第2話 冒険者ギルド
目が覚めた私はすぐにミズモチさんを探しました。
昨日の出来事が夢だったのではないかと思ったからです。
杞憂であったことにホッと息を吐きます。
ミズモチさんはマグカップスライムのまま寝ておられました。
テーブルに置いたマグカップからミズモチさんの頭部?が漏れ出ています。全く動いていませんね。
私は顔を洗って、自分用のコーヒーを用意します。
ブラック派なのですが、毎日朝はコーヒーだけで終わらせてしまうのは悪いところですね。
「ミズモチさん。お水の用意が出来ましたよ」
私が声をかけるとミズモチさんがマグカップからプルプルしながら出てきました。
ハウッ!
なんと可愛い生き物なんでしょうか?私、動物は元々好きでしたが、スライムの虜になりそうです。
ゆっくりのっそりと水が入ったお皿に近づいて全て飲み干してくれました。
昨日よりも、少しだけ元気になったミズモチさんにほっこりさせられますね。
「今日はミズモチさんのお家と食料調達をするためにお出かけしますよ」
ここで出番です。スマホさん!
私は昨日調べたアンジュさんのブログへ飛びました。
すでにブックマーク済みです。
スライムの飼い方を、コーヒーを飲みながら見ていきます。
昨日も思いましたが、テイムの情報やスライムの飼い方など、細かく書いてくれているので、ブロガーのアンジュさんは凄い人です。
丁寧な文章も読みやすいですしね。
「スライムは基本的にテイムされると、マスターの指示がなければ動きません。そのため飼いやすい魔物第一位と言えますが、ダンジョンで戦闘するには最弱です」
まぁ、私はダンジョンには行きませんからね。
ミズモチさんが弱くても問題ありませんよ。
「外に連れ出す際は、冒険者登録を行なって、スライムをテイムしたことを国に申請しておきましょう」
えっ!申請がいるのですか?確かに魔物ですからね。
危険と判断されないようにしないといけないのですね。
「スライムは、大きさを自由に変えれるため、外に連れ出す際はカバンに入れても大丈夫です。但し、最小の大きさ、最大の大きさは、そのスライムによって異なるため、あまり無理に大きさを変えようとすると弱って死んでしまいます」
なんと!
大きさを変えられるのですか?ミズモチさん凄いです。
それでもやはり無理はいけませんね。
私も仕事で無理が祟って倒れたことがあります。今も倒れる寸前まで疲れが溜まっていました。
ミズモチさんのおかげで元気になれましたけどね!
私はミズモチさんに無理は絶対にさせないと誓いをたてました。
健康的に大きくはなってほしいですが、無理はしてほしくないですね。
「ふむふむ、ミズモチさんはとりあえず何でも食べて、どこにでも連れて行ける良い子です。会社に一緒に行けるとか最高じゃないですか!癒やしが側にいる!想像するだけで楽しそうです。まぁ、会社に連れて行ったら、ミズモチさんのストレスになりそうですね……それはやめておきましょう」
今の会社ではミズモチさんが疲れてしまいますからね。
「それよりもスライムを飼うためには申請が必要ということですね」
それではせっかくの休みなので、ミズモチさんの用事を終わらせてしまいましょう。
幸い、冒険者ギルドへ登録と申請は日曜日でも問題ないようです。
長年愛用しているスーパーカブさんに乗り込んで出発です。
都心部から少し離れた我が家から、冒険者ギルドまではスーパーカブで30分ほどでした。
ミズモチさんをリュックに入れて、必要書類に書かれていた身分証と登録料を用意して到着です。
「うわ〜! 結構立派な建物ですね」
洋館といった感じの建物は、昔の市役所を改装して作られたそうです。
お金がかかっていそうな建物に圧倒されてしまいますね。
中に入ると大勢の人達がいて賑わっておりました。
若者が多くいるように感じますが、私と同い年ぐらいの方もチラホラと見かけます。
人混みはあまり得意ではないので、受付を探してインフォメーションに辿り着きました。
「すいません。冒険者登録と魔物のテイム申請をお願いしたいのですが?」
インフォメーションの女性は、アナウンサーをされていそうな綺麗な方で、少し緊張してしまいます。
「はい。新しい冒険者希望の方ですね。右の通路をお進み頂きますと冒険者登録受付になります。また、魔物のテイム登録も同時に行えますよ」
笑顔で親切に教えてくれる女性は、とても丁寧で、危うく恋に落ちてしまいそうでした。
「ありがとうございます」
私は礼を述べて通路を進んで行きます。
受付にたどり着くと、若者たちがたくさんいて緊張してしまいますね。
ポツンと空いている受付が一つありました。
向かってみれば、スキンヘッドに厳ついオジサマが座っておられました。
腕を組んで明らかにやってくる若者を威圧してしまっています。
「あの~よろしいでしょうか?」
「うん?ああ」
えっ?いいの?悪いの?ここは社会人として怯えることなく、普通に接することにしましょう。
「冒険者登録と魔物のテイム登録をお願いしたいのですが?」
「こちらへ」
言葉少なめですが、書類を二通出して指で記入するところを教えてくださいました。親切?なのでしょうか?
名前と住所、現在の職業を記入するようです。
えっ?冒険者としての職業を書け?あ~一応項目があるんですね。
私はスライムさんをテイムしたのでビーストテイマーですかね?
よし。
名前 阿部秀雄(アベ・ヒデオ)
年齢 40歳
性別 男
住所 ピー
職業 ブラック商事事務
冒険者職業 ビーストテイマー
テイムモンスター
種族名 スライム
個体名 ミズモチ
全ての項目を記入し終わったので身分証と共に提出しました。
お金は三千円ほどで出来るそうです。
「これでいいでしょうか?」
私が書類を差し出すと、強面の職員さんは親指を立てて判を押してくれました。
どうやらこれでよかったようです。
そっと、冒険者の手引きなる冊子を渡してくれました。
私は冒険者の仕事をする気はないのですが、相手の好意を無下にしてはいけませんね。
お礼を述べて受付を離れました。
どうやらあの方はコミュニケーションを取るのが他の人よりも苦手なだけの良い人みたいです。
ただ、私が受付から離れて冊子を受け取ったところを見た若者達から拍手をされたのはビックリしてしまいました。
「普通に登録できましたからね」
私はいつもより大きめの独り言を言ってから立ち去ることにしました。
「ハァ~、一つ目の関門はクリアですよ」
冒険者ギルドを出た私は、深々と溜息を吐いてミッションをやり遂げました。
リュックの中でミズモチさんも喜んでくれているような気がします。
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あとがき
どうも作者のイコです!
昨日は1話目投稿でしたが、たくさんの方々が読んでくださりびっくりしています。
カクヨムコンテスト現代ファンタジーランキング40位に入っておりました!(◎_◎;)応援ありがとうございます\(//∇//)\
凄くやる気になったので、しばらくは毎日投稿頑張ってみます!よろしくお願いします(≧∀≦)
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