第76話 夕食までが冒険ですよ

リュックでは収まりきらないほどの魔石を、シズカさんの鞄と、トートバッグを三つも使って持ち帰ってきました。冒険者ギルドへ戻ってきた私たちは注目を集めながら、水野さんへ報告に参りました。


「水野さん。スケルトンの墓地から帰還しました」

「阿部さん。おかえりなさい。本日は湊さんと一緒だったのですか?」

「はい!今日は阿部さんにバディーをしてもらって、スケルトンの墓地に行ってきたんです」


私が応えるよりも早く、シズカさんが元気よく応えてくれました。


「そうだったの。お互い新人さんですからね。大丈夫でしたか?」


シズカさんと水野さんは美人姉妹のようで、見ていると目の保養になりますね。

水野さんが心配そうな顔をされていたので、私はシズカさんと顔を合わせます。


「見てください!」

「今回は上出来だと思います」


私たちは誇らしげに大量の魔石を見せました。

スケルトンファイターの魔石も入っています。

今回は棚から牡丹餅で簡単に倒せて、臨時収入を多めにゲットできました。


「こちらが会計になります」

「うわっ!凄い!阿部さん。やりましたね」


素早く査定をしてくれた水野さんが見せてくれた金額は満足のいくものでした。笑顔で喜ぶシズカさんは本当に可愛いです。しかもハイタッチを求められるとは、なんだか嬉しいですね。


「はっ、はい!やりましたね」

「阿部さんは、梅田さんに続いて女の子と仲がいいですね」

「えっ?」

「あ~そういえば、噂の梅田さんとも知り会いですもんね」

「噂の?」

「ええ。美人で、クールで、仕事が出来るって噂ですよね」


ハルカさん存在が目立つのですね。

今回は、ハルカさんと倒したオークナイトのときよりも多くの魔石がありますからね。絶対に前回よりも稼げました。スケルトンたちを倒した数の方が多かったのが大きいですね。


「それにしても凄い数でしたね。どうやって倒したんですか?」

「実は」

「阿部さん。ダメですよ。冒険者の戦い方は企業秘密です」

「えっ!そうなんですか?」


シズカさんに止められて、水野さんを見れば目を閉じました。


「そうですね。確かに冒険者さんの戦い方は秘匿も許されています」


別に水野さんにお伝えしても問題ないのですが……


「だから、秘密です」

「教えてくれてもいいじゃない」

「ダメです。阿部さんの戦い方は、一緒に冒険をした人だけの特権です」

「もう、意地悪ね。私は受付だから一緒に冒険はできないのに」


シズカさんに対して、水野さんが気さくに話しておられます。なんだか、新鮮な感じがしますね。


「結さんも冒険者になればいいじゃないですか?」

「う~んこの年からはちょっとね」


私、40歳でデビューしたのですが……

確か、水野さん年女と言っていたので、24歳ではないでしょうか?十分に若いのですよ。


「何言ってるんですか!そんなに歳は変わらないじゃないですか」


今年20歳のシズカさんが言っても……


「はいはい。考えておくわね」

「絶対ですよ。さぁ阿部さん行きましょう」

「行く?どこに行くんですか?」

「今日は冒険を一緒にしてくれるんですよね?じゃあ、夕食までが冒険ですよ」

「夕食ですか?」

「はい。阿部さんと行きたかったご飯屋さんがあるんです」

「承知しました。ですが、着替えはしましょう。このままでは」

「あっ、そうでした」


私たちは一度家に帰って、もう一度集合することにしました。

ミズモチさんも行っていいと言うことなので、ミズモチさんと一緒にお出かけです。


「串カツ屋さんですか?」

「はい!まだお酒は飲めないんですけど、串カツ屋さんに来てみたかったです。でも、ユウ君たちと入るのも躊躇うっていうか、阿部さんとなら入れそうで」


若い子が行きたい場所って言われたので、もっとオシャレな場所かと思いました。

まさかの見慣れた場所に正直安堵しております。


「最近は、ニオンとかでも串カツ屋さんのチェーン店が入っていますが」

「う~ん、そういうところじゃなくて本格的な串カツ屋さんって、ところに行ってみたかったんです。ここは前からSNSで調べていて来たかったんですよ」


若者のSNS情報は凄いですね。確かに絶妙な串カツ屋さんです。私の地元にある、二度漬け禁止のダルマ屋さんに似ていますね。昔ながらのカウンターだけのお店でした。


なんと言うんでしょうね、レトロな雰囲気にオジ様たちが溢れておられます。


「オジサン、串カツ盛り5人前で」

「あいよ」


店主さんも迫力がありますね。

しかも、この雰囲気に物怖じしないシズカさん凄いです。


「飲み物はどうしますか?」

「えっ、ウーロン茶を」

「え~本当にいいんですか?阿部さんお酒好きじゃないんですか?」

「あ~いや、ビール党です」

「なら、ビールを飲んでください。せっかくですから楽しく食べたいですから」

「わかりました」


あぁ良い子だな。若い子とオジ様が集う串カツ屋さんで楽しく飲めるって奇跡ですかね。


「オジサン、ビールとウーロン茶」

「あいよ」


こちらをチラチラと見るオジ様たちの前に、私はミズモチさんをテーブルへ下ろします。


「オジサン、魔物もいいですか?」

「いいよ」


店主のオジサン、シズカさんが聞けばなんでもOKを出しそうです。


「ミズモチさん。串カツ食べたことありますか?」


【ミズモチ】《頂きます》


「うわ~ちゃんとお肉だけ無くなった。凄い!」


シズカさんがミズモチさんに串カツを差し出して、ミズモチさんは器用にクシを残して食べ物を食べています。


美少女とミズモチさんって見ているだけで何杯でもビールが飲めそうです。私、気付いているのです。

オジ様たちがシズカさんに、視線を向けてお酒を飲んでいることに……皆さん、気を遣わせてすいません。


でも、ミズモチさんの分もちゃんをお支払いしますので、いっぱい食べます。

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