八尺様♂と女子高生

Qoo

第1話

 おじいちゃんちがある田舎。

 恵実がここに来たのはやっぱり今がお盆の季節だからであり、それは何も今年が特別というわけではない。

 毎年同じように来て、同じように一週間ほど滞在しているから、17歳の夏、17回目ともなれば慣れたものだ。


「恵実ぃー。ちょっくら坂本さんちにとうもろこし持ってってくんねぇか」

「やだぁ。熱中症になっちゃうもん」

「ならねならね。傘さ貸してやっからな」

「えー…。仕方ないなぁ」


 それまで朝顔の柄のうちわをあおいで、縁側に寝転がっていた恵実がのそりと起き上がる。髪はボサボサになっていて、それを手櫛で直しながら立ち上がった。


 坂本のおじいちゃんとは前も何回か会ったことも、遊びに行ったことだってある。道も覚えている…というか、田んぼをいくつか挟んだだけなので迷いようがない。

 袋はコンビニのビニールを再利用。くしゃくしゃになったそこにおじいちゃんがどんどんとうもろこしを入れていく。


「ほら」


と、手渡された袋はずっしり重い。

 げんなりしながらそれを受け取って、玄関にかけっぱなしになっているおばあちゃんの日傘を貸してもらった。おばあちゃんは今市内の病院に入院していて、両親はそちらに行っている。恵実も最初の方はお見舞いに言ったけれど、「おじいちゃんが心配だから」とこっちに一人で寄越されたのだ。


 日傘をさしてもまぁまぁ暑い。けれどまぁ、いつもよりは楽である。

  下がアスファルトでない分、照り返しも少ないし。とうもろこしは重いけど、通学バッグほどじゃない。ダラダラと足を進める。


 恵美は暫く足元を眺めて俯きながら歩いていた。けれど段々首も痛くなってきて顔を上げる。

 するとチリ、と目の端に焼けるような眩しさ。思わず目を瞑って、3秒、5秒くらいした後にゆっくり開いた。

 何だったんだろ。と、愚痴を吐くような気持ち。止まっていた足をもう一回動かす。


 歩きながら、恵実の視界の端に誰か人の姿が見えた。女の人だろうか。長い髪で帽子を被って、下半身は黒い。多分ロングスカートだろう。

 若い人に見える。珍しいな、と思った。

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