第69話 オークの廃道 3

ご近所ダンジョンさんは、あれから閉鎖扱いになってしまって行くことが出来なくなりました。そのため、平日にも他のダンジョンに行くことになってしまったので、最近はオークの廃道に帰りに寄るようにしています。


ミズモチさんが杖として装備になってくれるのですが、オークダンジョンに来るなら別々に戦った方が効率がいいと思ったので黒杖さんを持参しています。

ただ、夜にやってくるオークの廃道は昼間に来るときよりも、不気味な印象を受けます。


newtubeで心霊チューバーさんの動画を見たことがあるのですが、夜のダンジョンは何かが出そうという意味では同じかも入れません。


いくら察知さんで魔物の位置がなんとなくわかっていても、暗すぎると距離感が掴めないのです。


ご近所ダンジョンが優れていたのは夜に行っても、一本道だったことが大きいです。やっぱり迷うことなく進めると言うのはありがたいですね。

オークの廃道はトンネルなどにも繋がっていて、迷い込むとどこにいるのかわからなくなってしまいます。


闇が深く夜には危険な様子を感じるのです。


「入り口だけにしておきましょうね。ミズモチさん」


【ミズモチ】《は〜い》


魔物に対しての恐怖耐性はできています。

ですが、暗闇ってそれだけで怖い気がしますね。

入口だけと言っても、少しは中に進まなければいけません。

魔力の濃度が薄いようで、ミズモチさんの体力がなかなか回復しないそうです。


「ブヒヒ!」


察知さんでわかっていると言っても戦いにくいですね。

光魔法を使えば明るくはなるのですが、魔物が一斉に集まってきて大変そうです。

魔法を使うのはそう言う理由で躊躇ってしまいますね。


30分ほどダンジョンを歩けば、ミズモチさんの魔力も回復してくれるのでしょう。散歩と思えばいいのですが、やっぱり今までとは違うので緊張しますね。


ーーカサカサ


「ひっ!なんですか?風?それともオークさんですか?」


察知さんには反応がありません。

魔物ではないということです。


では、風とかでしょうか?


ーーカサカサゴン!!!!


明らかに何かが動いています!!


察知さん働いてください。

こんな寒空でホラー体験なんて嫌すぎます!!!!


あっ、もしかしたら他の冒険者さんでしょうか?こんな夜に?今は仕事終わりで20時を回っていて…… こんなところに人がいるわけないじゃないですか!!!!



ーーーバキバキバキ!!!!


近いです!道路にある何かを踏んでおられます。


「あっ!おった!」


私がビビリにビビって悲鳴を上げる寸前。

顔を見せたのは……


「梅田さん?」

「そやで!阿部さん久しぶりやな!」


暗闇から現れた顔が、顔見知りだったことに安堵と共に疑問が浮かんできました。


「なっ!なんで、梅田さんがここにいるんですか?梅田さんがオークの廃道にいるっておかしいじゃないですか!!」


これは魔物の幻覚でしょうか?ここには幻覚作用まであるのですか?


「あ〜それはな。阿部さんを驚かしたろう思て後をつけててん」

「はい?」

「だから、ドッキリやドッキリ。驚いた?」


あっけらかんと言われて、私は呆然とした後に安堵の心が湧いてきました。


「ハァ〜〜〜〜よかったです。察知さんにも反応しないので、メチャクチャ怖くて、私は幽霊とかダメなので」

「もう、人をオバケみたいに言わんとてや、ちゃんと足あるよ」


ジーパンに包まれた両足さんがちゃんと存在しています。


「はい。よかったです。でも、どうして私の後をつけていたんですか?それにいつこちらに?」

「うん?ああ、こっちに来たんは3日ぐらい前やで。家決めたり、冒険者ギルドに登録したり色々大変やってん」

「えっ?こちらに引っ越して来られたんですか?」

「そやで。おみくじでも言うてたやん。引っ越した方がええて。まぁ住み慣れた場所を離れるんは覚悟がいるけど、知り合いがおるって思ったらちょっと安心やん」


梅田さんは辛いことを乗り越えたんですね。

乗り越えて、気分を変えるために新天地を求めたと言うことですか。

私を頼ってくれたのも嬉しいです。


「ですが、よく私の住んでいる街が分かりましたね?私、聞かれていませんよ」

「ああ、それは阿部さんのお母さんが教えてくれてん。あの日、阿部さんを見送った後に阿部さんのご両親に会ってな。色々話してたら仲良くなってん」


ああ、うちのお母さんでしたらあり得そうですね。

誰とでも仲良くなれる性格をしておられるので、お母さんも一言言ってくれればいいのに人が悪いですね。


「はぁ〜とりあえず、オークの廃道を出ましょうか?」

「そやね。ここでゆっくり話してても寒いわ」

「そうですね。本日は冷え込んでいますからね。それに電車があるうちに帰りましょう」


私たちはオークの廃道を脱出して、家近くまで戻ってきました。


「そういえば、梅田さんのお家はお近くですか?」

「うん。あそこやで」


そう言われて指を差したのは、私のアパートから見える綺麗なマンションでした。オートロックがあり、私が住むアパートよりも三倍近い家賃を払うマンションだったと思います。


「だっ、大丈夫ですか?」

「うん?何が?」

「いっ、いえ、家賃が。ここ東京なので、私のアパートもこの作りですが、いいお値段の家賃ですので……」

「ああ、そう言うこと。私はこれでも結構稼いでるんやで。それにこの間、Bランク試験も通ったからBランク冒険者やで」


私よりもランクが上の先輩さんでした。

確かに、この間の緊急依頼で頂いたお金は凄かったですが、Cランクになってからも週末しか冒険者として活動していませんので稼げでいません。


ご近所ダンジョンさんで、ドロップした物は高く売れていますがそれだけです。

普段は、ミズモチさんの食費を稼ぐので精一杯です。


「う〜ん、阿部さん」

「はい」

「専属のBランク冒険者になったら、多分一月の稼ぎが阿部さんの年収ぐらいあるで」

「えっ?!」

「いばらき童子ダンジョンの魔石を交換したやろ?あれが一月に3、4回あると思ってみて」


前回のいばらき童子ダンジョンの報酬は、ドロップ品もあったので、帯が巻いておりました。もちろん、梅田さんと2人で分ければそうはいきませんが、もしもあの報酬が2度、3度とあれば……


梅田さん!凄い高給取りだったのですね!!!!

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