第14話  イメージチェンジ

「なんで、髪を切るのよ!!」


「なら、帰れ!!」


 銀の森を西に出て、ビルラード王国の西の街、ムンノの宿屋で、アウグステはアルフォンソを休ませた。

 大分無理をしていたらしく、疲れ切っていた。

 代わりに、アストリッドはピンピンしている。


 それが、アウグステを苛立たせた。


「お前が、我儘を言ったんだろ!! 私の後を付けるなどアルといえど、無理だぞ」


「アウグステがあたくしたちに黙って、事を進めようとするのが悪いんじゃない!! 神の眷属の神獣に導かれているのでしょ?」


 アウグステはギョッとした。

 部屋には結界が張ってあったはずだ。

 時々、アストリッドには驚かされる。

 魔法は苦手だと言い張るのに、起床時間ピッタリに現れたり、秘密にしていることを言い当てられたりしている。


「私の部屋を盗み聞きしてたな!?」


「愛ゆえだわ!! わかってよ!!」


「だから、私にはそういう趣味はないと言ってるだろ」


「知ってるわ。でも恋愛は自由よね」


 アストリッドは片目を瞑った。

 アウグステは大きく息をついた。

 何が何でも、ついて来る気だ。

 ここで、アストリッドを撒くのは簡単だ。

 だが、そうなるとアストリッドはアルフォンソを巻き込むだろう。

 アルフォンソは、優秀な魔法使い見習いだが、まだ半人前だ。

 アストリッドは、当たり前のようにアルフォンソを利用するが、それはアルフォンソがアストリッドのことを本当の妹のように思っているからだ。


 ついて来るなら、それなりの準備をして来いと、アウグステは思った。

 制服のままで来るとは。


 アルフォンソはまだ、男装をしていたが、アストリッドはヒラヒラのスカートで飛んで来たのだ。

(マジで学び舎に通報されるぞ)


 ……で、アルフォンソが目覚めたるのを待って、陸路を地道に行くことになったわけだ。


 アウグステは、目立つ銀髪を薄い茶色に染めた。

 染める時に、アストリッドがグチャグチャ言ってきたが、無視をした。

 次はアストリッドの番である。


 アストリッドは、黒い綺麗な巻き毛をしていたのだが、あまりにもお嬢様タイプなので、少し髪を切って編み込みの髪形にして、雰囲気を変えることに成功した。





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