冴えないインキャ教師と生徒たちからバカにされていた俺、実は国家と生徒を守る敏腕公安警察でした〜可愛い教え子たちを悪から守っていたら、いつの間にか人気教師となって生徒たちからモテ始めています〜

津ヶ谷

第1話 インキャ教師

「うわ、あいつまだ辞めてなかったのかよ」

「朝っぱらから嫌なもの見たわー」


 俺が出勤すると、生徒たちからは冷ややかな視線が飛んでくる。


 ボサボサの髪で猫背、黒縁メガネをかけた俺はインキャ教師と呼ばれている。

帝華高等学校で俺は生徒たちに現代文を教えているのだが、評判はあまり良くない。


 数学のイケメン教師の方ばかり話題に上がり、地味な現代文の先生など、相手にされないわけだ。


 桜並木がひらひらと舞い落ちるそんな季節。

今日は、この学校の始業式である。


 新しい一年の幕開けだ。

今年も平穏に過ごせることを切に願っている。


「おはようございます」


 俺は、職員室へと入る。

女子校ということもあって、教師陣も女性がほどんどである。


 そんな環境なので、男性教員は肩身の狭い思いである。


「狩谷先生、おはようございます」

「校長先生、おはようございます」


 デスクに座ると校長先生が声をかけてくれる。


「今年もお願いしますね。狩谷先生の現代文の授業は好評ですから」

「ありがとうございます。頑張ります」


 教師としての俺の評価は決して悪いものでは無い。

むしろ良い方である。


 そして、始業式が始まる。

生徒たちの雰囲気は何だかどんよりとしているように思う。


 これが、休みボケというものであろうか。


「えー、今年もですね……」


 校長のどこからかコピぺしてきたような挨拶から始まる。

その挨拶で、さらに雰囲気をどんよりさせているようにも思う。


 そこから、担任のクラスが発表されて行く。

俺は2年の担任を受け持つことになった。


 始業式を終え、俺は自分の担当するクラスの教壇へと立つ。


「今日からこのクラスの担任となりました狩谷真人です。担当教科は現代文です。このクラスも受け持つので、よろしくお願いします」


 新しいクラスというのは、気持ちを新たにしてくれる。

また、生徒にとってもクラス替えというのはとても大きなイベントだろう。


 仲のいい友達と同じクラスで喜んだり、別のクラスになって寂しかったり。

高校生活においてクラスというコミュニティはそれほど大きなものでは無いだろうか。


 俺は、新しいクラスに挨拶を済ませる。

好意的な目とそうでない目が入り混ざっているように感じた。


「さて、僕のことはこのくらいにして副担任の福留先生にも挨拶してもらいましょう」


 このクラスの副担任となる福留先生に挨拶をしてもらう。


「一年間、副担任として狩谷先生のサポートをさせて頂きます。福留真美です。よろしくお願いします」


 俺は2年3組の担任となった。

副担任は去年採用されたばかりの福留先生。


 担当教科は音楽で、生徒たちの評判もいい。

綺麗な黒髪をショートカットにして、美人と評判の先生だ。

ちなみに巨乳である。


「狩谷っちが担任かぁ」

「まあ、下手な先生よりはマシか」

「だな」


 前髪を重たく下ろしている俺は、インキャスタイルだ。

生徒からも舐められていることだろう。


 それでも、1年の頃から担任している生徒もいる。

少ない信用だけでも勝ち取っているのだろう。


「先生は髪の毛セットしないんですかー?」


 1人の生徒が手を上げて声を出す」


「しないかな」

「えー、ちゃんとセットした方がいいのに……」


 俺には教師の時はインキャスタイルで居ないといけない理由があった。

それは、俺にもう一つの顔があるから。


 この生徒たちの笑顔を守る、大切な仕事が。

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