第67話 ミズモチさんを装備しよう

 魔物を装備へ 


 このスキルが私には理解できませんでした。


 そこで、久しぶりにネット検索です。

 魔物を装備へと入力すると、テイマーズと呼ばれるサイトが検索にヒットしてサイトを開きました。


 テイマーさんたちが、自分の魔物たちを自慢する品評会的なこともされていました。


「おお、オーガをテイムした人がトゲトゲの金棒を振り回していますね。これが装備でしょうか?」


 テイマーズのサイトで画像検索をすると、様々な装備状態の魔物たちを見ることができました。

 スライムをテイムしている人はやっぱり少ないようです。魔物としては最弱だと、アンジェさんのブログでも言っていましたからね。


「おっ!この人、スライムを装備しているぞ!」


 その画像にはテイムしたスライムを、頭に乗せていました。


「えっ?頭に乗せるのですか?」


 動画だったので見ていると、頭に乗ったスライムさんが、テイマーさんとダンジョンに入っていきます。

 剣と盾を持つテイマーさんに、背後から魔物が近づいていくと、スライムさんが伸びて倒していました。


 なるほど、両手が使えないので頭なのですね。

 後方を見張ってくれて心強くはありますね。


 う〜ん、私の場合は両手には杖を持ちます。

 頭からは魔法が出ていくので、これは使えませんね。


 他にも検索しますが、ミズモチさんを丁度良く使える装備というのがイメージできませんでした。

 それにしても世界中で見れば、テイマーさんってたくさんいるんですね。

 たくさんの方々が、魔物と協力して生きている姿ってなんだかいいですね。


「ミズモチさん。私たちも末長くよろしくお願いします」


【ミズモチ】《よろしく〜》


「それにしても装備すると言われてもどうすればいいんでしょうね?」


 私が困っていると、ミズモチさんが私の仕事鞄に近づいていきました。


「開けるのですか?」


【ミズモチ】《開けて〜》


「はい。どうぞ」


【ミズモチ】《ありがとう》


 モソモソと鞄の中へ入っていったミズモチさんは折りたたみ杖を取り出しました。


「ミズモチさん、何をするのですか?」


【ミズモチ】《見てて〜》


 そう言ったミズモチさんは折りたたみ杖を飲み込んで消化してしまいました。


 ええええ!柳先生からもらった杖が!


「ミズモチさん?」


【ミズモチ】《は〜い》


 私が呼ぶとミズモチさんはスライムボディーから、折りたたみ杖へチェンジしてしまいました。


「えっ?」


 ミズモチさんが折りたたみ杖になってしまいました。

 触れてみると感触は杖そのものです。


「ミズモチさん?」


【ミズモチ】《な〜に〜?》


 そのままでも念話さんが使えるのですね。

 そうですよね。念話ですもんね。

 何もおかしくはないのですが、凄く違和感がありますね。


「装備するってこういうことなんですね。ミズモチさんに私の装備品を吸収してもらって、その代わりになってもらうということなんですね。

 ふふ、明日から一緒に会社に行きますか?杖のままで疲れませんか?」


【ミズモチ】《わかんな〜い》


「会社に連れて行って私の癒しになってもらうことは凄く嬉しいです。ですが、ミズモチさんのストレスになってしんどくなってしまうのは嫌ですね。ミズモチさんが気遣いってくれて凄く嬉しいです」


 ミズモチさんは、杖の姿からスライムボディーへ戻りました。ゆっくり近づいてきて、ミズモチさんがそっと寄り添ってくれます。


「ふふ、明日は1日だけ一緒に行ってみますか?」


 ミズモチさんはプルプルしておられます。


 何も言わないのは、私への気遣いなのかもしれませんね。


「満員電車でミズモチさんが潰されないように、明日は始発で行くことにしましょう。帰りも、どこかで食事をして遅めの電車で帰れば問題ありませんよ」


【ミズモチ】《は〜い》


 返事をしてくれたので、明日はミズモチさんと一緒に出社します。


 というわけで朝早くに起きて始発に乗りました。

 こんなにも早い時間に会社に来るのは初めてですね。


「ミズモチさん。ここが私の会社です。いかがですか?」


 まだ、矢場沢さんも出社していないので、ミズモチさんと2人だけです。


「ミズモチさん、今だけは普通にしていて大丈夫ですよ」


 杖からスライムボディーへ戻ったミズモチさんは会社の中で飛び跳ねています。

 プルプルボディーのミズモチさんが嬉しそうで、私も嬉しいです。


「そうだ。こちらのマグカップに入れますか?」


 私は予備に置いている。少し飲み口が大きなマグカップをテーブルに置きました。

 ミズモチさんに入れるか問いかけると、ミズモチさんはスッポリと収まってしまいました。


「うわ〜マグカップミズモチさんが、会社にいます!!そこなら、ずっと寝ていてもらっても大丈夫ですよ。

 お昼休みまではゆっくりしておいてください」


 プルプルとマグカップの中で震える姿は癒しですね。


 仕事は大変ですが、ミズモチさんがいるだけで、幸せな空間になります。


 溜まっていた仕事も終わらせられる気がしますね。

 今日はとことん頑張ることにしましょう。







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