第100話 ドロップ品はなんですか?

 日々の業務に追われていると、どうしてもやらなければいけないことを後回しにしてしまうことってありますよね。


 本日は、ご近所ダンジョンさんで白鬼乙女さんが落として行かれたドロップ品?を鑑定してもらいにカリンさんの冒険者ギルドショップへやってきました。


「へっ?金の杖?これ、本物?」

「えっ?ああ、確かに金ですもんね。本物だと思います」


 今は金が高騰していますからね。

 売れば普通に凄い金額になりそうです。


「ただ、ダンジョンのドロップ品なので金として、本物かどうかはちょっとわからないです」

「曰く付きってことか………前回の指輪のこともあるからね。鑑定してみるよ」

「よろしくお願いします」


 私は首からぶら下げた指輪に触れて、鑑定結果を待つことにしました。

 何故なのかわかりませんが、金の杖についても…………手放してはいけない気がするのです。


「ねぇ、阿部さん」

「はい?どうしました?」

「阿部さんってさ。女性を好きになったことって無いの?」


 鑑定をしながら世間話が出来るカリンさんは器用ですね。


「突然ですね。まぁ私も男ですからね。ありますよ」

「マジ!私、阿部さんは魔法使いだって思ってたよ!」

「テイマーですが、魔法も使えるので魔法使いですよ。まぁカリンさんですからいいですよ。私はまだリアル魔法使いです」

「えっ?好きな人がいるって」

「成就しませんでしたので………昔のことです」


 懐かしい思い出です。

 ですが、今となっては良い思い出ですね。


「あ~なんかごめんね。でも、今の阿部さんってなんかいいね」

「なんかってなんですか、はは」


 カリンさんは気を遣ってくれたのでしょうね。


「う~ん、上手くは言えないけどさ。哀愁って言うか、男の寂しさが色気漂うっていうか、女なら放っておいちゃいけないかなって思わさせる感じがするんだよね」

「そう思ってくれる女性が居れば嬉しいです」

「えっ?いっぱいいるじゃん」

「いませんよ。だって、私はしがないオジサンですよ。それにこれですから」


 ――ぺしぺし


 私は自分の頭を叩きました。


「しがないオジサン?」


 カリンさんが不思議そうな顔をして、金の杖を見ました。


「鑑定結果が出たから、説明していい?」

「えっ?早いですね」

「うん。これね、金に見えるけど金じゃないみたい」

「そうなんですか?なら買取りは」

「無理だね。だって、これも阿部さん専用だよ」

「私専用?また、拾った人がって奴ですか?」

「ううん。そうじゃなくて、阿部秀雄専用武器って鑑定に出たんだ。しかもこれ理力の杖って言ってさ。

 魔力を注ぐと自由自在に形を変えたり、強度や威力も変化出来る凄いアイテム。多分だけど、レア度で言えば伝説級」


 新しい言葉に私は首を傾げます。

 伝説級とはなんでしょうか?


「あ~いつもはさ、良品とか不良品とか、優良品とか商品の状態が表示されるじゃん」

「はい」

「伝説級は、商品状態の枠を越えててさ。私らの鑑定でも判断が出来ない状態ってこと。

 しかも、これは阿部さん以外が持っても意味がない上に加工も出来ない。


 壊れない

 傷つかない

 阿部さんの魔力で攻撃力も上がれば、形も変える


 もうね、おとぎ話とか神話に出てきそうな武器なの」


 えっ?そんな凄い武器って存在するんですか?


「しかも阿部さんからこれを奪おうとしても、阿部さん。ちょっとこの杖に名前を付けてみて」

「えっ?杖に名前を付けるんですか?」

「うん。騙されたと思って」


 白鬼乙女さんが落として行った金の杖ですからね………


白金シロガネなんてどうですか?」

「うん。承認されたみたいだね。じゃあ、ちょっと離れて」


 私はカリンさんに背中を押されて、ショップの外へ連れ出されました。


「何するんですか?」

「ここでさ、右手に白金に来いって命令してみて」

「は?」

「いいからいいから。はい。リピートアフターミー」

「ハァ、白金さん来てください」


 私が声に出して白金さんを呼びました。

 すると、右手に白金さんが現われました。


「はっ?」

「うんうん。この杖は阿部さんが求めれば、どこからでも阿部さんの手元に戻って来てくれるみたい。それと白金って名前は気に入ったみたいだよ」

「そんなデタラメな武器が存在するんですか?」

「目の前にあるじゃん。それにダンジョンなんて発見されて10年を超えた程度だよ。全然解明されていないことの方が多いに決まってるじゃん」


 カリンさんに言われてしまうと、それはそうだと納得してしまいますね。


「でも、前の指輪もそうだけど。冒険者ギルドから調査とか取材がいくかも………指輪はまだ使ってないみたいだし、どんな効果があるのかわからなかったけど。

 今回のシロガネはヤバいアイテムだからね!自覚して」


 カリンさんはいつもの脱力した話し方ではなく。

 真剣な目をして伝えてくれました。

 それはゴブリンのモンスターパニックのときに見せた顔に近かったです。


 カリンさんはメリハリをキッチリと分けている人です。


 そんなカリンさんが真剣に言ってくれているのです。

 大事なことを自覚しました。


「わかりました。私は所有者としてシロガネを大切にします」

「本当にわかっているのか不安だけど。これ以上言っても仕方ないからね。あとはユイに相談して、どれだけ秘匿するかとか話し合ってみて」

「そうですね。ユイさんに相談してみます」

「うん。これ以上は私の範疇を超えるからね。よろしく~」


 あっ、肩の力を抜かれました。


 カリンさんもまたいい人ですね。


 私は深々と頭を下げました。


「ありがとうございます!」

「ちょっ、やめて。私そういうの苦手だから、ハズい」

「はは、色々とありがとうございます。またお礼をさせてください」

「あ~そういうとこだよね。きっちりしてるってか」

「うん?」

「なんでもな~い。私はオッサンには靡きません!ノオサンキュー。お礼はユイにしてあげて」


 そう言って私は背中を押されて、ショップから追い出されてしまいました。


 ―ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 あとがき


 どうも作者のイコです。


 今日は宣伝ですw


【勇者と交渉人と魔王】

 という短編を書きました。(ギャグと軽い下ネタですw)

 カクヨムWeb小説短編賞2022に応募しています。

 もしお時間あれば、読んで頂くと嬉しいです(^_^;


 いつも【道にスライムが捨てられていたから連れて帰りました】を読んで頂きありがとうございます(*^_^*)

 今後もお付き合い頂ければ嬉しく思います(*^_^*)


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