New 並木 俊介!
大門から綾に連絡が入った。
「綾さん、お待たせいたしました。『New 並木 俊介! 企画書』が出来上がりました。見ていただきたいのですが、御都合いかがでしょうか。」
「ありがとうございます。先ずは私だけで見させていただきたいと思います。すぐにでもお伺いいたしますが、いかがでしょうか。」
「綾さん、大嶋も同席したいのです。本日19時にそちらに伺ってもよろしいですか。」
「ありがたいです。ではお待ちしておりますのでお近くまでいらっしゃいましたらお電話ください。」
綾は打ち合わせをブティックRinでやろうと思い、すぐに向かった。
「マークいる? 」
「綾さ~ん。今日は何かしら?」
「マーク悪いけど19時からこの場所貸してくれるかしら。ここで打ち合わせをしたいのよ。」
「全然OKよ。俊介さんの件かしら? 」
「そうなの。出版社との打ち合わせよ。その内容によってはマークにもいい話になるわ。」
「もしかして着物?」
「当たり。サンプルは出来そう?」
「綾さんはやはり持っているわね。さっき届いたのよ。まだ2着だけどね。」
「ナイス! 流石マーク、やるじゃない。じぁあスタンバイだけしておいてね。」
19時に大門から電話が入った。
「綾さん今近くにおります。どちらにお伺いすればいいですか?」
「直ぐに参りますので、お待ちください。」
綾は外まで迎えに行った。
大門をブティックRinの2階に案内した。
「素敵なところですね。そしてこのお店も素晴らしい。」
「ありがとうございます。ファッション誌の方は数名来ていただいたことはありますが、VIPオンリーにしておりますので一般の方はご遠慮願っています。でもこれからはいらしてくださいね。」
「ありがとうございます。あっ、大嶋は30分遅れて参ります。」
「わかりました。大嶋君は一度来たことがあるので迷わず来れるはずです。」
「では、早速ですが企画書をご覧ください。ご説明させていただきます。」
「企画内容は大きく5つに分かれています。
1. 西伊豆を紹介するページを並木さんのスケッチと素敵な文章でページを作ります。そこに何気に並木さんの写真を入れます。でもこの時はまだ顔は出しません。誰だろう・・・と思わせます。
2. 並木さんの短編小説を連載します。
3. 並木さんのインタビュー記事を作ります。
4. タイアップ広告を出します。
5. 短編小説を文庫本で発売します。
今この内容で掲載号の調整等をしています。」
「大門さんありがとうございます。私の想定以上です。4番目のタイアップ広告は何の商品ですか?」
「ここが大嶋の出番ですので、来ましたら説明させます。」
「僕の話ですかね?」
大嶋の明るい声がした。
「いいところに来た。出番だぞ。」
「綾さん遅れてすみません、早速ご説明しますね。うちの会社で今度新しいipadのような日本製の品を出します。この商品の広告塔を並木さんにやってもらえたらと思っています。」
「着物、作家、スケッチがポイントかしら。」
「そのとおりです。製品は木を使っていてぬくもりを感じられるものにしています。いかがでしょうか。」
「大島君、よくわかりました。大門さん、そのタイアップ広告あと2ページ追加できますか?」
「えっ? 」
「このショップのブランド『凛』が広告費を出します。実は、彼の着物をプロデュースしようと思っています。勿論『凛』のトップキャラクターは、俳優のKAZUKIですが、俊介さんを着物部門で使いたいとおもっています。背格好が着物向きですし、着慣れていてとても雰囲気があります・・・。今企画している着物をちょっとご紹介しますね。マーク!」
「は~い綾さん。大嶋さんお久しぶり。そして大門さんですね。よろしくお願いします。」
「大門さん、マークはこのブティックの社長です。」
大門はマークの存在感に驚いている。いつも一瞬にしてマークは相手を牛耳る。
「マーク、着物見れる?」
「MOTOKI出てきて。」
MOTOKIが着物を着て出て来た。グレーの細い縦ストライプの着物に、白に近いグレーに黒で凛の文字がデザインされた帯だった。
「私も今初めて見ました。皆さんいかがですか?」
「これなら俺も着てみたい。」
大門が着物を触りながら言った。
「これは浴衣ではないよね。夏物の着物になるのですか?」
大嶋も素材感を確認して聞いた。
「そうです。イメージとしては、浴衣みたいに気楽に着られる着物です。5種類くらい用意する予定です。」
マークは説明した。
「大嶋君、商品と合いそう? 」
「バッチリだと思います。」
「ではタイアップ広告では『凛』の着物もお願いします。それでも広告の中心はあくまでも大嶋君の新商品です。それでラフ作ってくれますか。撮影日程も。」
大門はじっと綾を見た。綾の手腕に驚いている。(大抵女性は迷ったりするけど、この人にそれはない。更に、一歩引くことも知っている。このフワッとした見た目とは全く違う女性だ。初めてだこんな女性・・・惚れる。)
「綾さん、わかりました。直ぐに仕事に移ります。着物の時期を考えると時間ありませんね。5つの企画も時期を明確にして提案します。」
「皆さんいろいろありがとうございます。後は俊介さんの小説次第ですね。明日彼に会って状況を確認してきます。帰り次第ご連絡させていただきます。」
「よかったらお二人この後Transformerにどうぞ。」
「大門さん、行きましょう。なかなか行けないBarですよ。」
大嶋は大門をTransformerに連れて言った。
綾はMOTOKIに聞いた。
「MOTOKI君ありがとうね。着物着てみてどうかしら。」
「普段着慣れていないのでちょっと自信なかったのですが、ほんの少し伸縮性がある生地なので着崩れないのが良いと思いました。ベタベタ感もないです。それに軽いです。あとは着慣れている方の御意見を聞いたらいかがでしょうか。」
「MOTOKI君ありがとう。そのとおりね。マーク、明日この着物貸してくれる? 西伊豆に持っていくわ。」
「OKよ。用意するわ。」
綾はマークとMOTOKIにお礼を言ってTransformerに向かった。
「あら、2人は?」
「一杯飲んでお帰りになりましたよ。」
「あらそう。御馳走しておいてくれた?」
「はい。」
「ありがとう。あとね、お願いがあるの。明日西伊豆まで車出してくれる?」
「いいですよ。何時出発ですか?」
「9時30分出発でもいい?」
「わかりました。明日は泊りですか?」
「フフフ、巧、泊まりたいんでしょ?」
「明日、ここの予約も入っていないですし・・・」
「一泊しましょうか。帰りは3人になるだろうから。」
「わかりました。」
「じゃあ、今日はもう部屋に戻ろうかな?」
「綾さん、5分待ってください。」
店の戸締りをしているとき、巧の携帯が鳴った。
「はい・・・えっ? わかりました。綾さんに替わります。・・・綾さん、『静香』のマネージャーの桜井さんです。俊介さんがまだ帰っていないとのことです。」
綾は時計を見た。22時を過ぎていた。
「桜井さん、こんばんは。俊介さんが帰っていないって? ・・・今日はどこかに出かかけた? ・・・最近遅かったことは? ・・・わかりました。明日の朝までには帰ると思いますから、心配しなくていいわ。それと明日、私はそちらに伺いますのでよろしく。あっ二人です。お願いします。」
綾は電話を切って携帯を巧に返した。
「俊介さんどうしたのでしょう・・・」
「フフフ、心配ないわよ。」
「えっ?」
「男が帰らないのはどういうとき?」
「あー」
「はい。そういうこと。フフフ、良かった。ほら巧、行くわよ。」
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