episode.1 白い悪夢!?ホワイトアウト


 「Oh my god……」


 白。しろ。SHIRO。

 どこまでも白い視界に、思わず母国語ではない言語が出る。

 田んぼに囲まれた一本道。通勤ラッシュの朝、大通りは混雑するため、通勤にはいつもこの人通りの少ない道を選んで走っている。

 が、この日はその選択を後悔した。


 え? 道、どこ?

 てか、ここどこ?


 見えない。そこに道があるはずなのに。

 視界に入る色は一色。オンリー白。この道に入った瞬間は見えていた、道路の境目も見えない。当然、対向車も見えない。


 申し遅れました。いきなり生命の危機を迎えていますが、わたしはぼうゆきぐにのドライバー。新社会人3年目(=ドライバー歴)。仕事は慣れてきたけど、どうしても慣れないのがこの雪道運転。容姿はそうね、ガッ〇―あたりでイメージしておいて。


「これがいわゆるホワイトアウト!」


 恐怖をやわらげるため、元気に宣言してみる。当然やわらがない。だって、これで亡くなった人だっているんだもの。


 家出るとき、天気よかったのになあ。


 いや、今だってそこまで激しく降っているわけではないのだ。田んぼに積もったパウダリーな雪が風で巻き上げられ、スノードームの密度100%バージョンみたいになっているだけだ。

 

 わたしはかろうじて見える、車のわだちらしき凹凸を頼りに、進んでるんだか進んでないんだか分からないスピードで進んで行く。

 

 ――雪国は天候が一瞬にして変わる。

 

 ばっちゃんが昔からそう言ってたっけ。

 

 そのとき、わたしは驚愕の事実に気がついてしまう。


 ―――


 この恐怖が、わかるだろうか。

 白×白は白。見えるわけがない。背後からわたしよりも速いスピードで車が来たら?前方から来た対向車が少しでも車線をはみ出していたら?


 推しが白い車に乗っているという理由だけで白い車を選んだ自分を心底恨む。


 もうこうなったらハザードをつけて止まるしかない。


 震える手でハザードに手を伸ばした、その瞬間。


 サァ――っと、ふいに視界が晴れた。

風が、少し弱まったのだ。


 いまだあ!!


 この機を逃してはならない。わたしはアクセルをめいいっぱい踏み込む。(といっても雪道だから大したスピードじゃない)


「ふぅー」


 どうにか田んぼの一本道を抜け、深呼吸。

 ああ、怖かった。


 でも、きっとこれはまだいい方。吹雪の時のホワイトアウトは、こんなものではない。

 まだまだ冬は、始まったばかりだ。





【ゆきぐに豆知識】

 ~車に積んでおくべきアイテムベスト3~

①スノーブラシ……雪を払う”ブラシ”と氷を削る”スクレーパー”がついている。これで屋根に乗った大量の雪や、窓にべったり張り付いた氷を落とす。これは積んでおくべきというよりも必須。屋根の雪はきちんと落とさないとフロントガラスにズズーッと落ちてくる。たまに雪を大量に乗せて走ってる猛者がいる。

②スコップ……除雪に欠かせない。あと走行中にスタックしたとき脱出に必要。

③水(食料)……渋滞に巻き込まれたり、埋まったりして長時間車から出られなくなる可能性があるため。




 




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