第13話 さりげなく

 夏休み明けの初日。

 気付いてしまった。

 枋木こぼのきさんの鞄に、この前プレゼントしたモノが付いていた。

 嬉しい気持ちになる。

 頬が緩みそうだ。


「なーにニヤニヤしてんだよ!」

「うおっ!」


 後ろから中谷なかやがやってきた。

 クラスのムードメーカー的存在で、勉強は苦手だが運動神経は抜群である。


「ちょっとな」

「ふ~ん」


 ジト目は止めて。


「枋木さんとなんかあったな」

「…!?」


 分かりやすい反応をしてしまった。

 中谷はゲラゲラ笑って「図星かよ!」とツッコミを入れられた。


「白状しろや」

「断固拒否で」

「えー」


 中谷はベラベラ言いふらすから頑なに拒否をした結果、「必ず情報掴むからな」と笑って自分の席に戻って行った。

 一安心すると枋木さんが教室に戻って来た。


「枋木さん」

薮木やぶき君」


 いつもの挨拶代わりの名字呼びを終えた所で早速言った。


「ありがとう、鞄に付けてくれて」

「あっ、うん!」


 少し照れくさそうにする枋木さん。


「大好きなぞうさんってのもあるけど…」


 けど、何だろう。

 言葉を待つと、枋木さんはゆっくり続きを言った。



 ドキッ…。

 どんどん鼓動は早くなる。

 平静を必死に装う。


「喜んでもらえて良かった」

「ふふ」


 タイミング良くチャイムが鳴ると同時に担任がやって来た。

 会話が終わって良かった…。

 会話のキャッチボールを続けていたら倒れる所だった。

 危ない危ない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る