第16話  ディナーレで……

 ラルカの力で、ムンノ街の神殿に入り込んで勝手に魔法陣を使って、ディナーレまで行った。

 大国の首都、ディナーレは大きな都市だった。

 都市の中心にかつてあった、王城跡地に中央神殿が建てられていた。

 元は古王国、ドーリアの王城でもあった。


 アウグステには、中央神殿から大きな光の波動を感じていた。

 この大陸の平和と安寧を願って作られた、魔法剣ダイナスの力をアウグステは感じていたのだ。


《古い力と新しい力が、入り混じってるね。迷子にならないでよ》


 と、ラルカが何故か、アウグステに向かって言った。


『私!?なんで!?』


《君が一番、何かに引っ張られやすい気質なんだよ。

 黒髪のお嬢はフニャフニャだし、プラチナの男女は現実主義者だもん》


『私だって、現実主義者だ!!』


 後ろを見れば、アストリッドとアルフォンが笑っていた。


「何だ!?」


「神獣君といると、楽しそうねだわ。ね、アル!?」


 頷くアルフォンソ。


「こいつの言ってることは、古代レトア語だぞ!! 理解出来てるのか!? お前らの悪口だって言ってるんだぞ!!」


「確かに。アストリッドのことはフニャフニャと言ってたし、ワタシの事は男女とも言っていた」


「だろ!?」


 アウグステは真剣な面持ちで、アルフォンソと向かい合った。

 途端、笑みがこぼれたのはアルフォンソの方である。


「だが、事実だ。ワタシは、胸も平らなら肩幅も広い。自分でも性別が分からくなる時があるよ」


「~~~~」


「あっ!! 二人でずる~~い!! あたくしも混ぜてよ~~」



 ここはディナーレ、元はヴィスティン王国の王都だった場所。

 もっと古くは、建国から三千年以上が経っていた古王国のドーリアの王都、アスタナシヤのあった場所である。


 昔はそこに、ディハルドを祀る神殿があった。今はロイルの神殿がある。

 神殿には、ご神体として大地の精霊の名を冠したダイナスが奉納されていた。


 三人がディナーレに着いたのは、夕暮れ時だった。

 辺りが、アスタナシヤの西の海辺から漂ってきた霧に覆われてきた。

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