第54話 臨時拠点の充実と砂糖作り、そして小麦畑をめざす

【異世界生活 56日目 7:00】


「おはよ、りゅう君」

明日乃あすのが俺を起こしてくれる。

 そして寝起きにおはようのキスをせがまれる。

 久しぶりの明日乃あすのの抱き心地。他の女の子には悪いが、俺の一番はやっぱり明日乃あすのなんだよな。って、実感させられる。


「ん? どうしたの?」

明日乃あすのが唇を離し不思議そうに俺の顔をのぞき込む。


「大好きだよ。明日乃あすの

俺は心の底からそう思い、口にすると、明日乃あすのが嬉しそうに微笑んで、もう一度キスをする。


 そして、テントから這い出すと、みんなに挨拶する。

 最後の見張り役だったすずさんと早起きの琉生るうが起きていて、朝食を作ってくれている。真望まもも起きていて何か作業している。

 一角いずみが少し遅れて起きてきて、麗美れいみさんが最後にかなり遅れて起きてくる。

 麗美れいみさんが起きてくるころにはちょうど朝食ができている感じだ。


 朝食を食べながら今日の打ち合わせをする。

 予定通り、俺と一角いずみ真望まもが水汲みと竹採り、そして魚捕り。他の四人は砂糖作りを継続する。


「それと、流司りゅうじ! 無精ひげ! 水汲みに行ったときに髭剃りするからね」

美容にうるさい真望まもがそう言って石鹸と黒曜石のナイフを荷物に入れる。

 この世界にはまだ鏡がないので、真望まもにたまに髭を剃ってもらっている。最近、真望まもと別行動だったから、ひげも伸ばしっぱなしだったな。

 まあ、昔みたいに毛抜きで抜かれるよりはいいか。あれは本当に痛かったし、本数が本数だから拷問に近かったもんな。

 こっちに来る前に倒したクマの脂身で石鹸ができたらしく、それでひげを剃ってくれるらしい。


「クマの油の石鹸はいいわよ。気持ち、お肌がすべすべになる気がするわ」

真望まもがそう言って石鹸を褒める。


「こっちに来た時に、クマを1匹仕留めたんだが、油を濾すための麻布が無くて、もったいないけど、脂身捨てちゃったんだよな」

俺がそう言うと、真望まもがかなり残念がって、


琉生るうちゃんか一角いずみの使っている麻布の巾着袋を解体しちゃってもよかったのに。それだけの価値がクマの油にはあるわよ」

真望まもがそう言う。


「まあ、また、クマを倒せばいいってことだ」

一角いずみがそう言う。もう、完全に野生児というかハンターだな。


 そんな雑談をしながら朝食をとり、朝食後は久しぶりにみんな揃っての麗美れいみ先生の剣道教室。


 その剣道の鍛錬のおかげで、俺がレベル12になる。

 ちょっと前に、一角いずみもレベル12になったし、すずさんもここに来る前にレベル11になる儀式を受けたそうだ。

 それと、明日乃あすの一角いずみが何度か魔法で連絡を取り合ったせいで経験値を減らしてしまったそうだ。


流司りゅうじ レベル12 レンジャー(オーラ使い) 

明日乃あすの レベル11 神官(神聖魔法使い)

一角いずみ レベル11 弓使い

麗美れいみ レベル12 賢者(精霊使い・神聖魔法使い)

真望まも レベル10 戦士見習い

すず レベル11 鍛冶師(精霊使い)

琉生るう レベル10 テイマー見習い


 それと、昨日の夜から、お祈りするとMPが増えるようになった。

 信仰心が低い、俺、一角いずみ麗美れいみさん、はMPが5増えた。

 信仰心が中ぐらいの、真望まもすずさん、琉生るうはMPが10増え、信仰心が高い、明日乃あすのはMPが15増えた。

 素直な明日乃あすのはともかく、真望まもの信仰心がそこそこ高いのが意味不明だ。アホの子は神様を信じやすいってことか? すずさんは、まあ、欲しい物がいっぱいあるからだろう。


 生活魔法がMP10、初級魔法がMP20必要なので、俺の場合、4日祈らないと、敵にダメージを与えるような攻撃魔法は使えないらしい。

 そもそも、まだ、魔法は使ったことないし、使えるか分からないけどな。



【異世界生活 56日目 9:30】


 とりあえず、水汲みと、竹を採りに行く。

 ここの臨時拠点の周りに柵を作る為、多めに竹を持ってくる。3往復くらい必要かもしれない。

 それと、明日乃あすの達がこっちに来る途中で倒したオオカミの皮も洗わないといけないらしいので途中、洗剤代わりのシャボンソウを摘んで川を上る。


 サトウキビ畑の側の川を南に、上流に向かって歩き、1時間半くらい歩いたところに竹林と小さな滝がある。こっちに来た時に一角いずみが初めて川魚を捕った場所より若干下流の場所だ。

 ここまで来ると水も綺麗で、そのまま飲めそうなくらい澄んでいる。


 とりあえず、一角いずみが川魚を捕るらしいので、俺と真望まもは竹林で竹を切る作業をすることになった。


流司りゅうじ真望まもが置いてきぼりにされて、欲求不満になっていると思うから、竹林の奥でちょっと長めに休憩してもいいからな」

一角いずみが余計なことを言う。

 真望まもが「そんなことしないわよ!!」とガチで怒る。


 一角いずみのせいで、ちょっと変な雰囲気になってしまったが、竹林で竹を切る作業を始める。

 真望まもが水を持ち帰る係に決まっているので、俺と一角いずみで持ち帰れるくらいの竹を切ったところで一段落する。


 そこで、真望まもが少し赤い顔をして、

流司りゅうじが疲れたんなら、少しだけ、休憩してもいいわよ?」

真望まもがそう言って少し照れる。ツンデレか?


 まあ、ここで冷やかすと、マジで怒りだすので、はぁ、とため息を吐いて、気持ちを入れ替えると、真望まもの提案に乗ってやる。

 真望まもを抱き寄せて、抱きしめると、唇を重ねる。

 そして、真望まものモフモフの狐の尻尾を撫でてやると、気持ちよさそうに体を震わせる。


 たくさん抱き合って、キスもたくさんしてから、

真望まも、そこの竹を持って、おしりをこっちに向けて。真望まもの尻尾を思う存分触りたいからさ」

俺がそういうと、真望まもは恥ずかしそうにうつむくと、言われた通り、竹を掴みながら、おしりをこっちに向けて、モフモフの尻尾をふふりふふりと左右に振る。期待しているのが丸わかりだ。

 俺は後ろから、真望まもの手に収まる程よい大きさの双丘を揉み上げながら、もふもふの狐の尻尾を甘噛みしたり、もふもふの狐耳を甘噛みしたりしてやる。



流司りゅうじ、お胸はダメなの。お胸触りながら耳噛んじゃいやなの」


「くうん、だめ、いくっ、いっちゃうの、流司りゅうじ、そこ噛んじゃダメぇ」


「っぅぅ~、イクぅ!!」



☆☆☆☆☆☆



 俺の尻尾と耳の甘噛みテクニックに負けて、ぐったり、竹によりかかって息を荒らげている真望まも

 俺もちょっと調子に乗って、尻尾や耳を責めまくって、3回ほど真望まもをイかせたところで俺も満足する。一角いずみ真望まものエッチな声が聞こえていたんじゃないか?

 真望まものモフモフの尻尾や耳を責めるのは本当に楽しくて、夢中になってしまう。

 俺も真望まもの側で休憩して、真望まもを膝枕して、髪の毛を撫でてあげる。真望まもの尻尾がふふりふふりと嬉しそうに少し揺れる。


少し休憩した後で、 

流司りゅうじ、やりすぎ、私の尻尾触り過ぎなの」

真望まもが恨めしそうにそう言って俺を睨む。怒った顔をしているが、尻尾は嬉しそうに揺れている。このツンデレめ。

 真望まもの体調も回復したみたいだし、二人で立ち上がり、竹を持って川に戻る。

 1時間半くらい経っただろうか?

 一角いずみがまだ、楽しそうに川魚を捕っている。


一角いずみ、そろそろ帰るぞ」

俺がそう言うと、一角いずみが川から上がってくる。

 腰にはえらに荒縄を通されて並ぶ川魚がいっぱいぶら下がっていた。

 

「どうする、はらわただけでも取っておくか?」

一角いずみが俺にそう声をかける。


「そうだな、鱗とはらわたを取って、腹を開いておけば臭みも出ないだろうし、歩きながら干物になるかもしれないしな」

俺はそう言って、3人で、川魚の下処理をしてから、水を汲み、狼の毛皮を洗ってからサトウキビ畑の臨時拠点に帰る。

 それと、忘れていたが、真望まもに川の水と石鹸で髭を剃ってもらった。

 拠点に帰ると14時半になっていた。

  

 3人は急いで遅い昼食を食べ、川魚を明日乃あすの達に任せると、急いでもう1回竹林に竹を採りに行く。


 柵を作るにはもう1回分足りないし、日が暮れてしまったので柵を作る作業ができなかった。

 次の日も同じメンバーで竹を1回採りに行き、枯草を集めて荒縄も作り、午後は柵作りをして、なんとか、狼や猪くらいなら怯みそうな柵ができたので一安心だ。

 1日遅れになったが、明日は小麦畑を見に行く。


 それと、水を汲みに行ったところにある滝だが、すずさんが来る途中でかなり気に入ったようで、拠点はあの近くがいいと言い出す。

 なんか、鍛冶を始めるのにふいごを自動で動かす水車が作りたいらしいが、滝のように高低差があるとすずさんが作りたい水車が作れるそうだ。


 まあ、小麦畑から少し離れてしまいそうだが、飲み水も汲めるし、竹林も近いし、竹林の反対岸には少し背の高い木の並ぶ林もある。薪集めやツリーハウスを作るのにも悪くなさそうな林だ。砂糖作りが落ち着いたらそのあたりに拠点を作ることになりそうだ。

 砂糖や、小麦、お茶も大事だが、今一番したいのは鍛冶をできる環境づくりと製鉄だからな。

 それと、こっちに拠点ができたら引っ越しもしないといけない。

 すずさんの鍛冶の原料、砂鉄や銅鉱石もそうだが、麗美れいみさんが作っていた知識の石板? 後世の子孫たちに現代知識を残すための石板、あれの移動や保存とかも考えないとな。

あの石板たちを運び続けて移動する訳にはいかないだろうし、拠点がある程度固定になったら、保存場所? なんか、雨に濡れない、動物も悪戯しなそうな、洞窟みたいな場所を探さないとな。今は麗美れいみさんの暮らしていたツリーハウスにあるらしいが、量が増えたら重さでツリーハウスが壊れてしまうかもしれないし。



【異世界生活 58日目 9:00】


 今日も日課の麗美れいみさんの剣道教室をやり、その後、俺と、麗美れいみさん、琉生るうの3人は荷物をまとめて、小麦畑をめざす。


 小麦畑に行くには、川を少し登って川が二股に別れるところ、サトウキビ畑の方向に流れる川とは逆の川を下ると小麦畑があるらしい。

 二股に別れるところは川幅もあり、水深もあり、歩いては渡れないので、もう少し上流まで歩いてから川を渡り北に川を下る感じだ。


 そういえば、川に危険な生物がいまのところいないのは助かるな。そのうちワニとかピラニアみたいな魚も出てくるのだろうか?

 ちょっと心配になってアドバイサー神様の秘書子さんに聞いたが、この島にはピラニアやワニはいないらしい。ただし、この島にはということだ。


 そんな感じで川を徒歩で渡り、川に沿ってサトウキビ畑とは逆の川、北東に伸びる川に沿って歩き、下っていく。


 

【異世界生活 58日目 11:00】


 サトウキビ畑から2時間くらい歩いたころだろうか? 川沿いの林が途切れ、見晴らしがよくなったところで、目の前に大草原が広がり、その先に、目的のものが見える。

 一見、草原と変わらないが、雑草に紛れて小麦の穂っぽい物も見える。まさに野生の小麦という感じだ。


 そこからさらに20分くらい歩いて、小麦畑に到着。琉生るうが嬉しそうだが、複雑そうな顔もしている。


琉生るう、どうした? 期待した小麦畑だろ?」

俺は琉生るうに声をかける。


「そうだね。確かに小麦だね。でも、ちょっと早かったみたい。もう少し成長して小麦色にならないと収穫は無理かな?」

琉生るうが小麦の穂を撫でながら観察し、そう言う。

 確かに、まだ青々としていて、小麦って感じがしないもんな。


「2~3週間くらいしたらまたくればいいかな?」

琉生るうがそう言って諦める。


「じゃあ、このまま、帰るか?」

俺がそう聞くと、


「少し時間があるし、草原を探索しようよ。トマトっぽいものとかキュウリやナスっぽい野菜があるんでしょ? 見つけて持って帰ったらみんな喜ぶと思うよ」

琉生るうがそう言って気を取り直す。


「そうだな、トマトはちょっと食べたいかもしれない」

俺はそう言う。

 というか、この異世界なんでもありだな。さすが、ゼロから元の世界を真似て、いいとこどりな世界を作ったみたいで、結構無茶な物が並んでいる気がする。


 そんな感じで、小麦畑から東に2時間弱くらい探索することになった。

 おかげで、トマトやキュウリやナスが収穫できた。まあ、秘書子さんがマップにマークしてくれたのを探すだけでいいから楽に見つかったのだが。

 

 そして、もう一つ、見つけたものがあった。


流司りゅうじお兄ちゃん、牛さんだよ。牛さんがいるよ」

琉生るうが興奮して俺にそう言う。

 琉生るうの視線の先を見ると確かに牛の群れがいる。茶色で少し小柄な牛だ。

 俺が想像したイメージの牛、白地の黒ぶちではない茶色い牛だ。


「ホルスタインじゃないっぽいね。ジャージー種かな?」

琉生るうが動物の知識を教えてくれる。ホルスタインっていうのが俺のイメージした牛だよな、確か。


「飼いたいね。飼えなかったとしても、1匹欲しい。というか食べたい」

琉生るうが牛に夢中だ。そして、食べる気満々だ。


「なるべく飼う方向で考えようぜ、牛乳とか搾れるんじゃないか?」

俺は食べる方向ではなく、飼う方向に持っていこうと琉生るうを説得する。


「でも、野生の牛って、どうやったら家畜にできるのかな? 捕まえ方も全く分からないし、困ったね」

琉生るうがそう言う。

 さすがに琉生るうも牛を飼う手伝いをしたことはあるらしいが、あくまでも飼いならされた家畜。野生の牛ではない。


 そんな感じで、草の陰から牛の群れを観察することしかできなかった。


 次話に続く。

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