第12話 夏休みの出来事
待ち合わせ時間までにまだ30分はあった。
早く行って待つのは当たり前。
そんなことをネットで見て実践。
前日からソワソワしていたから、早く起きた為に身支度はあっという間に終わった。
その勢いで出掛けたから早すぎたわけだ。
「
「あっ、
半袖のブラウスに、黄色のロングスカートを着こなしていた。
いつもの三つ編みではなく、ストレートヘアだ。
とても綺麗な艶のある髪の毛で、それが彼女の清楚な透明感のある雰囲気になっていた。
「可愛いね」
ポロッと無意識に口から出た。
すると枋木さんは恥ずかしながら「ありがとう」と言った。
「じゃあ、行こうか」
「うん」
僕たちはとある場所を目指した。
※
「可愛いね」
「ほんとだ」
ふれあいコーナーにて枋木さんは白いうさぎを抱っこしていた。
僕は茶色のうさぎの頭を撫でている。
動物園にやって来た。
動物を愛でる枋木さんは天使に見えている。
「次は何見るの?」
枋木に聞くと、彼女は少し考えて「ぞうさん」と言った。
「私、動物の中でぞうさんが好きなんだ」
「そうなんだ」
僕は撫でていたうさぎから離れてコーナーから先に出た。
その後に、うさぎを優しく膝の上から地面に降ろし「またね」と枋木さんは言ってコーナーを出た。
2人で早速、象のエリアに向かった。
着くと餌やり体験が出来るとのことで、飼育員さんから枋木さんはニンジンを、僕は林檎を渡された。
「うわあ…可愛い…!」
興奮して目をキラキラと輝かせている枋木さん。
「今は餌やりだけだけど、いつか乗りたいな…」
そんな夢を枋木さんは口にしながら、早速餌であるニンジンをやるとキャッキャッと騒ぎながら象と交流する。
その様子を見ている僕は、枋木さんと象の交流に癒されていた。
愛でたい光景だなと思って、少しうっとりと。
すると「薮木君も」と枋木さんは笑顔で僕を呼んだ。
持っていた林檎を象に差し出すと、鼻を器用に使って掴んで口に運んだ。
美味しそうに食べていることは、なんとなく分かった。
「そろそろ時間だから、お土産コーナー行こう」
「そうだね!」
最後の林檎を象にあげて「また来るから!」と象と約束を交わす枋木さんだった。
なんとなく、あの象が頷いたように見えたのは気のせいかな。
※
お土産コーナーに行くと、ぬいぐるみやポストカード、Tシャツ、お菓子、文具、キーホルダー等々がずらりと並んであった。
枋木さんはうさぎ・コアラ・キリンなどの動物に見向きもせず、真っ直ぐ象のグッズの所に行き悩んでいた。
僕は枋木さんの様子を見ている。
お土産が被らないためだ。
枋木さんは右へ左へ移動したり、何周も歩いて見たり、たまに立ち止まって見たり持ってみたりを繰り返す。
悩みに悩んで30分経過していた。
「ありがとうございました!」
店員さんの元気な言葉を聞いて、お店を後にした。
※
「今日はありがとう」
「こちらこそだよ薮木君。誘ってくれて嬉しかったよ」
最初の待ち合わせ場所に着き、ここで解散となる。
「じゃあ、また…」
「待って」
僕は鞄から袋に入ったモノを取り出した。
「これ、プレゼント」
「えっ?!」
驚く枋木さん。
「い、いいの?」
「うん、受け取って」
枋木さんは「ありがとう」と言ってプレゼントを受け取ってくれた。
「じゃあね」
「うん、また」
枋木さんの姿が見えなくなるまで僕は手を振った。
プレゼントをバレずに、尚且つ枋木さん自身が買っていたグッズと被ることなく、無事に渡せたことに一安心する。
気に入って貰えるといいな。
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