第32話 報告と魔法の基礎知識

 いつもは週末に冒険者ギルドに来ています。

 ですが、本日はデカゴブリンの報告もあるので、仕事帰りに水野さんに会うため、スーツ姿でやってまいりました。


「水野さん、今よろしいですか?」

「えっ?あっ!ああ、阿部さんでしたか!スーツを着ておられたので、いつもと違う印象でわからなかったです」

「そうですか?最近はすっかり寒くなってきたので、マフラーとニット帽が手放せんね。私……寒がりなので」


 ニット帽を脱ぐと水野さんの顔が納得していました。


「そうですね。私も寒がりなので、いつも服を重ねてムクムクにしています」


 水野さんと世間話をしているのも楽しいですが、本日は遅い時間ですので……報告を優先するとしましょう。


「実は、昨日頂いた依頼なのですが」

「はい?」

「ゴブリンの住処の行方不明者についてです」

「ああ。まだ調査の途中で」

「それなんですけど、昨日私より身体の大きなゴブリンに襲われまして」

「えっ!!!どういうことですか?」

「はい。少し前にゴブリンの住処となっている洞窟の見張りをしている大きなゴブリンがいたんです。そいつに襲撃を受けまして」


 昨日の出来事を簡単に説明して、仮説を伝えました。


「そうだったんですね。魔石は新人さんが……わかりました。確認してみます。それと危ないことを頼んでしまってすみません」


 水野さんが深々と頭を下げてくれました。


「いえいえ、私は運がよかったようです」

「いえ、それは阿部さんの実力だと思います。

 それに阿部さんの話が本当であれば、それはホブゴブリンと言って、ゴブリンの進化系です。

 そして、進化していると言うことは、ゴブリンのレベルが10を越えていたので、新人さんたちでは太刀打ち出来ない魔物だと言うことです」


 レベル10のホブゴブリンですか?デカゴブリンにも種族名があったんですね。

 そういえば高良君がホブゴブリンと言っていたような気がします。


「ミズモチさんと阿部さんのレベルは10に達していないので、危険だったと思います。調査不足で本当にすみませんでした」


 いつもクールな水野さんが、申し訳ないなさそうな顔で謝罪してくれました。恐縮してしまいます。


「水野さん。私は一度水野さんに命を助けて頂きました。水野さんに助けられた命を水野さんのために使えたのです。よかったです」

「阿部さん……はい。ありがとうございます!!!」

「はい。この話は終わりです。後の調査はお任せします」

「任されました!これ以上の被害はないと思いますが、定期的に調査を入れてもらうようにします!」


 意気込む水野さんは、やっぱり年下の女性で可愛らしい人です。いつもクールな印象なのでギャップで萌え萌えです。


「そういえば、水野さんに教えてほしいことがありまして」

「はい。阿部さんの質問なら何でも答えますよ!えっと、プライベートなことはちょっと」

「はは、プライベートなことではないので、安心してください」

「多少は聞いて頂いても大丈夫ですけど」

「えっ?すみません。声が小さくて」

「何でもありません!」


 何故か怒られました……私、何をしたのでしょうか?


「それで、何を聞きたいのですか?」

「はい。実はレベルが上がって魔法が使えるようになったのです」

「凄いですね!魔法はマジシャンやプリーストなどの特定の職業しか使えないと言われているので、テイマーで使える人は珍しいと思います」

「えっ?そうなのですか?」

「使えないわけではないのですが、テイマーの方は魔物を鍛える方にスキルを使いますので珍しいですね」


 まぁそうですね。魔法を使える意味って、何って思いますが、私の場合はポイントが丁度よかっただけですしね。


「なるほど」

「あっ、別に魔法を取ることが珍しいだけで、いないわけではありません。魔法を使うためにはマジックポイントが必要です。マジックポイントはアプリのステータス画面で見れますよ」


 そう言われて久しぶりにアプリを起動しました


 名前 アベ・ヒデオ

 年齢 40歳

 討伐数 251

 レベル 4

 マジックポイント 5/5

 職業 ビーストテイマー

 能力 

 ・テイム

 ・属性魔法【光】


 登録魔物 スライム


 確かに項目が増えております。


「魔法には、基礎的な無属性と属性魔法の二種類があるんです。マジシャンやプリーストさんたちが職業を取られて、レベルが上がった際に習得できる魔法はスキルに応じた無属性魔法です。

 マジックアローとか、回復(極小)と言った感じです」


 テイマーでは、テイムが基礎的なスキルでしたね。

 私はミズモチさん以外をテイムすることがないので、使っていません。


 今の説明も初耳でしたが、知っているフリをしておきましょう。


「阿部さん。知らないことは知らないと言って頂いていいですよ」


 はい!私、ウソつくの下手くそでした。

 水野さんにすぐにバレてしまいました。


「すみません。他の職業について全く知りません」

「そういう顔してましたよ。その辺の勉強は後々してください。

 今回は魔法の基礎ですが、無属性は、その職業に応じた魔法を自然に覚えられます。また、上級魔法になれば外部から魔導書を使って覚えることになります」


 ほうほう、魔法にもたくさんの情報があるんですね。

 相変わらず水野さんの知識量は凄いです。


「それでは、阿部さんは無属性魔法ですか、それとも属性魔法ですか?」

「私は属性魔法ですね」

「属性魔法は、個人には固有の属性が存在していて、属性に応じた魔法を覚えられるそうです。阿部さんの属性を教えて頂いても?」

「【光】と出ました。あっミズモチさんは【水】です」

「なるほど、それでは、光はライト。水はウォーターの後に何かしら言葉を繋げると魔法が使えるようです。先ほどの無属性であれば、マジック・アローのようなものです」


 なるほど、私は【光】なので、ライト・アローと唱えれば光の矢が飛ぶということですか……さすがにここでは使えませんね。危な過ぎます。


「色々と勉強になりました」

「お役に立ててよかったです。ですが、こちらこそ今回は阿部さんのお陰で助かりました。調査はしていきますので、またお話を聞くかもしれません」

「はい。それは大丈夫ですよ」

「一緒に行った子達のレベルは2程度で、まだまだ駆け出しでした。阿部さんが居なければ確実に死んでいたと思います。命を救って頂き、ありがとうございます!!!」


 水野さんは真面目な人ですね。

 他人のために頭を下げられるのは凄いと思います。


「こちらこそ、いつも色々教えて頂き助かっています。これからもよろしくお願いしますね」

「はい!!!」


 私は水野さんの元を離れて、少しスキップしながら帰りました。

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