第2話 とりあえず、衣食住をなんとかしよう(with明日乃)
神様が充電切れで電源が切れたスマホの画面ように消えてしまった。
そして残された俺と
「なんか、ごめんな。もしかしたら俺のせいで巻き込んじゃったのかもしれない」
俺は
「ううん、りゅう君のせいじゃないよ」
「でも、元の世界に戻りたいだろ? 俺と、男と二人っきりなんて嫌だろうし」
俺は、聞きたくはないけど聞かなければならないことを
「元の世界に戻りたいけど、それはお母さんに会いたいだけ。お母さんのご飯が食べたいし、心配かけたくないし。それに、りゅう君がいてくれたのは逆に嬉しいくらいだよ」
「でも、さっきの神様の話だと、元の世界には、私の分身がいて、いつも通り生活している。というか私が魂の10分の1だったら私の方が分身かな? お母さんも気づかないで今まで通り幸せに暮らしているんだろうね」
「お、」
俺は、「俺が
「ふふっ、ありがと。りゅう君が一生懸命慰めたい気持ちは分かったよ。気持ちを入れ替えて、この世界で生きることも考えないとね」
そう言って
まあ、お互い、すっぽんぽんの裸なのでまじまじと見ることはできないが、なんとなく振り向いているのは分かった。
「それにしても、こんな裸じゃ何もできないな。何より、恥ずかしくて
俺は本当に困ってそう呟く。
少し沈黙が続き
「私はりゅう君に見られてもいいよ。最初は驚いちゃったけど、聖書に出てくるアダムとイブみたいで素敵じゃない?」
そう優しい声で俺にささやきかける
「え?」
俺が驚いて振り向くと、一糸まとわぬ姿で立ち上がり笑う
とても綺麗だった。
「って、何!? その耳?」
俺は一瞬、
「と、いうか、りゅう君も変な耳生えてるよ。猫さん? ううん、ライオンさんかな? ライオンさんみたいな尻尾も生えているよ」
「生えてるよね?」
「ああ、生えてる」
「
俺は好奇心からそう聞いてしまう。
「い、いいよ。やっぱり生えてるよね?」
そう言って
俺はとりあえず、二人が丸裸なことを無視して立ち上がり、
「り、りゅう君、さ、触り過ぎだよ、く、くすぐったいよ」
とろんとした目で恥ずかしそうに抗議する
そしてお互い目が合い、確認し合うように見つめ合うと、無意識に顔が近づき、唇が重なる。
☆☆☆☆☆
「とりあえず、何か隠せるものを探すか」
少し休憩してから、俺は照れながら、裸のままじゃ不味いだろうからときょろきょろと周りを探す。ありがたいことに、まだ陽は登り始めたばかりのようで周りは明るい。
とりあえず、耳や尻尾の事は忘れよう。神様も声かけても返事ないし。次に会った時に聞けばいい。
「ふふっ、本当にアダムとイブみたい。禁断の実を食べて恥ずかしくなっちゃったみたいに」
「まあ、神様の話じゃ、神様の力が溜まったら俺たちの知り合いを降臨させるとか言っていたし。その時に二人とも裸じゃまずいだろ?」
俺はそう言って、とりあえず、少し先の木の下に落ちている大きな葉っぱ、面積も広いうえに腰に二巻き巻いてもまだ余るくらいの葉っぱを何枚も拾い、
なんかお洒落な南国ファッションみたいな感じになった。
俺も
そして、
「ふふっ、少し残念そうな顔しているよ、りゅう君」
少し意地悪そうに、そして、何か嬉しそうにそう言う、
「でも、なんかそういう仕草、意外かな? 元の世界だったら私の裸なんか興味なさそうな顔すると思ったのに」
「そんなことない。元の世界でも見たいし、見たかった。でも見ちゃいけないというか、見ないのが当たり前というか、あー、なんて言ったらいいか、とにかく、今も昔も見たい気持ちは変わらない」
俺は言い訳するように、そして本心を伝えるように試行錯誤して答える。
「また、見たくなったら見せてあげるからね」
冗談か本気か分からない笑顔で、少し前かがみの可愛い仕草で覗き込むように俺の顔を見て、そう言う
「ふふっ、なんかこっちの世界にきて、りゅう君変わった? ちょっといいかもね」
「???」
変わったのは
「と、とりあえず、服はなんとかなったな。次は家か食料、衣食住は最低限なんとかしないとな。あと飲み水の確保も必要か」
俺は照れを隠すようにそう言い、もう一度、葉っぱの落ちていた森の方に進む。
「あれ、ヤシの実じゃない? ヤシの実の中に飲める水が入っているかもしれないよ」
そう言う
「そうなのか?」
俺が知らない知識に
そして振り向きながら
艶のある黒髪のストレート。背中まで伸びた髪が本当に美しい。学校でもみんなが気にする美少女だ。しかも頭も良くて学校のアイドル。ただし、運動音痴でインドア派なので学校のアイドル手前っていった感じか? 人付き合いも少し苦手みたいだしな。でもそんな
ん? って感じで首をかしげる
「うん、お父さんの本に書いてあった。最近のお父さんの本、そう言う内容ばっかりだったから」
「そう言えば、
俺は思い出すようにそう言う。
「うん、まあ、そうなんだけど、最近は、恋愛小説が書けなくなった、とかって、執筆を諦めちゃって、無人島を買って、ナイフ1本持って、一人で暮らしているらしいわ。そして、たまに家に帰るとその体験記を書いているみたいだけど、売れてないみたいね」
「うちの親父もそうだったけど、
俺が幼少期の記憶を思い出しそう言う。
「そう言えば、子供のころはりゅう君の家族と一緒にキャンプとかよく行ったもんね。お母さん達は一度っきりで行かなくなったけど」
そう言えば
子どものころの話だが、キャンプに行くときは大抵、俺と親父、
「まあ、うちのお父さんは、恋愛小説が書けなくなったころから急に、俺には野生の獣の心が足りない!! とか言い出してナイフ1本持って山に籠ったりするようになっちゃったから、誰もついていけなくなったけど」
「大丈夫なのか? その家計の事情とか?」
俺は
「ああ、それは大丈夫。お父さんも昔は超売れっ子の小説家だったし、映画とかアニメの利権とか著作権とか色々あって無人島1個買ったうえで、私とお母さんが暮らしていけるくらいの貯蓄や収入はあったし、お母さんも仕事しているし」
「そういえば、
俺はお袋の話を思い出し聞いてみる。
「そそ、女性下着の会社の社長さんなんだよね、うちのお母さん。だから、お父さんが遊んでいても困らないと言えば困らないかも?」
そして
「そういえば、
俺は
「本読むのは好きだね。一応、文芸部だし。地味で活動してるのか分からないような部活だけど」
「文芸部? そう言えばそうだったな。ということは、知識の方は期待していいのか? 俺は逆に体しか動かせないから、知的なアドバイスは頼むぞ」
俺はそう言って
「りゅう君はバスケット部、バリバリの運動部だったもんね。責任重大だね。恋愛小説とか純文学しか読まないんんだけど、まあ、最近のお父さんの著書のおかげでよく分からないサバイバル知識はあるかもしれないね」
「まあ、俺のバスケは趣味みたいなもんだけどな。うちの学校、大会で勝ち進めるような強豪校じゃないし。
俺の部活は遊びだ。バスケは暇な時に3on3で仲間と戯れるぐらいが一番楽しいんだよ。
「うーん、私も趣味? というか読むの専門かな? それに、元の世界に戻れないなら小説家になりたかったとしても、なるのも無理だろうし」
俺は、重くなってしまった空気を取り払うように、とりあえず、ヤシの木をいくつか見て回り、斜めに傾いた、比較的背の低いヤシの木に狙いをつけて木に登る。
「りゅう君、気を付けてね」
ヤシの木が傾いているおかげで木登りというか木渡りといった感じで上をたどるだけで何とかヤシの実のなるところまでたどり着く。ヤシの木に跨ってひょこひょこと進んでいく。まあ、ちょっとカッコ悪いけど、木登りで滑り落ちて怪我したらそれどころじゃないし。
そして、ヤシの実を掴み、取ろうとするがうまく取れない。初めての事だし、引っ張ったり揺らしたり、回したり。回しているとなんかいい感じに動き出したので、さらに回すとなんとかとることができた。結構時間かかっちゃったな。
とりあえず、
「すごい、すごい。りゅう君、すごいよ」
ただ、問題は、どうやってヤシの実を割るかだな。
「リュウ君、あっちにはバナナみたいな木もあるよ」
とりあえず、ヤシの実を二つずつ持って、バナナの木にも行ってみる。
バナナの木は背が低く、背伸びすれば届く高さだった。
手に持ったヤシの実を一度おいてバナナに手をのばす。
ただ、バナナもヤシの実同様、取れない。取ったことが無いし、道具がないからだ。
とりあえず、無理やり引っ張ったり左右に揺すったりして何本かもぎ取る。房ごと取りたかったのだが思いのほか茎が硬く、引っ張っても切れない。道具が必要だな。
「うーん、ナイフでもあれば、だいぶ、サバイバル生活も楽になるんだろうけどな」
俺はバナナの収穫に苦戦して愚痴を漏らす。
「そうだねえ」
「で、このバナナ食べられるのか? 青いし、硬いぞ?」
なんとかもぎ取ったバナナを確認したが、熟していないのか青く、もぐのを失敗して途中で折れてしまったバナナの中を見ても固そうで、あまり美味しそうではない。
「ああ、日本で食べていたバナナと品種とか違うのかも? 焼いたり茹でたりして食べる国もあるらしいから焼いてみる?」
確かに普段食べるバナナより小さいし皮が硬いし、生で食べられる気がしないな。
「とりあえず、さっきのところに戻ろう」
俺はそう言って、バナナとヤシの実2個を持って歩き出す。
「りゅう君大丈夫? 少し持つよ?」
そう言って手をのばしてくる
とりあえず、飲み水と今日の食事は確保できたかな? 食べられるか分からないけれど。
次話に続く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます