第17話 4人目の仲間と緊急スキルの後遺症
【異世界生活 4日目 16:00】
「とりあえず、
俺はそう言って、2~3歩踏み出したところで、
「ぐぎぃ、あ、あれ?」
俺はいきなり体中に激痛が走り、足が思う通りに動かなくなり、足を絡ませて転び、地面に突っ伏す。
「りゅう君!! ど、どうしたの!?」
「先ほどの緊急スキル『
秘書子さんが俺の状況を説明してくれる。
「さっき、クマに攻撃されたときに、『
俺は筋肉痛と手足のしびれで上手く動けなくなった体をなんとか動かし仰向けに寝そべり、
「『
「なあ、
俺は
海の方までクマの死骸を運んでもいいんだが見た感じ、50キロ以上はありそうだし、4人いれば運べるかもしれないが、女の子だけでは運ぶのは難しいだろう。ここで解体するしかないだろうな。
「
俺が首だけ
「神様が作った新しい世界、この異世界を開拓しなくちゃいけないのね。そして、元の世界には自分の分身が残っていて帰ることはできないと」
「
俺は体に自由が利かず、弱々しい言葉で言う。そして謝る。もしかしたら俺が、この世界の開拓者に選ばれて、俺の関係者だからって、巻き込まれた可能性もあるしな。
「そうだね。一方的に呼ばれて帰れないっていうのは腹ただしいけど、まあ、
「そ、それはダメです」
「別にいいでしょ?
麗美さんが俺で遊ぶために適当な理由を並べる。
「そ、それはそうだけど」
神様が子作りを期待しているという部分を否定できないようだ。
「あくまでも、
「か、体だけの関係なら、ち、ちょっとだけなら」
「というか、
俺は、
「興味ないわけないじゃない。実は、
「まあ、
結局、俺がそれでいいなら、たまに貸してもいいという結論にまとまってしまったようだ。俺の責任重大じゃないか?
「ちなみに、
元々、色素が薄く、色白で、髪の毛も目の色も天然の茶色、ものすごく美人さんだ。軽くウエーブのかかったロングの髪型は、いかにも憧れのお姉さんといった風貌。
ただし、実際は医学知識以外に全く興味を持たない、生活能力ゼロのダメ姉さんだ。化粧やファッションにも疎く、俺のお袋から無理やり強要されて化粧水やお肌のケアを始めたくらい無頓着、家庭教師を始めたころなんて、上下ジャージに安そうなランニングシューズでうちに来ていた。しかも大学にはその格好で毎日通っていたそうだ。
磨けば光るダイヤの原石なのに、無防備に道端に転がされている、自分はただの石ころだと思っている、そんな感じのダメ姉さん、それが
そして、
「ま、まあ、とりあえず、
俺はそう言って、なんとか2人が仲良くしてもらえるようお願いする。
確か、
ただ、
母親と二人、苦労しながら国立の医大に通った努力家の女性だ。そういうところには憧れていたし、好きになってしまった理由かもしれない。
「とりあえず、医学の知識がある
俺は、
「ああ、でも、この世界では元の世界の医学知識は全く役に立たないと思った方がいいわね。道具もなければ薬もない、傷を縫う針も糸もないし、麻酔もなければ、消毒するアルコールすらない。私にできるのは内科医としての口先だけのアドバイスと外科医のフリした、死ぬか生きるか博打まがいの殺人行為だけよ」
「でも、知識があればそのうち、薬とか道具とかも自作できるんじゃ?」
俺は
「薬なんて作れるわけがないじゃない。そんなこと考えるのは科学を知った気でいる素人だけよ。ペニシリン一つにしたって奇跡の産物、パンをカビさせればできるものではないし、カビが偶然に抗生物質を生み出すようになったとしても、それがペニシリンかどうかなんてわからないし、人体に悪影響がないかもわからない。抗生物質一つにしたって、それを生み出し、同定して、人体へ効果があって副作用が少ない物を選別して、本当に無毒か動物実験で確認して、やっと薬になる可能性が見えてくる。そこから成分を濃縮したり、人体への効果が最適な濃度を見つけたり、製造する際にすべて同じ濃度になるような製造方法や同定方法をみつけたり、科学、特に薬学に関しては作り方が分かればすぐに作れるって甘い世界ではないのよ」
「鉱物由来の薬だってそう。そもそも薬を作るには原料が必要で、その原料は混ざりものがあったら知っている製法がうまくいかない事なんて山ほどある。たくさんの鉱物や酸や塩基などの溶液、それらを集めてかつ、純物質で、濃度一定で、大量に用意できて器具もそろっていないと作れない、しかも時間も人手も必要。科学知識がある2~3人が集まったところで数千年の科学の歴史は再現できるものではないの。原料を作るところから、器具を作るところから、たくさんの人が必要で、たくさんの経験と歴史が必要で、原料を掘る人、純度や濃度を上げる人、濃度や分量を量ったり質を一定にしたりする人、それが原料にも器具にも大量に必要になる。科学って、長い歴史とたくさんの人の努力とその積み重ね、文明が発達した社会自体が科学であって、科学には絶対不可欠な要素なのよ。私一人の知識でどうこうなるものじゃない、それが残念だけど科学であり薬学であり、医学なのよ」
「まあ、アルコールくらいは作りたいわね。飲んでも美味しいし、消毒薬になるし、少しだったら麻酔の代わりにもなるし。でもアルコールにしたって、原料の麦やトウモロコシ、米などの農耕文化を擁立させないと作れない。発酵させるにも酵母や麹、アルコールを作る菌とその知識が必要になる。科学って失ったら、ゼロから作り直したら膨大な時間と人が必要になるものなのよ」
麗美さんが綺麗にまとめるが、この人はただ、お酒が飲みたいだけかもしれない。この人、お酒も大好きだったもんな。
「まあ、そのあたりは、神様にいっぱい祈れば、原料とか、アルコール作る酵母とか神様が作ってくれるんじゃないかな? 薬とかも少量なら神様が作ってくれるっぽい?」
「だったら、神様に一生懸命祈らないとね。アルコールを下さい。薬を下さい、ってね」
とりあえず、知識だけではどうにもならない壁があることを俺たちは知らされた。
まあ、この世界は魔法が使えたり、鑑定スキルとかおかしなものも使えたりするから、そこらへんや、秘書子さんの知識を使えば何とかなる気もするな。少なくともリアルなサバイバルではできなくても異世界サバイバルならできる。ってことはあるかもしれない。
そして話が一段落したところで、
「キャンプはクマに荒らされて結構ひどい状態だったぞ」
火は消えずに残っていたので、薪をつぎ足してくれたそうだ。あと、俺が作った塩も無事だったらしく、
「帰ったら、まずは家を作り直さないとな」
俺は寝たままそう言う。俺が今日一日動けなそうなのが口惜しい。
「それに、クマの肉も食べられるらしいし、解体して食料にするといいよ」
「そうだな。とりあえず、クマの死体を解体して、毛皮と肉を確保しよう」
俺はそう言ってみんなを鼓舞するが、スキルの後遺症で俺自身は起き上がることもできない寝たきり状態でかっこ悪い。
とりあえず、秘書子さんにクマの解体のしかたを聞きながらみんなに伝え、
「とりあえず、
なんだかんだ言って、麗美さんが一番体力あるし、医学部で急患の運び方とかも練習しているのか自信がありそうだ。第一、
「あ、クマの骨とか内臓とかを、全能神様にお返ししないと」
「そういえば、今回使った、魔法による連絡? これって、結構マナ使うみたいだから、使うタイミングは慎重に考えないとな。今回、2回使って、マナを使い果たし、連絡手段を失って、行き違いみたいなことが起きてしまった。今回は俺のミスだ。本当に申し訳ない」
俺はチャット機能への注意喚起と今回、みんなを危険な目に合わせてしまったお詫びをする。
「というか、
「なんだと言われても、
俺は素直にそう言う。
「なっ!? そ、それで、
俺の体の心配より、
「
俺は笑ってそう言う。
最近は男女平等とか色々あるけど、俺はか弱いお姫様を守る王子様になりたい古臭い考えの持ち主だからしかたない。
「なっ!?」
「りゅう君はそういう人だよ。結構、頼れる男の子だし、優しいんだよ」
「そ、それでも、私が怪我した方がマシだ!!」
そのまま、場を誤魔化すように、クマの肉を葉っぱに包んで担ぎだす。
俺も
まあ、秘書子さんの緊急スキルのおかげで命が助かったんだから仕方ないんだけどね。
このスキルは発動にマナは要らないみたいだけど使う場所やタイミングは良く考えよう。この副作用的なものは危険過ぎるもんな。
次話に続く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます