《4/10書籍発売》道にスライムが捨てられていたから連れて帰りました

イコ

スライムを拾いました。

第1話 道にスライムが捨てられていた

 ふと、思うことがあります。


 日々の激務は心身共に私の心を追い詰めて……髪は抜け落ち、不摂生な食事がたたって身体からは加齢臭が出始めています。


 中肉中背と言えば聞こえは良いですが、痩せているのに腹が出ていて、額から油が噴き出すんです。


 theオッサンというものになってしまったなぁ〜とね。


「ふぅ~今日も疲れましたね」


 コンビニでビールにホタテチーズを購入して、袋はエコバッグを取り出す。

 スマホではサッカーワールドカップの活躍が報道されていて、BGM代わりに夜道を帰っていると、電柱のところに段ボールがおいてありました。


「ふむ。こんな時代に珍しいですね」


 最近は、動物保護団体の方々が頑張ってくれているので、犬や猫を捨てるのは犯罪だとテレビで見ました。

 そのお陰で動物を捨てる人は少なくなっているというのに珍しいですね。


「少しでも癒やしを頂けますか?」


 癒やしてもらいたくて、段ボールの中を覗き込みました。


「えっ?」


 小さなスライム?が捨てられていました。


「そう言えば少し前にダンジョンが発見されて、魔物をテイム出来るとかニュースで見ましたね」


 ダンジョンなんて若者達が賑わっているだけで、自分には関係ない話だと思っていました。


 まさかこんな形で私がスライムさんを拾うことになるとは……


「それにしても小さいですね」


 掌サイズのスライムさんは弱っているのか、ピクリとも動きません。


「う~ん、死んでいるのかな? これは連れて帰るしかないですかね?」


 もしも死んでいるなら弔ってあげたい。

 そんな思いで、スライムさんをエコバックに入れました。

 ビールとホタテチーズは鞄に入れたのでパンパンです。


「ふぅ~水餅みたいな見た目ですね。さて、連れて帰ってきたはいいですが、何を食べるんでしょうね?」


 私はスマホを操作して、スライムの飼い方を調べてみました。


「おっ!ブログを書かれている方がいますね」


 アンジュさんという方のスライムの飼い方は丁寧な内容で見やすいです。


「ふむふむ、スライムさんは何でも食べるのですね。とりあえず水餅みたいだし、水を飲ませてみようかな?」


 私はお皿に水を入れてスライムさんを皿の近くに置きました。スライムさんはプルプルして可愛いです。


「おっ、水飲んでくれましたね」


 一瞬で水を飲み干したので、お皿に水を足して上げます。昔から、犬や猫の元気な姿が好きです。


 細いよりも、太くて丸々している子が好きでしたので、スライムさんも丸々太ってほしいですね。


「あっ、名前がないと不便ですね。いつまでもスライムさんはかわいそうですし……う~んそうですね。やっぱり水餅に見えるミズモチにしましょうか?」


 水を飲んでいたスライムさんこと、ミズモチさんがプルプルと震えていました。


「ふむふむ。気に入ってくださいましたか? ふふ、ミズモチさん。先ほどよりも大きくなりましたか?」


 掌サイズなのは変わりませんが、気持ち大きくなったような気がします。

 それに名前を呼んであげると気持ちが通じ合った気がしました。


「ふふ、すいません。今は食べられる物があまりないので、明日は買い物に行ってくるので、たくさん食べられる物を買ってきますね。そうだ。今あるのはバターロールなのですが食べられますか?」


 バターロールを少しずつ千切っては渡してあげます。

 ミズモチさんは口がないので身体に近づけると、透明な身体の中にパンが落ちて溶けていきました。


「おお! そうやって食べるのですね。あっ、一応ミズモチさんは魔物ですよね? 私は寝ている間に殺されないのでしょうか?」


 もう一度スマホで魔物のテイムについて調べてみる。


「何々……テイムのやり方? まずは、魔物を弱らせます。うむ、すでに弱っていましたね。次に魔物が好む餌を与えます。えっ? ミズモチさんの好きな物ってなんでしょうか?」


 私はスライムの好みと調べて……スライムは何でも食べますと書かれていました。


「う~ん、なんでもいいのかな? それでは先ほどのパンでもいいのでしょうか? ですが、明日からは良い物を食べてほしいので、自炊をすることを考えなければいけませんね。魔物にとって美味しいと感じる物が分かればいいんですけどね」


 私はスライドして最後のテイムを実際にするためにはと言う項目へ進みます。


「ふむふむ。最後は名前を付けてあげましょう。名前を付けて、魔物が認めればテイム完了です。テイムが完了すると、魔物と心を通わせられるようになります。そうすれば魔物が嫌がること以外は言うことを聞いてくれるようになります」


 なるほど……では、ミズモチさんはすでにテイム出来ているということでしょうか?


「ミズモチさん、お嫌でなければ、私の元へ来て手の上に乗って頂けますか?」


 私はミズモチさんに向かって手を差し出しました。


 しばらくプルプルと震えていたミズモチさんは、ゆっくりとこちらに向かってきて、掌に乗ってくれました。


「おお!!! なんとカワユイのでしょうか!!! ミズモチさんはプルプルとして、ヒンヤリとして、最高なのです!!! 潰してはいけませんので、ミズモチさんのお家も作らないといけません!」


 お家は狭いところが好きと書いてありました。

 ダンボール拾ってくればよかったです。

 私は簡易のお家として、別の物を差し出してみました。


「ミズモチさんマグカップなのですが入れますか?」


 昔、newtubeでマグカップに入った子猫様を見ました。ミズモチさんは小さいので入れるかもしれません。


「おっ、おっ、入ってくれるのですか? おお! 凄い、ピッタリです」


 マグカップに綺麗にハマるミズモチさんはプルプルとしていた身体が動かなくなりました。


「寝たのでしょうか? 明日は休みなので、色々買い物をしてきましょう。ハァ~今日まで地獄のような日々だったのに、ミズモチさんのことを考えるだけで元気が沸いてきますね!うわっ!いつの間にこんな時間に! ハァ~疲れましたのでシャワーに入って寝てしまいましょう。ビールはぬるくなっているでしょうから、また明日ですね」


 一人暮らしが長くなると、独り言が増えていく。

 今日はそれも嬉しい様な気がしますね。


 明日が楽しみです。


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 あとがき


 どうも作者のイコです。


 カクヨムコンテスト8でライト文芸特別賞をいただきました。

 2024年4月10日に書籍化されましたので、良ければ書籍を手に取っていただければ幸いです。


 WEBよりも文章を加筆修正しておりますので、読みやすくなっていると思います。


 よろしくお願いします\(//∇//)\

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