プロ意識
しばらくの間、トラップの解除に専念した冒険者の4人。
スケトの指示の通りにブロック状の床を順番にに踏んで、次々にトラップが解除された。
そして、最後のトラップが解除されて、安堵の表情になった4人とスケト。
「お疲れ様です。とりあえずこの周辺のトラップは解除されました。ただ、6時間ごとにリセットされますので、それまでに出ましょう。」とスケトが説明した。
「は...ようやくモンスター狩りの時間だ!」と張り切った戦士の男。
「この先にはどのようなモンスターがいますか?」と尋ねた魔法使いの男。
「そうですね...この周辺にいるローレベルモンスターはビッグ
「そんなちっちぇーモンスターを相手にするより、もっとデカいやつをやろうよ...」という言葉にスケトは次に説明を続けた。
「さっき言った通り、油断は禁物です。例えローレベルモンスターでも毎年初級の冒険者が死亡する報告がありますから...ここは少しずつこのダンジョンに生息するローレベルモンスターから行動や攻撃のパターンに慣れて、あとは出現のタイミングを確認して、経験を積んで進むことが得策かと...」
「こんなの...冒険なんかじゃない!いちいち安全のことを考えるのはただの臆病だ。危険を冒すまでだからこそ、【冒険】だ。これはもはやただのダンジョン内の旅行になってしまうぞ!」と苛立ちが隠せない表情で戦士の男はまた話を続けた。
「ああ!!もういい!お前の説教にはもうたくさんだ!俺たちはお客様でしょう!ドゥナリアスではお客様を神様みたいに扱うと聞いたけどさ...それなら、俺たちの命令に従え!」と怒りの勢いでかなりきつい言葉を口にした戦士の男。
「そ、それはさすがに言い過ぎでしょう...」と注意しようとした神官の男だが、戦士の男は聞く耳を持たなかったようで、逆に神官の男に苛立ちが隠せない目付きで見た。
「全く...だから、あなたはスリースピアーズの入団試験に落ちたのですよ...まあ、僕たちもですけどね...」と呆れた声で言った魔法使いの男。
「は?まるで俺のせいだけみたいじゃないかよ!」と魔法使いの男の方に向けて、彼のケープを掴み、喧嘩を始めようとした戦士の男。
そこでうわわわと顔をしながらも何をせずにそこで立っている盗賊のヴィオ。
「スリースピアーズ...入団...だと?」
とさっきのトラップの件みたいにまた突然笑顔が消えて、小さな声で言ったスケトは怖い目で戦士の男の方に向けた。
「そうだよ!俺たちはあの超一流名門冒険者ギルドの最終入団試験を受けるために王都にやって来た!だが、理由も言わずに不合格と言われた。だから、ここでのんびり経験を積むじゃなくて、もっと大物を倒して、再試験に挑むんだ!」と戦士の男が自分の本心を口にした。
それを聞いた瞬間、スケトの表情が険しくなり、不気味な笑顔を浮かべたまま...次のように述べ始めた。
「では...お客さんには特別に教えて差し上げましょうか?なぜあなたたちはあのギルドで不合格なのかって」
「は!?」と驚きと怒りが混じった声を放った戦士の男。
「あの超一流名門冒険者ギルドにとって、何より重要であることは...何だと思いますか?」と感情を込めていない口調で戦士の男に問いかけた。
「それは...才能と努力でしょう!才能がなければ、まずは入れないし、入ったらまたがむしゃらに腕を磨いていく努力も惜しまない姿勢!そうじゃないのか?」という返事に、ダンジョン案内人のスケトがクスッと少し笑いがこぼれた。
「それは間違いですよ...もちろん才能と努力が必要ですが、その上に何より重要なのは...【プロ意識】です。」とスケトが答えた。
「プロ意識...ですか?」とここで魔法使いの男が興味を持って、スケトに訪ねた。
「はい...そうです...冒険者にとっては一番大事だと言われるのはプロ意識です。お客さんたちには素質があると見込んで最終入団試験に招待されたかと思いますが、そこで試されるのは入団に相応しい人材であるかです。努力に惜しまない姿勢はもはや最低限の条件ですので、もう言うまでもありません。能力は入団後にいくらでも鍛錬や訓練で補えますが、能力よりはプロ意識を重視します。あのギルドが求めたのはプロフェッショナルとして任務をこなす...そのような意識を常に持っている人材です。」と言って突然鋭い目付きに変わって、指を冒険者の一人を指した。それは神官の男だった。
「まずは神官のお客さん!さっきトラップの矢で負傷した魔法使いのお客さんを咄嗟に助けに立ち上がろうとしたところには仲間思いのあなたらしいですが...しかし!まだ安全が確認できていないところで助けに行くことというのは二次災害に巻き込まれるというリスクがあります。神官のあなたに何かあれば、このパーティ全体に影響が出ます。そこは反省点です。」と言って、次に指を差したのは魔法使いの男だった。
「魔法使いのお客さん!あなたはかなり自分の魔法のスキルに自信があると見受けられましたが、風の魔法を詠唱するときには多少無駄とラグが見られました。さらに言うと、あなただけが負傷してしまったのも反応が遅れたからです。攻撃力が強い分、防御は弱いです。軽量化した防具を身に付けることをおすすめいたします。防御のことをもっと意識しないといけません。」と言って、スケトの次のターゲットはダンジョンに入ってから、発声が一度しかない盗賊のヴィオだった。
「仲間とのコミュニケーションを取ることが一番大事です。自分の意見を言わないと、誰にも理解してくれません。そうやって、仲間の意見に流されたままで行動することがドゥナリアスの人の典型的な考え方です。しかし、王国では主張が強い方が勝つので、いつに立ってもあなたが言いたいことを悟って、考えてくれる人がいると思わないでください。」という言葉を言われたヴィオはただ下を向き、結局反論の一つもしなかった...というよりできなかった。
そこで、ヴィオだけが分かるようにスケトは母国語で次のように言い放した。
「そもそも...君は盗賊に向いていない...」
そして、最後にスケトは戦士の男を冷たい目線で見て、言葉を放った。
「あなたはもはや基本になっていません。冒険の前日で飲み過ぎて、今でも二日酔いが完全に治っていないとかは論外です。さっきからあなたが苛立ちしているのも二日酔いの影響があると考えられます。その状態での判断力が鈍くなることぐらいは分かるはずです。プロの自覚が見られません。そして!他の仲間の意見や私の忠告も聞かずに勝手に取った行動の数々...それはどのような結果を招くのかさっきのことも分かるはずです。それとも何ですか?あなた一人だけではモンスターが倒せるとお考えですか?」というかなり辛辣の評価の言葉を聞いた戦士の男は反論する余地がなかった。ただ拳を強く握りしめて、スケトの言葉を聞くしかできなかった。
「何より...遊びの気持ちで冒険をしている雰囲気が見えるほど感じています...それはプロ意識の欠片さえもありませんね。アマティサで冒険をした経験があるからと言って、あのギルドでのクエストがこなせるとか...考えが甘過ぎです。あのギルドではプロ意識が先に物を言います。
そこで戦士の男はもう我慢の限界に達した。
「言いたい放題ことを言いやがって!もういい!お前はクビだ!こんなダンジョン案内人なんて要らない!そこまで見たいなら、俺の腕をみせてやる!この辺のモンスターは俺一人全部やっつけてやる!」と言い出した戦士の男に対して、神官の男は彼の腕を掴んで、止めようとした。
「それは危険すぎるよ!」と言ったが、戦士の男は神官の男の手を振り払った。
「ふさけるな!俺一人でも行く」と言い出して、ダンジョンの奥に走ってしまった戦士の男。
「やれやれ...一人行動とはまた危険の行動の極みですね...」と淡々と言ったスケトだが、
「契約上...お客さんの安全は最優先事項ですので、このままほっといてはいけませんね。皆さんも気をつけて、私の後に付いてっ!」と行った途中で神官の男と魔法使いの男は戦士の男の後を追いかけた。
「仲間を見捨てるなんて!できるわけない!」と言った神官の男の背中を見て、スケトはため息をついた。
「やれやれ...それはあなたも危険に巻き込まれて、全員が一緒に死亡することにつながりますから、それは一人でも生存できれば、また助けを呼んで、二次災害を防ぐためでもあると...もう聞こえませんね...」
そこに残されたのはどう行動すればいいかまだ混乱している盗賊のヴィオだけだった。
「は...私たちも行きましょう...でも、気をつけて進みますよ」と言ったスケトを見たヴィオはうなずいた。スケトは緊急用なたいまつを取り出して、火をつけた。
そして、2人は後を追った。
しばらくダンジョンを進むと、広い空間が見えてきた。
何が変だ...とスケトは進みながら、違和感を感じる。
ローレベルモンスターさえも一匹いない...
討伐された痕跡もない...
ということは...
まさか!
広い空間に到着したスケトとヴィオが見えたのは他の冒険者の3人と...
3人の前に立ち塞がる巨大なムカデだった。
人間の3倍ぐらいの大きさ...
その100の足に付いている鋭い刃...
とあの凶暴そうな口か頭か分からない部分から出た鋭く尖った牙...
【ジャイアント
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