第24話 麻布作りと真望のこだわり(with真望)

【異世界生活 11日目 8:00】


「おはよう、明日乃あすの

「うん、おはよ、りゅう君」

明日乃あすのが嬉しそうに俺の腕に抱きつく。

 新婚生活ってこんな感じなのかな? 高校3年生で新婚生活を味わうとは予想もしなかったけど。

 そして、もう一人の俺、元の世界で元気にやっているだろうか?

 分霊転生? 俺の魂の10分の9は元の世界で暮らしている。なんか想像もつかないし、寂しい気持ちが沸くし、そして諦めもつく。俺はここで生きないとと。明日乃あすのたちと。


 そんなことを考えながらまったりするが、みんな起きてくるので、いちゃいちゃするわけにもいかず、2人でもそもそと起きてシェルター(家)から這い出す。


「おはよう、新婚さん、今日も熱々だな」

嫌味ったらしく、一角いずみが挨拶してくる。

 真望まもも起きてくるがなんか、ムスッとしている。朝が弱いのか?

 麗美れいみさんは一角いずみと一緒、俺達を冷やかし、何を考えているのか分からない感じだ。


 とりあえず、雑談しながら、朝食の準備。干し肉が残り少ないらしい。


「またバナナ生活に逆戻りかぁ」

明日乃あすのが残念そうにそう言う。


「魚捕りはちょっと、その日の分とるのがやっとって感じだ。水中眼鏡なしで潜るのは目が痛いし効率も悪いし」

一角いずみがそう言う。

 やっぱり素潜りは水中眼鏡あるとないとでは雲泥の差だよな。


「竹もあるから釣とかもいいかもしれないな。針は竹を削ってとがらせれば何とかなるだろうし、みんなで釣れば効率もあがるかも?」

俺がそう言う。


「あとは、貝とかもいいんじゃない?」

真望まもがそう言う。

 確かに岩場で貝やカニとかはサバイバルの定番だよな。


「明日は、遠出するんだろ? その時に鳥でもいたら、私が矢で捕まえるよ」

一角いずみが自信気にそう言う。


「そう言えば今日明日の予定はどうする?」

俺は今日のスケジュール確認の意味も込めてそう声をかける。


「今日は、食後、いつもの剣道の練習をしたら、川に行って水に浸けた麻の様子見る感じ? 良さそうだったらそこで加工しちゃって、キャンプで繊維を干す感じかな? あと、帰りに山菜とかキノコとか取って帰りたいな」

明日乃あすのがそう言う。


「私は、キャンプの番をしておこう。動くのは好きじゃないんだよ」

駄目姉の麗美さんがそう言う。


「私は魚捕りだな。で、明日は黒曜石を探しに行くついでに鳥を仕留めたい」

一角いずみはそう言う。


「結局、土器が乾いて焼けるようになるまで、やれることが限られるからな」

俺はそう言って、今できることを色々提案する。やはりやることは麻布作りと黒曜石でナイフやカミソリ作りかな。麻は繊維を取って糸にするまでも色々手間がかかるみたいだしな。


 雑談をしながら朝食もでき、みんなで食べながら作戦会議、麗美れいみさんの剣道教室を1時間ほどやってからそれぞれの作業に入る。

 俺と明日乃あすの真望まもは森に入り、川まで行って麻の茎の腐り具合の確認だ。ついでに水も汲んだり水浴びもしたりするみたいだ。


 ちなみに一角いずみ麗美れいみさん含めて日替わりの交代で泉に水を汲みに行く感じ、水浴びを兼ねて。明日乃あすのは高頻度で水浴びに行く感じだ。


【異世界生活 11日目 10:00】


 とりあえず、麻の繊維を取り出す作業のことも考えて石包丁や一応石斧、竹なども必要になるかもしれないので石のナタ、それと水を汲むための竹の水筒。俺が今準備できそうなものを全てまとめてかごに入れる。

 なんか、明日乃あすのの時間があるときに長い葉っぱをうまく紐にして籠を編んでくれたので運搬が大分楽になった。明日乃あすのは知識も役立つけど、結構手先が器用なので色々助かる。

 俺、明日乃あすの真望まもの3人で、護身用の木の槍を持って森に入る。とりあえず、山菜取りは後回しで麻の回収に急ぐ。キャンプから1時間くらいのところに麻の群生地と川がある。土器の粘土を取った崖のもう少し先にいったあたりかな?


「すごい、本当に麻が生えてる。亜麻かな? 比較的扱いやすそうな麻でよかったわ」

真望まもが麻の群生地を見てそう言って駆け回る。手芸好きだもんな。麻があるかないかでサバイバルで自分がやれることが大分変るから嬉しいのか?


 そしてもう少し先に行くと川があって、少し流れが淀んだところに、一角いずみが言っていたように麻の茎が大量に沈めてあった。麻を紐がわりに束にして石を置いて流れないようにした感じだ。


 俺も麻布作りはよく分からないので、神様の秘書でアドバイサーの秘書子さんに色々聞いてみる。


「麻の表面のたんぱく質の腐食は良く進んでいるようです。次はこれを干して乾燥させて、叩くことで繊維以外の不要なものを落とします」

秘書子さんがそう言う。あれ?明日乃あすのの麻糸の作り方間違えている感じ?


明日乃あすの、なんか秘書子さんの話だと、表皮は乾燥させてから叩いてはがすみたいだぞ」

俺はそう言って明日乃あすのに確認をとる。


「え? そうなんだ。お父さんのサバイバル本には皮を剥いでから干すみたいに書いたあったから。多分、お父さんの場合、布というより麻紐が作りたかったみたいだからちょっと違うのかもね」

明日乃あすのがそう言う。俺も今日、麻の外皮を剥ぐ気満々で来ていたので、予定が大分変わってしまったな。


「まあ、作り方も色々あるのかもな。とりあえず、水に浸けた麻を回収して、もう一回同じように新しい麻の茎を水に浸けておこうか」

俺はそう言う。


「そうだね。女の子も増えたし、麻布の量産とかできたらいいもんね。そういえば、女の子しか来ないね。男の子って来ないのかな?」

明日乃あすのがそう言う。

 そう言えば男は俺しかいないって言ってなかったな。そろそろバレるだろうし言うしかないか。


「その事なんだけど、秘書子さんの話だと、男はまずは俺しか転生されないらしい。神様曰く、男が二人以上いると女性を巡って喧嘩になるから、だそうだ。次の世代に代替わりする時には男も増やすらしいぞ。近親相姦するわけにはいかないしな」

俺はそう説明する。

 明日乃あすのがどういう反応するか様子を見る。


「そっか、りゅう君しか男の子いないんだ。それだと、麗美れいみさんの話も真剣に考えないといけないかもね。でも、逆を言えば、他に男の人がいて喧嘩とかして、りゅう君意外の男の人と私が、その、そういう関係にならなきゃいけないって状況になることも考えたら、りゅう君だけっていうのは幸せな事かもしれないね」

明日乃あすのがそういう。

 確かに、世紀末にいそうなモヒカン野郎とか「うえ~い」とか言いそうなパリピなヤンキーとか来たら、まさに世紀末サバイバルになってしまうもんな。そういう面では神様に感謝した方がいいのかもしれない。ただ、明日乃あすのに純愛を通せない、浮気をしないといけないのは俺にとっても気が引ける部分はある。

 俺はそんな悩みを顔に出していたのか、


「もう、浮気はダメとか言えない感じだね。できればりゅう君には私のことが一番好きでいて欲しい。他の女の子には我儘かもしれないけどね」

明日乃あすのがそう言い、真望まもも難しそうな顔をする。


「わ、私は、神様にお願いされたら、仕方なく、流司りゅうじと子作りとかするけど、べ、別に好きって訳じゃないから、そういうのは明日乃あすのに譲るわ。それに、元の世界だったら、本当は彼氏なんて選び放題だったんだから。流司りゅうじに執着することなんかないし、私と流司りゅうじは神様に言われたから仕方なく。それでいいわよね?」

真望まもが焦るように、どもるようにそう俺に言って、顔を赤くする。

 こいつ、彼氏いない歴=年齢で処女のくせして言いたい放題だな。

 まあ、ここでそこを指摘しても悪い方向にしか進まなそうだから、俺もその意見に賛成して、明日乃あすのが一番であることを約束して事なきを得る。


 とりあえず、本妻は明日乃あすので、子孫繁栄の為に他の女の子ともお付き合いするって感じで落ち着くのか? 


「まあ、サバイバル生活が落ち着かなければ子孫とか子作りとか考える段階じゃないし、後々考えよう。な? 俺達まだ、高校生なんだし」

俺はそう言ってその場をごまかす。第一、高校3年生で子持ちとか想像もできないもんな。元の世界じゃ。


「無人島じゃ高校生とか関係ないけどね。学校ないし」

真望まもがさらっとそんなツッコミをいれる。まあ、そう言えわれりゃそうだけどな。


「学校がないといえば、私たちもお祖父ちゃんやお祖母ちゃんになっちゃうわけだし、私たちの知識が子孫に伝わらないのってこの世界の損失だよね? 特に麗美さんのお医学知識とか? そういうのって文章として残しておいた方がいいよね? 石板とかかな? インクとか紙ができれば一番いいけど」

明日乃あすのがそう言う。

 まあ、秘書子さんを子孫に引き継げれば特に問題なさそうだけどな。ただ、秘書子さんがそれをずっと続けてくれる確証もない。


「なんか、麗美さん、キャンプから動くの嫌みたいだし、土器が上手く作れるようになったら粘土板とかで石板作って医学の知識とか学校で教わることとかまとめるといいかもな」

俺はそういう。麗美さんは基本引きこもりの駄目姉だ。ただ、医学以外には興味ないけど、医学の事なら必死になってくれそうな気がする。ついでに医学以外の教科書みたいなものも作ってくれたら嬉しいし。

 それに俺が秘書子さんから色々聞いて、知識として石板に残すのもいいかもしれない。


「そしたら、帰りに粘土と砂も少し持って帰ろうよ。麗美れいみさんが協力してくれるかわからないけれど、ダメだったら、私が高校くらいまでの勉強だったら書けるし、石板作るよ」

明日乃あすのがそう言う。明日乃あすのの知識量もばかにならないからな。


 俺もそれに賛成して、とりあえず、キャンプに麻を持ち帰りやすいようにまとめて、新しい麻も刈り取り水に浸ける。

 それと、時間はかかるが、地面に麻を寝かせて腐らせる方法もあるらしいのでそれも試してみる。1カ月かかるらしいが、このやり方だと川の水質が悪くなる危険性が回避できるらしい。麻を大量生産するってことになったら川や海の汚れとかも心配だもんな。


 そんな感じで、腐らせた麻の繊維をキャンプに持ち替える。帰る途中で、粘土と砂も少し回収して俺のかごに入れる。

 そして、明日乃あすのお楽しみの水浴びをして飲み水も汲んで帰る。

 結構大荷物になってきたな。麻の繊維を茎のまんま持ち帰る予定はなかったからな。


「麻の茎をキャンプで干してから山菜取りした方がいいかもね。荷物多すぎて動けなくなりそうだし」

明日乃あすのがそう言うので俺も真望まももうなずく。


 そういうことで、そのまま、キャンプに帰り、荒縄を木の間に張って麻の茎を干していく、麻の茎が長いので干すのが面倒臭いな。

 暇そうにしていた麗美れいみさんにも手伝ってもらう。そして麻の茎を干しながら、さっきの、麗美れいみさんの医学知識をはじめとして現代の知識を石板に残す話をしたところ、


「それはいいわね。私の医学知識も、今の状態ではなんの役にもたたないけど、何百年もたって子孫たちに知識があれば役立つ時が来るかもしれないものね」

そう言って、麗美れいみさんがノリノリで協力してくれることになった。

 やっぱり麗美れいみさんの医学に対する執着は予想通りだった。

 早速、石板づくりを始めてくれるそうなので麻の茎を干し終わった後、粘土と砂を麗美れいみさんに渡し、俺たちはもう一度森に入る。今度は山菜やキノコとりだ。


 気が付くとお昼を過ぎていた。

 一角いずみも帰ってきて、魚を4匹捕ってきてくれたので、みんなで分けながら、バナナも焼いて食べてお昼にする。干し肉が残り少ない。肉の確保もしたいな。



【異世界生活 11日目 15:00】


 お昼ご飯が終わり、午後は山菜などを集めにもう一度森に入る。

 一角いずみも海は水中眼鏡なしで何度も潜るのは辛いみたいで、弓矢を持って俺達についてくる。俺、明日乃あすの真望まも一角いずみの四人で探索だ。

  

「そういえば、麻ってどのくらい乾かしておけばいいんだろ?」

俺はさっき干した麻が気になって秘書子さんに聞いてみる。


「機械乾燥なら1日もあれば。天日による乾燥だと諸説あって分かりません。天候や気温、地域によって違うので一概には説明できません」

秘書子さんがそう言う。

 秘書子さんの知識はどこから来ているんだ? 幅広い知識を持っているけど、幅広過ぎて、穴も多い感じか?


 しょうがないので、明日乃あすの真望まもと相談して2週間くらい干してみることにする。土器も2週間だし、お米の天日干しが2週間~1か月と聞いたことがあるらしいからだそうだ。ただし、お米の場合はカビが生えないように完全に乾かすらしいが、麻の場合、すでに腐っているからな。どうなんだろうな?


「キャンプに帰ったら、麻の何割か、皮剥いでみてもいいかな? 繊維にしてから干すのと干してから皮剥ぐのとどっちが効率的かとかもみてみたいし」

明日乃あすのがそう言う。


「そうだな。色々試してみるといいかもしれない。あと天日干しだけでなく、たき火で燻して機械乾燥みたいに早く乾かすのもありかもしれないな」

俺がそう言う。


「というか、土器もたき火で乾燥させれば早くない?」

真望まもがさらっとそう言う。


「あ」

俺と明日乃あすのが同時に声を上げる。

 言われてみればそうだ。


「ま、まあ、急に乾燥させると、土器が割れちゃうかもしれないからさ」

俺はなんとなく自己弁護する。


「そ、そうね、分からないことはやらない方が良いかもしれないし」

明日乃あすのも自己弁護。

 本の知識に頼り過ぎるのもいけないかもしれないな。真望まもの思いつきもたまには役に立つな。一通り試作が終わったら思考錯誤もしていく必要があるか。


 そんな感じで雑談しながら食べられそうな山菜を取っていく。

 そんな中、真望まもが何かよく分からない苗を大量に集めている。


真望まもなにしているんだ? それは何だ?」

俺は気になって聞いてみる。


「レモンの苗があったから持ち帰って育てるの。料理とかにも使えるでしょ?」

真望まもがそう言う。それにしてもなぜレモン? すごく気になる。


「ほかにもなにかあるんだろ? 美容か、美容関係か?」

俺は真望まもにさらに突っ込む。


「う、うるさいわね。レモンは髪の脱色に良いのよ。黒髪に戻るのが嫌なの。脱色したいの。あと、お砂糖があればお砂糖と水と混ぜてブラジリアンワックスができるし」

真望まもが半ギレ気味にそう言う。


 ブラジリアンワックス? ああ、脱毛で流行ったあれか。

 女の子は色々大変そうなのでそれ以上聞かないことにする。


 ちなみに髪の色に関しては、後から分かったことだが、神様がサービスで脱色不要の金髪にしてくれたらしい。意味不明だが。まあ、真望まもは喜んでいたからいいか。


 とりあえず、真望まもは面倒臭い奴だなと再確認させられるのであった。

 あと、お砂糖、俺も欲しいな。


 とりあえず、一角いずみがまたキジっぽい鳥を捕まえたので夜ごはんは豪勢になりそうだ。


 そのあと、キャンプに帰り、明日乃あすのが言った通り、何割か麻の外皮を石包丁で剥いでみたり、麻を干している側にたき火を焚いて乾かしてみたりを検討した。ちなみに土器も一部を試しにたき火の周りに並べてみた。

 これで少しでも早く乾燥すればいいけど。まあ、建物が作れるようになって屋内で本格的な乾燥ができないと焼け石に水っぽいけどな。イメージ的にはストーブの上で洗濯物を乾かす感じ?

 あと、麗美さんが楽しそうに医学知識の石板づくりを始めていた。作り方は土器と一緒の感じで明日乃あすの一角いずみに聞きながら粘土をこねていた。粘土を板状にして竹串で字を書くらしい。空気をしっかり抜かないと割れることを注意しておく。

 

 とりあえず、今日は、真望まもの一言で工夫も必要だよな。と思う1日だった。


 次話に続く。

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