第12話 ギャルな聖剣!?❤️

「今回の戦闘バトルわれが一番活躍したぞ! さあ、褒めてくれ! いや・・・・・・褒めてください! お願いします!」


 とC級 迷宮ダンジョンでの3度目の戦闘バトルが終わった直後、アレーシャ・シャーベ軍曹ぐんそうは俺のところへやって来て、美しい碧眼へきがんをうるうる潤ませながらそう懇願こんがんしてきた。


 それで、俺は仕方なくこう言ったのだった。


「アレーシャ、よく頑張ったね! 今回も戦ってる姿、とっても美しかったよ!」


「うれしいっ! じゃなくて・・・・・・うれピイです! ゴロゴロニャンニャン!」


 そう言って俺の上官、アレーシャ・シャーベ軍曹は仔猫のように頭を擦り寄せてくる。


 その度に甘くてちょっと大人な(エッチな?)感じのいい匂いがして、さらには濃紺の軍服からはみ出したアレーシャ・シャーベ軍曹のスライムにゅうがブルンブルンと揺れまくるので、俺が思わずそれを凝視ぎょうししてしまっていると、ユアール・プライツが大きな声でこんなことを言ってくる。


「アレーシャ・シャーベ軍曹! ボクの兄さんにあんまり甘えないでくださいよ! そんなにニャンニャン言ってお胸ブルブル揺らしたらおっぱい星人の兄さんが興奮しちゃうじゃないですか!」


 その言葉に俺の上官はすぐに反応してこう言った。


「こんな我の邪魔なだけの胸に興味を持ってくれるのか? うれしい! ・・・・・・じゃなくて、アレーシャ、うれピイですっ! うれピすぎてなんか、アレーシャ、胸が熱くなってきました! もうこの胸がもげちゃうくらい乱暴に扱ってほしいです!」


 これには俺ばかりでなく、ユアール・プライツも(ついでにABCも)ドン引きだった。


 といった感じで、アーレシャ・シャーベ軍曹ぐんそうは俺が想像していた以上のド変態だったのだが、信じられないことに剣士としてはとても優秀だった。


 光属性の剣士である彼女は、まさに光のような速さで敵を次々とっていくのである。


 あまりに早く相手を片付けてしまうので、第142番隊の俺たちが剣を振るうチャンスがほとんどないほどだった。


 そんな、これでは実戦の訓練にならないんじゃないかというほどの過保護さでアレーシャ・シャーベ軍曹にサポートされながら(彼女は手厚くサポートしている気はさらさらなくてただただ俺に褒められたい一心だったのかもしれないが)あっという間に俺たちはそのC級 迷宮ダンジョンの最深部である第6層にたどり着いてしまった。


 そして、その第6層で俺は生涯の相棒とでもいうべき存在に出会うことになるわけである。



 


 ユアール・プライツが第6層で見つけたその剣は柄頭ポンメルに緑色の宝石が埋め込まれており、さらにガードの部分に施された竜の装飾も見事で、何より刀身ブレードがとても美しかった。


 だが、ユアール・プライツがその剣の握りを両手で掴むと、


「ごめーん! なんか違うみたーいっ! ・・・・・・そっちのお兄さんも試しにギューってしてくれるぅ?」


 と、いかにも何か由緒ゆいしょがありそうなその見た目とは全く似つかわしくないひどく軽い感じの若い女の声で言うのだった。


「剣のくせにボクの兄さんに馴れ馴れしくするな!」


 ユアール・ブライツが大声を出すと、


「なにー? もしかして2人は付き合ってるんですかぁ? 」


 とその剣はズケズケと訊いてくる。


「つッ、付き合っているわけないだろう! 剣のくせに生意気なことを言うな!」


「なにそれー? なんか逆に怪しいんですけど! ・・・・・・でもでも、付き合ってないんだったら、ウチのここギューってしてもらってもよくない? ・・・・・・いいよねぇ? お兄さん! てか、ギューってしたいよね?」


 なんかちょっと意味深に(エッチに?)誘ってくるその声に俺が少し警戒していると、


「その前にわれが試しに握ってやろう!」


 と、アレーシャ・シャーベ軍曹ぐんそうが名乗り出てくれた。


「いいですよ~っ! ぜひぜひギューってしてくださーい!」


「では、いくぞ!」


 そう言って、アレーシャ・シャーべ軍曹がその剣の握りを握ると、


「ああっ! すごいっ! なんか同性にギュってされてトキめくの久しぶりかも! ・・・・・・でも、ごめーん! なんかちょっと違うみたーい!」


 と、その剣は全く緊張感のない口振りで言うのだった。


「何が違うんだ? 我はなかなかしっくりきているんだがな」


「ほんとにぃ? そんなこと言われたら・・・・・・でもでも、やっぱりなんか違うんだよね! ごめんなさい! ・・・・・・じゃあ、最後にそっちのお兄さん、ギューしてくれますぅ?」


 そう言われて、俺はアレーシャ・シャーベ軍曹からその剣を受け取り、握りの部分を言われた通りに強く掴んでみた。


 すると、その剣はさっきまでよりもさらに大きな声でこう言って騒ぎ始めたのである。


「あっ! ヤッバ! これ、きたかも! これ、きたかも、絶対っ! お兄さん・・・・・・もしかしてみつ持ちじゃないですか? 絶対、この感じ、みつ持ちだよね! なんかめちゃドキドキするんですけどっ! みつ持ちのお兄さん! ウチのこともらってくれる? もらってくれるよね?」


 すると、ここでユアール・プライツが俺にこんなことを言ってくる。


「兄さん! やっぱり変ですよ! この剣! ここに捨てて行きましょう! きっと呪われた魔剣かなんかですよ、きっと!」


 そして、さらにアレーシャ・シャーベ軍曹までこんなことを言ってきた。


「そうだな。こんなお喋りな剣は見たことがない。本当にたちの悪い魔剣かもしれんな」


 すると、その剣はほとんど泣き声のような声でこんなこと言ったのである。


「ひどいっ! ウチ、魔剣じゃないし、聖剣だし! お兄さん! みつ持ちのお兄さんだから打ち明けるけど、ウチ、実は・・・・・・この剣の中に閉じ込められてるの! もう1年もずっとこの剣の中に閉じ込められてるんだよ、ひどくない? 1年前までカリスマJKモデルだったのに、いきなりこんな異世界に転移しちゃって、着いたその日にうっかりこの剣に触れちゃったら中に閉じ込められちゃって! ウチ、超かわいそうじゃない?」


 やっぱり魔剣じゃねぇか!


 と俺がツッコミを入れる前に、ユアール・プライツがこう言った。


「完全に魔剣じゃないか! 兄さん、もう構わないで先に行きましょう! そんなの早く捨てて! いつまでも持ってたら兄さんまでその剣に閉じ込められちゃいますよ!」


「待ってよぅ! お兄さん! ウチのことここから出してくれたらマジで何でもしてあげるから! お兄さんさえよかったら、付き合ってあげてもいいよ! マジで! マジでお兄さんしか頼れる人がいないんだって! お願い! 助けて! ・・・・・・ああっ、もう! わかった! 全部正直に言うから! 1年前までカリスマJKモデルだったっていうのは嘘! ここに転移するちょっと前にJK卒業してカリスマギャルモデルやってました! でもでも、その日の撮影、現役の時着てた超ミニの制服でしてたから、今もその格好してるの! まだ卒業して1年しか経ってないからまだ現役と変わんないし、それにウチ、すごい美巨乳だし、実際、うーピリと付き合いたいって男は山ほどいるんだからね! こっから出してくれたらお兄さんと付き合ったげるから! 有名人と付き合えるんだよ! ・・・・・・・って言っても、お兄さん現地こっちの人だから価値わかんないか! ・・・・・・ああっ! わかった! この剣、この剣、みつ持ちの人のための剣で、この世界に数本しかないんだよ! そんなのここに置いていっていいの? 後で絶対後悔するよ! だから、ウチを、この剣をお兄さんと一緒に連れてって! ウチをここから出してくれるのはずっと後でもいいから! ねっ? お願い!」


 あの時、あの剣とあの女のことを見捨てていれば、俺の異世界ライフは今とは随分違ったものになっていただろう。


 でも、あの日俺はあの剣とあの女のことをどうしても見捨てることができなかったのだ。


 なぜなら、俺はだったのだから。



※※※

第12話も最後までお読みくださりありがとうございます!


ここまでで、俺(ルーフェンス・マークス第142番伍長)のことを応援してやろう、もう少し見守ってやろうと思われたら、作品フォローや★評価してもらえるとすごくうれしいです!(応援コメントやレビューコメントもお待ちしております!)


【次回予告】

第13話 魅惑のダンジョンマスター❤️


 俺(ルーフェンス・マークス第142番伍長)の前にダンジョンマスターが現れる!

 激しいバトルになるのか、ならないのか、❤️が気になる第13話っ!


 どうぞ続けてお読みくださいませ

m(__)m

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