過去編 その1 出会い
悲惨な出来事が起こる約5年前……。
桜も散り、新緑生い茂る初夏。
今年調理師の専門学生となった三日月は、忙しい毎日を送っていた。
毎日片道50km以上の道を車で通学し、朝は鍵当番の先生が来る前から来て掃除をするのが彼の入ったサークルの日課であった。
彼が入ったサークルは、学校内では1番厳しい先生がやっているもので、朝、夜共に自主練習をする上に、土曜日には学校の見学会での料理教室も運営するという中々にハードなものであった。
三日月は通学時間もかかる為、家を出るのは朝6時、帰りは22時が当たり前の毎日であった。
だが当然、実際の店での勤務が無いと上達も無いし、食材を買うお金もない。
そこで三日月は、毎週土曜日の夜と日曜日一日、地元のレストランでバイトをしていた。
その店は地元では有名で、経営しているシェフはイタリアで修行をしていた職人だ。
そんな学校、地元のレストランでの研鑽の日々で忙しい三日月に、転機が訪れたのだった。
とある日の昼過ぎ、バイト先のひとつ上の女性の先輩が友達と一緒にご飯を食べに来た。
このバイトの先輩は、兄の修司の友達であり、先輩のお母さんもこの店で働いていた。
そんな先輩は、友達であろう女性と共に2階の景色の良い特等席でくつろいでいた。
「アイスコーヒーお待たせしました。ミルクとガムシロップ、使いますよね。」
そう言って三日月は甘党と知っているその先輩の前に、2人分にしては多めのミルクとガムシロップを置いた。
「おー!さっすがー!気が利くねぇ。でも、この子は甘いの駄目だからブラックで飲むんだって、変だよね。」
別にブラックでも良いだろう……と、苦笑いを浮かべた三日月は、共に来た女性の方へと視線をやる。
可愛らしい先輩とは対象的に、きりりとした顔立ち。
目元はアイラインの為か、眼力があるような気がする。
耳には随分と重そうなピアス。
こういう人とは、一生縁がないのだろうなぁ。と三日月は軽く会釈してその場を後にした。
その数日後……。
「この間の友達が、三日月君の事気に入ったみたいなんだけど、連絡先教えていいかな?悪い子じゃ無いと思うんだけど……。」
こうして、二人の関係は始まったのだった。
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