第14話 ゴブリンの住処 1
やって参りましたゴブリンの住処……ちょっと臭いです。
いつものダンジョンで発見するゴブリンは無臭で臭くありません。
ですが、山全体が糞尿の匂いがするような感じがして臭いです。
山全体がゴブリンの住処になっているようで、山に入る前からゴブリンの姿を見かけます。
大きな山ではありませんが、見るからにダンジョンなので、近くの住民が引っ越しされてしまうのも納得ですね。
「ミズモチさん。いよいよ戦闘開始です。準備はいいですか?」
《ミズモチさんはプルプルしています》
念話さん!シャラップ!
「はい。ミズモチさんはやる気満々ですね。それでは外側の掃除からしていきましょうか?山の奥に洞窟があって住処になっているそうですが、外側にいるゴブリンたちは見張りなのか弱いそうです」
ここに来て察知さんが大活躍です。
山の中に入ると、ゴブリンが居る場所がなんとなく分かるんです。
正面に10匹、右に2匹、左に1匹と言った感じで、どっちにゴブリンが、何匹いるのか察知してくれるのです。
これって凄くありません?う~ん、伝わらないかな?とりあえずゴブリンが近づいてきてもわかるので……
「ミズモチさん、左から来ます。そこです」
ゴブリンの不意をついて、ミズモチさんが襲いかかります。レベルが2になったからでしょうか?ミズモチさんの体当たりの威力がアップしている気がします。
一撃でゴブリンを撃破です。
「おお!ミズモチさん強いです!」
《ミズモチさんはプルプルしています》念話さん……
「次に行きましょう」
次は右のゴブリン2匹です。
ミズモチさんに1匹を任せて、私はアクティブスキルと使ってみることにしました。
「フック」
ふっ!技名をいいながらゴブリンの首に杖を引っかけて倒しましたよ。
私も強くなっているのでしょうか?ゴブリンを簡単に倒せてしまいました。
「2匹を相手にしても問題なかったですね」
ミズモチさんは出会い頭の体当たりで倒していました。
「正面の10匹はちょっと大変そうなので、数が少ないのを探しましょうね」
《ミズモチさんはプルプルしています》
うん。プルプルしながら、ゴブリンとの戦闘を楽しんでいる雰囲気が伝わってきますね。
「キャー!!!」
なっ、なんですか?今のは……悲鳴ですよね?ゴブリンに襲われているのでしょうか?
「ミズモチさん」
私はミズモチさんを抱き上げて、急いで悲鳴が聞こえた方向へ走りました。
察知さんが先ほどからゴブリンが10匹いることを教えてくれます。
「うわっ!」
ゴブリンに囲まれるようにして三人の若者がいました。
男の子は、ゴブリンに殴られたのか、頭から血を流して糞まみれで倒れています。
二人の女の子は、それぞれゴブリンに組み伏せられて、服は破かれてしまっています。あられもない姿で……私女性の肌に慣れていません。みっ、見えてしまっていますよ。
「あわわ。ミズモチさん行きますよ!」
プルプルと震えるミズモチさんを、女の子が組み伏せられている方角へ投げつけました。少しでも速く助けるための配慮です。決して、見ることが出来ないわけではありませんよ。私……40歳ですが……女性経験がないなんて……恥ずかしくて言いませんから……
もう一人の女の子を助けます。
組み伏せていたゴブリン3匹を倒して2人を救出成功しました。
服は見るも無惨な状態で、原型を止めていません。
あまり見るわけにはいきませんので、私は残った7匹を視界に入れました。
ミズモチさんは1匹を倒した勢いのまま、もう一匹のゴブリンと戦っていました。
さすがはミズモチさん動きが速いです。
「しっかりしなさい!あなた方も冒険者でしょ!」
私が泣き崩れる女の子を叱責すると、2人は涙を見せながらも私の声に反応しました。
「泣いていて、命が助かりますか?目の前には敵がいるんです。あの男の子を助けたくはないのですか?」
私の声で、2人は顔を見合わせました。
「ゴブリンは、私とミズモチさんが引き受けます。あなたたちは男の子を助けなさい」
恐怖を感じているかも知れませんが、今は彼女たちが動かなければ男の子を助ける余裕がありません。
「わっ、わかりました。サエちゃん!」
「うっ、うん。シズカ」
気弱そうに見えた子の方が先に反応して、気の強そうに見えていた女の子が引っ張って行かれました。
2人とも……とても素敵な女の子ですね。男の子が羨ましいです。
「ミズモチさん!」
私が呼ぶと、ミズモチさんは3匹目のゴブリンを倒し終えていました。
これで残りは5匹ですね。男の子から引き離さなければなりません。
「一緒に戦ってくれますか?」
《ミズモチさんはプルプルしています》
ふふ、こんな時だからなのか気を抜くことができましたよ。
「それでは行きます。プッシュ!」
私は一匹のゴブリンを押し込み、背中をミズモチさんに守ってもらいます。
なんと心強いのでしょうか……ミズモチさんがいれば何も怖くはありませんね。
「ギギッ!」
最後の1匹を倒したところで10匹のゴブリンが全て魔石へと変わりました。
「ミズモチさん。ありがとうございます」
私は倒したゴブリンの魔石を拾って、彼らの元へ戻りました。
「大丈夫ですか?」
二人は肌を晒したまま警戒している様子でした。
私は自分が着ていた上着とシャツを脱いで二人に渡しました。
「助けて頂きありがとうございます」
私の上着を纏ってお礼をいう子は、
専門学校に通う19歳だそうです。
私のシャツを着て涙を流しているのが、
湊さんの同い年で、冒険者専属志望だそうです。
倒れている男の子は
彼も二人と同い年で、冒険者専属志望だそうです。
三人は幼馴染みで、高校を卒業したばかりで冒険者に登録しました。
高良君と鴻上さんは冒険者になるため、湊さんは幼馴染みである二人が心配で、専門学校に行きながら手伝いをしていると自己紹介してくれました。
「ここに居ては、ゴブリンが来てしまうので近くの病院まで送ります」
高良君は頭を殴られては居ますが、出血箇所を見てもそれほど深い傷ではありませんでした。頭に衝撃を受けたことで意識を失ったようですね。
それよりもヒドイ匂いが高良君と鴻上さんからするので、そちらの方が気になります。
何故か湊さんからゴブリンの臭い匂いがしないので、話をしていても不快な気分になりませんでした。
「何から何までありがとうございます」
近くの病院まで送り届けると、湊さんから改めてお礼を言われました。
「いえいえ、困ったときはお互い様ですよ」
「阿部さんは一人で冒険者をしているのに強いんですね」
「一人ではありませんよ。私にはミズモチさんがいますから」
私の横でプルプルしています。
「ふふ、ミズモチさんもありがとうございます」
《ミズモチさんはプルプルしています》
「ミズモチさんが気にしなくていいと言っていますよ」
「お話が出来るんですか?」
「テイマーですので」
「いいなぁ~私も動物や魔物とお話したいです」
可愛い湊さんにチヤホヤしてもらうのは、オジサンの気持ちもウキウキです。
「テイマーはオススメしませんが、老後にのんびりとスローライフを送るならいいですよ」
「ふふ、老後までは冒険者はしないと思います。今は二人が心配で手伝っていますが、もしもそんな機会が来たら転職を考えてみます」
湊さんには改めてお礼をしたいと言われてmainの交換をしました。
ドキドキした冒険者ライフですが、私が人助けをするなど考えてもいませんでした。
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