魔王と剣姫の末娘は溺愛される

紅 蓮也

第1話 そろそろ来るらしいです

 昔は国ではなく各種族ごとに暮らしていて、魔王が現れたことで、一つの国となり、人間から魔王を君主とする魔国と呼ばれている亜人族たちの国ある城のダイニングルームで、家族が話をしながら食事をしていた。


「父上。そろそろミルシェット王国がまた攻めて来るみたいですよ」


「はぁ……そうか」


 父親そっくりな顔立ちで黒髪黒目の嫡子であるベルゼからの話にため息をつきながら整った顔立ちに黒髪赤目の魔王であるルシファーが答えた。


「お父様。なぜ?ミルシェット王国は、我がサターナ国に何度も攻めてくるのですか?」


 母親そっくりな金髪に父親と同じ赤い目をした末娘のレヴィーがルシファーに疑問をなげかけた。


「レヴィーは、もうそんなことが気になるようになったのか。凄いなー凄いなー」


 ルシファーは、満面の笑みを向けてレヴィーを誉めた。


「ミルシェット王国は、人質となった第一王女を助け出すという名目でいつも攻めてくるんだよ。

本当の目的は、亜人族であるサターナ国の国民を拐うことなんだけど……人間と亜人族が争うことになったきっかけになった一度だけを除けば、全て失敗しているのに懲りないだよね。あの国の者たちわ」


 満面の笑みを向け、誉めるだけで答えようとしない父親に代わりに父親と同じ顔立ちに黒髪に母親と同じ青い目をした第二子であるマモンが父親と同じようにレヴィーに笑みを向けながら答えた。


「お父様は、ミルシェット王国の王女様を人質にされたのですか?王女様は何処にいらっしゃるのです?人間たちが亜人族を拐おうとする目的は?」


「レヴィー。確かに王女は、人質という名目でサターナ国に来ましたが、王女の意思で来たのですよ。

そしてその王女は私です。

もし本当に助け出しに来たとしてもあんな欲まみれの腐敗した国に戻る気などありませんけどね。

人間が亜人族を拐おうとする理由は、生まれてくる子供が二人目以降はランダムですが、一人目は確実に高い能力を持った方の親と同じ種族として生まれてくるのです。

そして人間至上主義の国なので、大っぴらには言えないんでしょうけど、こちらが本命の目的であり、人間は短命種なので長くても一〇〇年も生きられませんが、長命種の亜人族と結ばれると引っ張られるかたちで結ばれた亜人族と同じ寿命を手に入れることができるからですよ。

亜人族と同じくらいの寿命になっても容姿は亜人族のようにずっと若い姿のままとはではありませんけどね」


 金髪青目の美しい容姿の母親であるミカエルが自分がその王女であり、帰る気もないこと、人間が亜人族を拐おうとする理由を教えてくれた。


「じゃあ、亜人であるお父様は若い容姿のままだけど、お母様は人間なので今は若くお美しい容姿ですがいずれは皺くちゃになっちゃうの?私もだけど……」


 レヴィーは、兄二人は父親似なので亜人、自身は目の色は父親と同じだが母親似なので、そう質問をした。


「「「「!!」」」」


 レヴィーのその質問に男性陣は驚き、真っ青な顔をし、母親は、笑みを引っ込めをひきつった顔をした。


「レヴィー。お父様は人間たちから亜人族、魔族の王、魔王と呼ばれているけど亜人族ではないよ。二〇〇年前のミルシェット国王の子で第二王子で人間だよ。

容姿が黒髪赤目で気味悪がられていたし、魔力も人間としては、異常で亜人族より多いし、魔法以外も色んなことを兄である第一王子を上回っていたから嫉妬され、能力の劣る自分は、嫡子であること以外有利な点がないので、冤罪をかけられ王族から除籍され、国外追放たんだ。

王位に興味なかったから穴だらけの罪状に反論することなく、国外追放を受け入れて亜人族たちのいる大陸に渡って来たんだよ」


「お母様も魔法は使えないけど魔力量は多いから若いままよ。もちろんレヴィーもね」


 ルシファーは、自分が人間であり、元王子であること、ミカエルは、笑顔に戻り魔力量が多いから年をとっても自分もレヴィーも若いままだと答えてくた。

 ミルシェット王国の現国王は、お母様の弟らしい。


「父上。攻めてくるのも人間至上主義なのもミルシェット王国だけですので、敗けることはありませんが鬱陶しいので、いい加減どうにかしませんか?」


「どうにかってどうするんだい?逆に攻めて滅ぼすのかい?

魔王である私が指揮をとり、亜人族が攻めてくれば、他の人間の国からの反発があるだろうし、その国にいる亜人族たちも生活しにくくなってしまうよ」


 ベルゼお兄様の提案にお父様がそう答えた。

 ミルシェット王国が攻めてきてもかなりの手加減をして死者が出ないようにして、撤退させるように仕向けているみたいなので、死者が出てないことで力量差がわかっていないミルシェット王国側が何度も来るので、ベルゼお兄様の言う通りウザいですよね。


「お母様は、ミルシェット王国の王女だったわけですし、お父様も二〇〇年前の第二王子だったわけですよね。

他の人間の国の人々は、私たちが同じ人間であることを知っているのですか?」


「各国の王族たちは知っているはずだよ。

ミルシェット王国は、知っていても認めようとしないし、勝手に名付けてくれちゃっている魔族ってことにしたいだろうしね」


「ならミルシェット王国以外の国に話をして、ミルシェット王族をどうにかしたらいいのではないでしょうか。

人間国一の大国であるミルシェット王国に戦争を仕掛けても敗けが見えているので、迷惑している国ばかりだけど、どうにも出来ないからのって来てくれるかも知れませんよ。

腐りきっている王族や貴族を排し、まともそうな貴族家は残す感じで、お母様の子であるわけですからマモンお兄様が新たな王になられるとか。

 大っぴらには、言えないけど国民たちの中で人間至上主義を疑問を持っていて、能力のある者に叙爵するとか」


 王政を廃止して、王や貴族が政をするのではなく、国民が政をするのもありですが、いきないりそうするとうまくまわらなくなり、国が維持できなくなりそうですからね。


「ええ~。嫌だよ。私がミルシェット王国の王になったら家族と離れることになるし、レヴィーに会えなくなっちゃうじゃないか」


 確かにマモンお兄様の言う通り、マモンお兄様を国王に据えた場合、別大陸なわけですし、転移魔法が使えるとはいえ、家族だからとはいえ、転移でホイホイ会いに行くわけには行かないし、逆もしかりである。


「お母様がミルシェット王国にいらした時に王家の血を引く高位貴族で、人間至上主義に疑問を持つ者は居たりしませんでしたか?」


 ベルゼお兄様がお母様に話を振った。


「そうね……ナハルト公爵家の三男が人間至上主義に疑問を持っていて、私と話があったわね。

頭のできもよく、剣の腕も私には劣るけど強かったわよ。

三男だから公爵家を継ぐことはないからと私がサターナ国に行くことになった日にAランクだし、公爵家を出て、似たような考えの令息令嬢と他国に行き冒険者として生きると言っていたから今は、何処に居るのやらってところね。

ギルドで調べればわかるはずですけどね」


 その人を探して王になって貰えば解決しそうじゃない。

 ギルドは、独立組織だからこの国にもありますしね。

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