第92話 トレントの森 1
本日は有給を使って、試験会場として指定を受けたトレントの森へやってまいりました。キャンプ地として有名だった場所だそうです。
キャンプ場も含めて、森全体がダンジョンになってしまったそうです。
「本日はB級試験会場として、トレントの森で24時間を過ごしてもらいます。
サバイバル道具と食料は事前に渡したものを使ってください。装備はご自身の物で構いません。試験のルールとしてはトレントの森で一晩過ごしてもらうだけです。
パーティーで過ごしても良いです。
ソロでも構いません。
ただ、トレントの森は夜の方が魔物が活性化しますので、十分に注意してください」
内容の説明が終わり時間が開始される。
試験会場として使われているトレントの森は、真っ白な雪景色です。場所が発表されてから事前調査に一度だけ訪れました。会場の場所を先に調べるのは癖のようなものですね。
トレントとは、木のモンスターです。
森に魔力が溜まって、木がモンスターに変わったそうです。森になるほどの大量のトレントが発生しているので危険な場所な気がします。
ですが、トレントはあまり動きません。
そして取れる木は魔力を帯びていて、高級家具や防具に適した素材になります。
ルールとして、炎系の魔法を使うのは禁止されています。物理攻撃に対して、木とは思えないほど硬度があるので倒すのに苦労します。
取引される木は人気なので、大量に倒さなければいけません。そのため普段はギルド単位で依頼を受けている場所なのです。
「森でキャンプなんて、子供の頃以来ですね」
シズカさんの様子がおかしかったので、ユウくんがB級の試験に参加されるかと思っていました。
どうやら参加は見送ったようです。
もしかしたら私よりも先に受けたのかもしれませんが、無事を祈るしかありませんね。
「ミズモチさん。テントを張ってしまうので見張りをお願いします」
【ミズモチさん】《は~い》
ミズモチさんにお願いしましたが、危機察知さんが反応してくれているので、近くにトレントがいないことはわかっています。
木と言ってもやっぱり魔物さんです。
危機察知さんがあればだいたいの位置がわかってしまいます。
私は近くにトレントでは無い木に囲まれたスペースを見つけております。
一人用のテントを張るには丁度よかったのです。
周りの木に紐を結んで、高い位置にテントを張りました。
テントを張り終わると、テントの強度を確認してから乗り込みます。
乗っても大丈夫だったので、ミズモチさんと共にテントでくつろぐことにしました。
雪遊びをしていたので、ミズモチさんを拭いてあげて二人で暖を取ります。
B級冒険者試験を受けに来た人たちは、30名ほどおられました。
一晩過ごすだけというのはあまりにも簡単に思います。
ですが、何か仕掛けがあるかもしれません。
危機察知さん以外にも、ミズモチさんに警戒をお願いしてしています。
「何も起きませんね」
【ミズモチさん】《ヒデ~ユキ~》
テントで休息を取ったミズモチさんは、雪遊びをしています。寒いのでトレントも動きたくないのかもしれませんね。すでに夕方になってしまいました。
そろそろゴハンにしましょうか?
「ミズモチさん。少し早いですが夕食にしましょうか?」
【ミズモチさん】《ヒデ~ゴハン~》
私は事前に準備しておいた装備に食料を混ぜておきました。水筒も持参を許されていたので、水筒型お弁当箱に食料を確保しております。
トレントと聞いて、ミズモチさんは食が進まない恐れがありました。事前準備はやっぱり必要ですね。
本日はスープハンバーグとご飯のセットです。
【ミズモチさん】《ヒデ~おいし~》
「よかったです。温かい物を食べるとホッとしますね」
夜になれば、完全にトレントが動き出すかもしれません。日没までの二時間を私は仮眠することにしました。
「ミズモチさん。仮眠を取りますので見張りをお願いします」
【ミズモチさん】《は~い》
二時間を過ぎる程度は睡眠を取ることができました。
寝ているときは危機察知が作動するんでしょうか?わかりません。ですが、何事もなく睡眠を取ることが出来ました。テントを出ると数個の魔石が落ちていました。
「ミズモチさん、トレントが来たのですか?」
【ミズモチさん】《チガウヨ~カッテキタ~》
どうやらヒマだったので狩りに行っていたようですね。
少し不安ですが、危機察知さんは全く反応していなかったので安全だったのでしょう。
危機察知さんは寝ているときでも発揮してくれるのか少し不安ですね。
――キャーーー!!!
「えっ!今のって悲鳴ですよね?いよいよ試験が始まったのでしょうか?」
すっかり日が沈んで夜が到来しています。
「ミズモチさん。いよいよ始まるようですよ」
【ミズモチさん】《ヒデ~ゴハン~》
「魔物もゴハンですか?ふふ、頼もしいですね」
テントから出て装備の確認をしておきます。
危機察知さんでトレントの位置を確認して歩き出しました。
「あちらにトレントさんが集まっていますね。ミズモチさん」
【ミズモチさん】《ヒデ~いこ~》
「はい。誰もケガがなければいいのですが」
睡眠を取ったので頭はクリアです。
危機察知さんは魔物以外でも、身の危険が迫っていると教えてくれます。落とし穴のトラップやダンジョンに潜む危険もなんとなくわかります。
「うわ~こんなところ崖があったのですね。暗くて見えませんでした」
雪の森は見えない危険が多くあります。
悲鳴の先には大量のトレントに囲まれている冒険者がいました。グループで応戦しています。
ユイさんから他人の獲物に手を出すときは状況を見なさいと教わりました。
相手の経験値や獲得するはずだったアイテムを奪うことになってはいけません。
危機ではありますが、対応できているので手を出さない方がよさそうです。
危機察知さんのおかげでトレントさんに会わずに、観察を行うことができます。
「これが夜通し続くなら、皆さん集中力が切れてしまいますね。大丈夫でしょうか?」
私はテントに戻って身体を休めることにしました。
もしものお手伝いができるように準備をします……
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