第9話 婚約

時は遡り───。

新緑の季節、遅咲きの桜も散りそろそろ梅雨かと言ったその時期に、三日月は朱音にこう言った。


「本当に良いんだよね?後悔しない?」


この言葉は半月前からずっと繰り返している言葉だ。

「もちろん。気遣ってくれてありがとう。」


三日月と朱音は、この日───6月1日に、婚約をした。


事の発端は、朱音が以前からずっと20代後半には子供を産みたいという発言をしていた事による。

朱音は今年で25になる。

三日月は覚悟を持って、前々から朱音に結婚の打診をしていたのだった。


朱音もそれを受け入れ、冬には各々の両親に挨拶し、1年後のこの時期に結婚しようと約束したのだった。

50本の薔薇の花束を渡された朱音の笑顔は、曇りひとつ無かった───はずなのに。


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