第30話  水神の島の神官

 アウグステは、一度一行のもとへ戻った。


「水竜への挨拶はどうだった?」


 アルフォンソが、聞いて来た。

 アウグステは、美しい顔を歪めて言った。


「自分が、神だそうだ」


「はぁ!?」


 ラルカが笑った。


《人族に奉られたんだね。最早、此処の水竜は、ロイルの眷属にあらずだよ》


『会話にならないんだ。あまり行きたくないが、湖に小島がある。そこの神官と話せと言われたよ』


《ふ~~ん。このまま行こう》


 ラルカは、一行を浮かせたまま、小島まで移動した。

 湖の中心部の小島にやって来た。


 上空から、一行がやって来たので、竜人を祀っているであろう神殿の神官達は、驚いて外に出て来ていた。


「何処からおいでなされたのだ!? 旅人殿」


「言葉は、共通語が通じるのだな。あなたが神館長殿か?」


 アウグステは、白髪で長髪の紫色の服をしていたの前に着地した。


「竜神より、話は来ていている。何用かな!?」


「我らは、大山脈の向こうの地から来たんだ。私の名は、アウグステ・ロイルだ。

 こちらはアルフォンソ・ライナスとアストリッド・カーンだ。

 此処に大昔、南の地からの移住者たちはいなかったか!?」


「我らの知る史実にそんなことは無かったはずだ」


 アウグステの言葉に、神官長は話した。


「そういえば、山の麓に我らの神を信じぬ一族がいましたな」


「その者らは何処だ!?」


「湖西の方の山のほうですな。山間部になります。古くから、贄を一人も出そうとしない一族です。そうです、沈黙村といいます。」


「沈黙村? 何か意味深だな」


 アウグステが独り言を言うと、

 神官長が、笑いながら言った。


「三人もご一緒にいられるのでしたら、一晩ここで泊って行かれませんか!?」


 アウグステは、きたと思った。


 古い記録に残っている。

 竜神の島で、数日滞在した男たちの末路が……

 酒をふるまわれ、女をあてがわれ……水竜のおやつになりかけたのだ。

 運良く、ロイルの魔法使い見習いだった、男は難を逃れた。

 テルヌの竜神の島の風習のことは【北方見聞録】に記されているのだった。








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