REVIVE KING 再起の王

湯豆腐

第1話 夢の終わり

ドゴーン!!!ドカーン!!

揺れる城のある一室。

二人の男が酒を飲みながらチェスをしていた。

「なあ、ブラスト。」

ブラスト「…なんだ?」

「もう、俺達二人だけだな。」

ブラスト「…ああ。」

「多分、もうすぐあいつの番が終わる。その次は俺だ。」

ブラスト「…」

「俺達が初めて会った日のことを覚えてるか?」

ブラスト「忘れる訳が無い。」

「ハハ!嬉しいねぇ。…あの日全てを諦めてた俺にお前は手を伸ばしてくれた。お前だけだった。…そのなんだまあ。…いや、なんでもない。忘れてくれ。」

ブラスト「…」

「チェックメイト!さて!静かになったな。遂に俺の番か…。まあ、ちょっくら行ってくら!直ぐ帰ってくるさ!また後で飲もうぜ!…じゃあな、相棒。」

ブラスト「…ああ、相棒。」

そう言うと男は部屋を後にする。

再び振動が響く。

ブラストは残された酒を一気に飲みながら呟く。

ブラスト「…馬鹿野郎…何がまたな、だ…。」

一時間経っただろうか。あるいは一分だったのだろうか。

そんな時間が経ち、やがて静かになる。

扉が開かれる。

勇者「追い詰めたぞ!魔神王ブラスト!」

その声の主に目を向ける。

強く、勇気に満ち溢れた瞳だった。

ブラスト(俺は今、どんな目をしているのだろう…)

ブラスト「よう、元気そうじゃねぇか勇者。なんのようだ?」

勇者「決まってる!貴様を倒し!世界に平和をもたらす!」ジャキ!

剣を構え、他の仲間も臨戦態勢をとる。

ブラスト「そうかい、んじゃまあ…始めようや。」

戦いが始まった。

勝敗の決まっている戦いが。


ブラストは倒された。

戦いの中で、一瞬の隙を突いた勇者が胸に聖剣を突き刺した。

勇者「終わりだ!ブラスト!」

そんな声は聞こえておらずブラストは天井を見ながらぼんやり自分の人生を考えていた。

ブラスト(あの日…俺がこんなことを目指さなかったらこうはならなかったのかね…まあ、所詮こんなもんだろ、魔王とかの末路って。物語のヒーローに倒されて皆でハッピー。俺は一人追い詰められて孤独に死ぬのか…)

そう考えると急にブラストは笑いが込み上げてきた。

ブラスト「ふふふ…ふはは!!アッハハハ!!!あっヒャヒャヒャ!!!」ゲラゲラ

その様子を勇者達は不気味がる。

勇者「な、何が可笑しい!!!」

ブラスト「いや、なんていうか俺の人生ってマジでくっっっっっだらないな〜って、クッハッハッハハハ!!ただお前らの引き立て役として殺されて、夢も叶えられず仲間の仇も討てずにこうやって無様を晒して死ぬ!こんなに情けない笑い話が他にあるかよwww!!!アッハッハッハッハ!!!」ゲラゲラ

そんなブラストに勇者は再び剣を胸に突き刺す。

ブラスト(あ〜あ、おれ…こんな風に一人ぼっちで死ぬんだ…)

薄れゆく意識の中で彼はある景色を見た。

嘗て、魔神王になると目指したあの日、仲間達と盃を交わした場所を。

ブラスト(あの時の酒…美味かったな〜)

そして完全に意識が途切れる。

ここに一人の王の命が終わった。

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