第13話 インフォメーションの水野さん

はい、やってきました。

毎度お馴染み冒険者ギルドです。


すいません。ウソをつきました。

まだ三回目です。

しかも登録して、そろそろ三ヶ月経つのに利用した経験がほとんどありません。

登録と講習を受けただけで何もしていません。


運転免許を持っていますが、スーパーカブさんにしか乗ったことがありません。

車の運転……実は数える程度しかしたことありません。

案外、こういう役所関係に立ち寄ることがないので、やらなくちゃ、行かなくちゃというのが苦手なタイプです。


「あの~」


いつものアナウンサー風美人インフォメーション嬢はお休みのようです。

本日はいつもの方よりも幼い印象を受ける黒髪ボブにメガネをかけた女性が座っておりました。


「はい。冒険者の方ですか?」

「はい。私は阿部と申します」


始めてなので私は冒険者カードを提示して名乗りました。

メガネにボブカットな真面目女子さんは、素敵ですね。

瞳が綺麗な人で、美人さんです。


「阿部さんですね。私は水野と申します」

「これはこれはご丁寧に……水野さん。私、冒険者になったばかりでわからないことがあるので質問しても大丈夫ですか?」

「はい、何をお知りになりたいですか?」


水野さんはいい人です。私を見ても引きません。

それに丁寧で真面目そうな印象がとても好きです。


「あっ、あの初心者ダンジョンなるものはありますか?あまりダンジョンのことに詳しくないのです」

「ありますよ。それでは少しダンジョンについてご説明しますね」


インフォメーションの仕事はいいのかな?と思って辺りを見ますが、冒険者の方々はあまりインフォメーションには興味が無いようで通り過ぎていくばかりです。


「阿部さん。よろしいですか?」

「あっ、すいません」


よそ見をしていたので待たせてしましました。


「いえいえ、それではダンジョンについて説明いたします。


ダンジョンにはランクが存在します。


Dランク 初心者ダンジョン、魔物レベル1~5

Cランク 一般級ダンジョン、魔物レベル6~15

Bランク プロ級ダンジョン、魔物レベル16~30

Aランク 一流級ダンジョン、魔物レベル31~50

Sランク 怪物級ダンジョン、魔物レベル51~70

Zランク 天災級ダンジョン、魔物レベル71以上


レベルによってダンジョンのランクが決められています。

AランクやSランクダンジョンは魔物のレベルが定まっておりません。

そのため危険度が急激に上昇しますので、一流と呼ばれています」


資料を見せてくれながら説明してくれる水野さんは良い匂いがしました。


「ご理解頂けましたか?」

「あっ、はい。ありがとうございます!!!ダンジョンについて理解できました」

「はい。そして、Dランクでも、出現する魔物が異なるため、Dランク下位や上位が存在します。初心者にはDランク下位のGの巣穴、ゴブリンの住処、スライムダンジョンの三つを勧めております」


Gの巣窟は、まぁ皆さんが想像する大きなGがたくさん登場します。

現在使われなくなった地下鉄などがダンジョンになったそうです。

私は平気な方ですが……苦手な方が入ってしまうと、かなり危険なダンジョンだと説明されました。


ゴブリンの住処は、洞窟型のダンジョンで山一つがダンジョンに変化してしまったそうです。

入り口、近くの山にもゴブリンが歩き回っているそうですが弱いそうです。

奥に進むにつれてゴブリンが進化したり、群れで襲ってくるので、危険が増していくそうです。


スライムダンジョンは、使われなくなった下水にスライムが大量発生してしまったそうです。なんだか汚く感じる上に、スライムさんを殺すのは気が引けるのでパスですね。


「それではゴブリンの住処に行くことにします」

「承知しました。同時に依頼を受けられると、報酬が出ますよ」

「依頼?」

「はい。冒険者様方には、国から危険手当として最低限の討伐報酬が確約されています。ゴブリンの住処でしたら、ゴブリンを五匹討伐で1000円です」


そんな報酬があったのですね。ゴブリンを五匹倒しただけで1000円は効率がいいのかわかりませんが、初心者ダンジョンなので、あまり良くはないのでしょうね。


「ゴブリンの魔石を五つお持ち頂き報酬と交換します。またドロップアイテムなどは買取りも行っていますので一緒にお持ちください」

「何から何までありがとうございます」


私は水野さんに改めてお礼を述べました。


「いえいえ、阿部さんは凄く丁寧な方でしたので、説明もラクでしたよ」


荒くれ者や力自慢が多いので、私のような者は少ないのかも知れませんね。


水野さんがニコッと笑ってくれました。


あれ?これは惚れてもいいのでは?私に好意を……はっ!また恋愛の罠にハマるところでした。女性の優しさは好意ではないのです。私も40になって、さすがに学びましたよ。


「冒険者証にゴブリンの討伐依頼を登録しておきました。スマホはお持ちですか?」

「えっ?スマホですか?」


まさか、水野さんの番号を!!!


「はい。冒険者アプリを取って頂くとご自身で討伐した討伐数などが、冒険者証に記載されている番号を入れると確認ができますよ」


はい。勘違いでした。私に春が来ることはきっとないのでしょうね。


「ご親切に重ね重ねありがとうございます」

「いえいえ、私の仕事ですから」

「それでは」

「はい。また何かわからないことがあれば聞いてくださいね」


私はツルツルの頭を水野さんに下げて、別れを告げました。


話している間は、春のような暖かさがあったのに、今では頭から冬の風を感じるのは私の頭に髪がないせいで寒いからでしょうか?


水野さんが教えてくれたアプリを起動して、冒険者証に記載されている登録番号を入れました。


すると……


名前 アベ・ヒデオ

年齢 40歳

討伐数 3

レベル 2

職業 ビーストテイマー

能力 テイム


登録魔物 スライム


と言う内容の記載が出てきました。


ステータスに近い画面なので、冒険者証と冒険者職業はどこから生まれたのか気になりますね。


アプリを操作していると、新着情報を見つけました。


依頼書


ゴブリンの討伐、報酬5個の魔石で1000円


とメールのような画面が映し出されていました。

その次にゴブリンの住処のマップが映し出されます。


「なんだか最新機器にリンクしていて、色々凄いんですね」


スマホはnewtubeとブログを確認するものだと思っていましたが、本当に便利なんですね。


私はゴブリンの住処へ向けてスーパーカブを発進させました。


ミズモチさんは、リュックの中でプルプルと嬉しそうです。

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