第61話 強いクマとスキル総力戦。
【異世界生活 98日目 8:30】
嫌な気配を感じ、戦闘態勢を整えたところで現れたのが、巨大なクマ、今まで見たことがない大きさのクマだ。
そのクマが、牛の親子をちらちらと見ながら、のそりのそりと藪から這い出してくる。
「
俺は、空気を和ませるように
「そりゃ、私が丹精込めて育てたから美味しいはずなの。でも、クマさんにはあげないよ。クマさんにあげるくらいなら私が食べたいし」
異常な大きさに、クマにスキル『鑑定』をかけてみると、
なまえ エルダーベア(オス)
レベル 23
少し強いクマ。中型のクマ。
力がとても強く、足も速い。
固い毛皮に覆われ防御力は高く並みの武器では刃も通らない。
意外と手先が器用で木を登ることもできる。
レッサーベアが進化するとエルダーベアに。さらに上位種としてグレーターベアがいる。
「エルダーベア!? いつものクマの上位種だ。格上の敵だ。
俺は
俺の『ゾーン解放』(一時的にステータス全般を上げ、時間がゆっくりに見えるようになるスキル)の劣化版? 時間はゆっくりにはならないが、俺よりさらに速く動けるようになる、素早さ特化のスキルのようだ。ちからが上昇しないので攻撃力が上がらない残念スキルでもある。
俺は
「
テイマーのスキル、『ヘイト管理』。動物から見つかりにくくなったり、注目させたりするスキルだ。欠点は、俺達からも何処にいるか分からなくなることだ。
俺、
クマに対して俺が右から、
クマも臨戦態勢、二足歩行で立ち上がり、俺達を牽制する。
立ち上がると2メートルを楽に超える巨体、デカいな。それが俺の感想だった。
俺が、『投擲』スキルで石斧を投げ、鼻面を狙うが、腕でガードされる。
それでも、腕が痛かったのかうめき声を上げるクマ。
その隙を突いて、
俺もその隙を突き、クマの右脇腹に毛並みと肋骨を避けるように下から槍をねじ込むがほとんど刺さらない。
ただ、腸までは達したようで、腹の内容物と混ざった汚い血が流れる。
「いつものクマ以上に毛皮が硬すぎるな」
俺は、自嘲するように笑いそう言い放つ。
そんな感じで
その攻撃にクマが振り向き、混乱しているところを
クマが俺に腕を振り下ろし、紙一重で避け、距離をとる。今のは危なかった。
俺が距離をとってしまったせいで、クマに一瞬、考える時間を与えてしまう。
そして、冷静に仔牛を狙い定めると、仔牛に突撃するクマ。
「ダメぇ」
どんどん、牛の親子に迫る巨大なクマ。母牛はおどろいて逃げるが、仔牛は逃げ遅れる。
俺達も追いかけるが車より速く走れるとも言われるクマにはさすがに追い付かない。
誰もが、クマの突撃に対応できなくなったところで、クマと仔牛の間にクマを遮るように人影が現れる。
「もう、MPがもったいないなぁ。神様、力をお貸し下さい。『炎の
槍の少し先から火の塊が生まれ、クマの顔に向け飛んでいく。そして、クマの顔が火に包まれる。
流石に、クマも予想外の攻撃に、顔を押さえてのたうち回る。
追いついた俺と
クマの後ろから
そして、頸動脈と脇腹からの失血で膝をつくクマ。
敗因は四つん這いになり目や首、急所を俺達が手の届く場所に晒したことと、
二足歩行で暴れ続けられたら、俺か
クマが動かなくなったところで、
「今日は焼肉パーティーだね!」
レベル20越えの強敵だったが、俺達も日頃の鍛錬と熊肉を食べてレベルが上がっている。
そして、数の優位性はこの世界ではかなり大きいようだ。
あと、スキルを使えるのも大きいな。
その辺りの優位性は魔物との戦いでは通用しなくなりそうだが。
ちなみに、仲間のレベルは現在こんな感じだ。
日頃の
なんか、
クマが完全に動かなくなったので、
牛も俺たちを信用していたのかあまり暴れなかったな。
「
まあ、川もあるし、食糧も手に入れたし、クマの肉も干し肉にしたいし、まあ、いいか。
最後に、クマのいらない部分を神様にお祈りしてマナに還すと、経験値として帰ってくる。骨と内臓しか残っていないので大した経験値にはならなかったけど。
【異世界生活 98日目 12:00】
クマに遭遇した所から少し先に進んでキャンプに良さそうな少し開けた場所でテントを張り、薪を集めて、焚き火を起こし、ここで干し肉作りとクマの油作りをすることにする。
俺と
牛は草の生えた所で優雅に食事を楽しんでいる。
干し肉の仕込みが終わったところで遅めの昼食。脂身の多い部位を串焼きにして食べる。
干し肉にできるのは赤身の部分だけ、脂の多い部分は腐る前に早く食べないといけない。
焼けるだけ焼いて、焚き火で燻して早めに食べる感じだ。
「
俺はそう言って、どんどん焼く。
「本当に? じゃあ、久しぶりに食べ放題、やっちゃおうかな?」
「
前言撤回、俺は
「もう少し入るんだけどなぁ。まあ、腹八分目っていうし、ごちそうさまでした」
そして、膨らんだお腹を満足そうに撫でる。
起伏のない幼児体形にぷっくり出たお腹のせいで更に幼児っぽさが増す。
そして、驚異の食欲。食べた肉はどこにいくのか不明すぎる。
午後は、俺が、クマの脂身の処理をする。適当な大きさに切って、土器で煮込む。
赤身の塩水への漬け込みもあるので持ってきた土器がフル回転になる。
クマの脂の煮込みを見ながら時々かき混ぜ、水を足す、の繰り返し。合間に俺も麻糸作りを手伝う。
麻糸を作る時に必要な独楽のような道具、スピンドルを
そんな感じで、スピンドルをくるくると回しながら麻糸を作っていき、糸がある程度集まったところで
俺はひたすら麻糸作り。暇つぶしの為と言いつつ、
俺はそれから、クマの脂身を焦がさないように弱火で煮ながら、たまにかき混ぜて、水を足して、合間に麻糸作り。その繰り返しだ。
脂身が箸代わりの枝で挟んで崩れるくらいの柔らかさまで煮込んだら煮込み終了。火から降ろして粗熱を取る。
麻布作りの進捗が悪いので、俺も麻糸作りに専念する。
【異世界生活 98日目 18:30】
お昼に焼いたクマ肉を焼き直して晩御飯として食べる。
食後は、
クマの脂は、油を濾す麻布が出来上がらないのでそのまま蓋をして放置、朝に温め直して布で濾す予定になった。本当は夜のうちに油を濾して夜の寒さで固めたかったんだけどな。
夜は俺が見張り役だったのだが、
この後は
ちなみにテントは3人用が1つと2人用が1つ。俺が2人用で寝て、3人用に女の子が3人寝る感じだ。親しき中にも礼儀ありってやつだな。
【異世界生活 99日目 6:00】
「おはよう、みんな。
俺が起きると、
「もう少しで、麻布3枚目できるから、できたら寝るわ。クマの油は任せるからね」
ちょっと目にクマができていて可哀想だった。
朝ごはんも、クマ肉。脂身の多い肉を食べきらないと腐るからな。
クマ肉を焼き直したものを食べる。
朝食を食べ終わるころに、
クマの脂身も煮詰め直してあるらしいので、粗熱が取れ次第、麻布で濾して冷やす。冷やして固まったら、ひっくり返して、底の部分にたまった不純物や水を取り除いて、煮詰め直して、また固める、の繰り返し。これを数日かけて5~6回やり、それで不純物を取り除いていく感じだ。
今回は川が近くにあるので、スイカを冷やす要領でクマの油を固める。これで結構時間短縮ができた。
暇な時間は魚を捕ったりして少しゆっくり過ごす。
俺が魚を捕っていると、
「
俺が声をかけると、
「ああ、今はMPが余っているから、鉱石の不純物を取り除いているのよ。『精霊使い』ってギフトが面白くてね。金属を含む鉱石に向かって、動け、動けって念じると、こんな感じで欲しい金属が分離されるの。ただ、ものすごくMP使うけどね」
「少しだけだけど、錫を含んだ鉱石とかも落ちているから、たまに抽出しているのよ。これがたくさん貯まれば青銅器が作れるようになるし、鋼を作るよりは難易度下がるしいいかなってね。
ただ、
その後も、
そんな話をしている
そんな感じで、この場に3日間滞在し、クマの油作りと干し肉作り、そして川魚も干物にしたりして少しゆっくり過ごすのだった。
次話に続く。
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