第37話 私のサンタさん
湊さんから頂いたローブは、一先ずリュックの中へ直させてもらいました。
ランチがまだということで、湊さんとランチに向かうことにしました。
さすがはクリスマスですね。どこもいっぱいで入れたのは少し古びた喫茶店でした。
「ここでよかったのですか?」
「はい。阿部さんと行くならどこでも大丈夫です」
魅力+1を取ったことで、美少女パワーがグレードアップした湊さん。
あざと可愛くて、ほとんどの男性は落ちてしまうと思います。男性キラーという名の必殺技をゲットしたのですね。私……胸がドキドキしっぱなしです。
「すみません。注文良いですか?」
私が問いかけるとコワモテのマスターがこちらを見ました。なかなかに迫力のあるマスターで、こちらを見ただけで何も言ってくれません。
「湊さんは何にしますか?」
「今日は白い服を着てきたので、飛ばない食べ物がいいです」
白いフワフワコートを脱ぐと、白いニットワンピースが出てきました。これがまた……メチャクチャ可愛いのです。
「それではサンドイッチなどいかがですか?」
「いいですね。私タマゴサンドが好きです。あとホットレモンティーにしようかな?」
「タマゴサンドは美味しいですよね。私はハムサンドにしようかな。すみません。タマゴサンドとハムサンド。それにコーヒーとレモンティーをください。ありますか?」
「…………あるよ」
あれ?あのドラマに憧れている人かな?
「では、お願いします」
「…………はいよ」
普通の返事もしてくれるんですね。
あのドラマのマスターは「あるよ」しか言っていなかったように思いますが……
「なんだか雰囲気あるマスターさんですね」
「ですね。でも、私は嫌いではありません」
「私もです」
小声で湊さんと話すのは楽しいですね。
なんだか、恋人になった気分です。
これがレンタル彼女というやつでしょうか?オジサンなのでパパ活?でも、プレゼントをもらいましたので、どうなのでしょうか?
あっ!あとから高額請求をされませんかね?いやいや、湊さんはそんな悪い子ではありませんよ!!!
「阿部さん、変な顔をしてますよ」
「あっいや、色々今の状況を考えてしまって……そう言えば、ローブ……高かったのでは?」
「実は、阿部さんに頂いたホブゴブリンの魔石のお陰なんです」
「魔石のお陰ですか?はて?ホブゴブリンと言っても、ゴブリンの魔石なので、それほど高くないはずですよね?」
「はい。ホブゴブリンの魔石はそれほどの価値はなかったんですけど。今回、冒険者ギルドからB級冒険者さんに正式な指名依頼が出ていたんです」
そう言えば水野さんが私以外にも高ランクの冒険者に依頼していると言っていましたね。
「指名依頼は、普通の依頼料よりも金額が高くなるそうで、高位冒険者さんに支払われるはずだった報酬を、私たちに譲ってくださったんです」
「ええ!!そんな優しい冒険者の方がいるんですか?!!」
「ふふふ、最初にそれをしてくれたのは阿部さんですよ」
「え?私?」
「そうです。阿部さんが私たちにホブゴブリンの魔石を渡してくれた事を聞いたB級冒険者さんが、なら俺たちも譲ると言い出して、冒険者ギルドも魔石があったから信じてくれたんだと思うんです」
なるほど……あの魔石が巡り巡って湊さんたちに幸福をもたらして、私へのプレゼントに繋がったというわけですね。納得です。
「お役に立ててよかったです」
「お役になんて!阿部さんは私たちにとって、命の恩人です」
命の恩人は大げさだと思いますが、そう思って頂けるならミズモチさんと頑張った甲斐がありますね。
「……はいよ」
マスターが持ってきてくれたサンドイッチは絶品でした!
タマゴサンドと、ハムサンドをシェアして交換したのですが、タマゴサンドにはクリーミーな甘さが隠し味で使われていて、ハムサンドには辛子マヨネーズが使われているようで、それぞれの味の変化がとても美味しかったのです。
「ここ、隠れ穴場ですね」
「ですです」
二人でおいしさを噛みしめることが出来て、また来たいと思える店でした。ミズモチさんへのお土産としてカツサンドを作ってもらいました。
「お昼をご馳走になってしまってすみません」
「いえいえ、私こそ、こんなにも素敵なプレゼントを頂いてありがとございます!!!」
「阿部さん、二度も助けて頂きありがとうございました。阿部さんが困ったときは、どこにいても必ず駆けつけます!ですから、私は阿部さんに頼られるような冒険者になります!」
「はは、私はそこまで冒険者に重きは置いていませんが、困ったときはお願いします。それでは」
「はい!また、一緒に冒険しましょうね」
「わかりました。機会があればお願いします」
湊さんとの楽しいクリスマスデートを終えて、私は冒険者ギルドへ戻りました。
まさか女性とプチデートができるクリスマスが、私に訪れるとは、これもミズモチさん様々ですね。
インフォメーションを訪れると、サンタコスを着た水野さんがおられました。
「阿部さん!」
「水野さん。お久しぶりです。メリークリスマス」
「もう、こんな衣装を見られるなんて」
「凄く可愛いと思いますよ」
「阿部さんって、そういうことサラッと言えてしまうんですね。意外にプレイボーイですか?」
「いえいえ、彼女もできたことがありません」
「えっ?」
あっ、これは女性に引かれてしまう話題でしたね。
「そう……ですか。彼女はいないんですね」
おや?思っていた反応と違いますね。
引かれていないようでよかったです。
「そういえば、この間の件は決着がついたみたいで、よかったですね」
「あっ、そうなんです。若い子たちに譲ってしまわれたんですね」
「はは、私は別に」
「もう……阿部さんは人が良すぎますね……そうだ。これ、支給品なんですが」
そういって水野さんがクリスマスプレゼントの包装がなされた小さな箱を渡してくれました。
「これは?」
「冒険者の皆さんにギルドからクリスマスプレゼントです。大したものではありませんが、携帯クッキーです。少しだけ魔力が回復するそうですよ」
今日は本当に良い日ですね。
クリスマスプレゼントを二つも頂きました。
白くてフワフワした湊さんに、サンタコスの水野さんはどちらも可愛かったですね。
はぁ~幸せな一日です。
そうだ!!!
「ミズモチさん。サンタ帽子を買ってきましたよ。よかったら被ってみてください」
ミズモチサンタさんはやっぱり可愛いです。
プルプルと震える姿が、サンタ帽が揺れていいですね。
「ふふ、やっぱり私のサンタさんはミズモチさんですね。今日もいっぱい美味しい物を食べましょうね。あっ、カツサンドがあるのでおやつにどうぞ」
良い日ですね、クリスマスって……
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