第73話 話題のハルカさん

 ハルカさんは誰にでも物怖じすることなく親しくなれる性格なので、冒険者ギルドで話題になっているそうです。


 湊さんからメッセージが来た事で知りました。


【湊】『大阪から来た凄く綺麗な人が、冒険者ギルドで有名なの知っていますか?梅田遥香さんって言う方なんですけど』


【私】『はい。知っていますよ。私の知り合いなんです』


 なんだか知り合いが有名になるって、誇らしい気がしますね。ハルカさんはモデル級の美人さんなので、有名になるのは当たり前かもしれません。


 それに気さくでBランクですから、ギルドからも引く手数多でしょうね。


【湊】『えっ?阿部さんの知り合いなんですか?』


【私】『はい。年末年始に実家へ帰った際に知り合いました。この間も一緒に冒険をしたんですよ』


【湊】『いいなぁ〜私も阿部さんと一緒に冒険がしたいです』


【私】『私とですか?私とでいいならお付き合いしますよ』


【湊】『本当ですか!!!!わかりました。どこを攻略するか決めてからご連絡しますね』


 若者に混じるのは久しぶりですね。

 皆さんの成長についていけるか不安ですが、頑張りましょう。


 オークの廃道での収入が入りましたので、矢場沢さんにお礼をしようと思います。


 何かプレゼントと考えていましたが、私はセンスが無いので食事に誘うことにしました。


【私】『矢場沢さん。臨時収入が入りましたので、本日はお昼に鰻を食べに行きませんか?いつものお礼に奢らせてください』


【矢場沢】『鰻って高いのでは?そんなの悪いですよ』


【私】『鰻はお嫌いですか?』


【矢場沢】『好きですけど』


【私】『では、ぜひお付き合いください。私が食べたいのです』


【矢場沢】『わかりました。ご馳走になります』


 と言うことでやって参りました。


 鰻屋さんです。


「うわ〜凄いですね。私久しぶりです」

「私もです。楽しみですね」


 お箸で切れるほど柔らかい身がホクホクとして、タレに絡み付いておられます。


 口の中に入れると香りが広がって、とても美味しいです。油がしっかり落ちているので、トロッとした食感ですね。


「鰻って香りが良くて食欲をそそりますよね」

「わかります。店の前に並んでいる間にお腹が空いてきて、座っている間も周りの方を見て、口の中に唾が溜まってしまうんです。目の前に来て、口に入れると幸せだなぁ〜て思うんですよ」

「ですです。でも、どうして鰻だったんですか?」


 半分ほど食べたところで矢場沢さんから質問を受けました。吸い物で口直しをして、タレの旨味を二度感じました。


「実は、先週に大阪から友人がこちらに引っ越して来まして、食の話になったんです。その時に関西風と関東風を考えるようになりまして、その時は、うどんのスープについてだったんですが、私の中では鰻の違いかなって思いました」

「ああ、鰻って関東と関西で、全然違うって言いますよね」

「そうなんですよ。捌き型、焼き方、釘打ち、盛り付けまで全然違うって、こちらに来て初めて知りました」


 関東では、焼く時間は短く、蒸しを入れるそうです。

 関西では、蒸しがなく、焼き時間を長く取るそうです。


 それぞれにタレの味にも違いがあって、味わいが違うので私はどちらも大好きです。


「阿部さんはどこのうなぎが好きなんですか?」

「私ですか?私は大阪出身なんですが、実は名古屋のひつまぶしが一番好きだったりします。矢場沢さんはどうですか?」

「荒川区にある美味しい鰻屋さんがあるんです」

「そうなんですか?今度行ってみたいですね」


 本日は会社の近くの鰻屋さんでしたが、名店とか老舗って聞くだけで行ってみたくなりますね。


「地元から知り合いが来るって、なんだか嬉しいですね」

「そうなんです。地元の話ができますし、副業の方で仲良くなった方なので、手助けもして頂けているんです」

「冒険者の方でですか?凄い人なんですね」

「はい。ランクも私より上で、まだ1年経っていない私からしたら先輩になりますから、色々と教えて頂いております」


 ハルカさんが来たことで、色々と冒険者として取り組み方を考えてもいいかもしれませんね。


 会社を辞めるつもりはありませんが、湊さんやハルカさんと協力できるなら色々なことができるかも知れませんからね。


「ご馳走様でした! さぁ今日も仕事を頑張っていきましょう!!」

「はい。ご馳走様です。でも、本当にいいんですか?」

「言ったじゃないですか、臨時収入が入りましたので。それに矢場沢さんにはいつもお弁当を作って頂いて、お礼をしたかったのです」

「ちゃんとお金を頂いていますから、一人分作るのも二人分作るのもあまり変わらないですよ」


 矢場沢さんはやっぱり優しい人ですね。

 そんな風に言われてしまうと、甘えてしまうではありませんか。


「それでもいつもありがとうございます。矢場沢さんが作ってくれるご飯が凄く美味しいので、私の生きる活力になっております」


 お礼は絶対に忘れてはいけませんね。


 帰りは矢場沢さんが、何やら静かになったので鰻の味を考えながら会社に戻りました。


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