「はい。ドキドキです」


【進化ミズモチさん】「ヒデ~シズ~チュッチュ」


「あわわわ、ミズモチさん言わないでください!こういうときはあれですね。心頭滅却すれば火もまた涼しです!ミズモチさんダンジョンへ行きましょう」


【進化ミズモチさん】「ヒデ~ボクのゴハン~」


「はい。ダンジョンです」


B級冒険者になったので、冒険者アプリを開くと今まで見たこともないダンジョンの情報が流れてきました。


「よし、ここに行きましょう!」


私は頭を冷やすために雪山に向かいました。


さすがにスーパーカブさんで雪山には入れませんので、電車で近くまで言って、雪山にはロープウェイが運んでくれます。


「凄いですね。一面真っ白です」


【進化ミズモチさん】「ヒデ~ユキ~」


「はい。雪景色です」


雪山は元々スキー場だったところが、ダンジョンになってしまったそうです。

出てくるのが、巨大な鹿と白い熊です。


熊って冬は冬眠すると思っていたのですが、白い熊さんは確かに寒い地域でも活動されていますね。


「山頂へはリフトに乗るのですが、初めての雪山ダンジョンですからね。しかもB級です。十分に注意していきましょう!」


【進化ミズモチさん】「は~い。ゴハン~ゴハン~」


ふふ、ミズモチさんが嬉しそうでよかったです。


B級になったら、ユイさん推薦のミノタウロスやスリープシープのダンジョンへ行く予定でした。


今は我が心の火照りを冷まさなければなりません。


「若い子の気持ちがわかりませ~~~~ん!!!ふぅ~大きな声を出すと気持ちがいいですね」


雪山では絶対にしてはいけないと思います。


今日は我慢が出来ませんでした。

それに本日は他の冒険者さんもおられないので、少しばかり気持ちを爆発させても許してください。


「ぐおおおお!!!」


私の叫びに反応するように、一匹の熊さんが叫んでおられます。

遠くにいるはずなのに凄く大きいです!

えっ?普通の熊を北海道で見たことがあるのですが、リンゴをくれくれと可愛いイメージでしたよ。

彼らも確かに大きくて人の何倍もありましたが………


「え~!!!トレントツリーと大きさが変わりません!」


立ち上がった熊さんは5メートル近くまで身体が大きくて、肩幅も広くて、腕も太いです。

モフモフの腕が振るわれると雪の地面がえぐり取られる破壊力です。


「ヤバいです!ヤバすぎです!Bランクダンジョン!!!レベルが上がり過ぎではありませんか?」


私はとりあえず逃げました。

ミズモチさんを抱えて脱兎の如く!!


熊の前で死んだふりをしろとかいいますが、あれはウソです。

熊さんは死んだふりをしている人をオモチャにして遊ぶか、お腹が空いていれば肉として食べちゃうそうです。


だから戦うか逃げるのどちらかです!


【進化ミズモチさん】「ヒデ~ゴハン~!」


「ええ~ミズモチさん!あれと戦うんですか?トレントツリーは動くのが遅かったです。でも、あれは獣なので動くのも早いです!!!」


私が慣れない雪山で逃げていることもありますが、向こうの方が早いです。


「ぐおおおお!!!」


「ひっ!今日は恐怖耐性が発動しているのに恐いです!!!」


【進化ミズモチさん】「ヒデ~マカセテ~」


「えっ?」


ミズモチさんが私の腕の中から飛び出して、スノーベアーに向かって行きます。


巨大なスノーベアーに小さなミズモチさんでは、踏みつぶされて終わってしまう。


私はとっさに金の杖を構えました。


「伝説級の武器さん!どうかお力をお貸しください!!!」


ミズモチさんは、新しく生えた角を尖らせて、スノーベアーに突撃をかけまました!!


「ミズモチさん!」


ミズモチさんの角は触るとフニャフニャで気持ちいいのです。それが今は鋭く尖って、高速移動も加わり、スノーベアー右腕を吹き飛ばしました。


「えっ?」


【進化ミズモチさん】「ヒデ~ゴウ~ゴウ~!!」


ええい覚悟を決めろ!

男、阿部秀雄!

ミズモチさんに続くのです!


手負いのスノーベアーは、ミズモチさんに気を取られて、ミズモチさんを探しています。


そこへ背後から…………


「ゴールド刺突!!!」


技は進化していませんが、武器の威力よ!!!唸れ!


「ぐおおぉぉ…………」バタン


「えっ?」


私が背後からスノーベアーさんの背中に刺突を放つと一撃で倒れました。


倒れたスノーベアーさんは虫の息となり、ミズモチさんが消化してしまいました。


「え~と、トレントツリーさんより弱いのでしょうか?それともこのゴールドロッドこと、理力の杖さんが凄いのでしょうか?」


ミズモチさんが進化したことで攻撃力が大幅にアップしています。

それに私の武器も新調されたことでパワーアップしたということでしょうか?






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