第四夜 ライバルも曲者ぞろい?
第17話 来客
「間宮くーん、スマホ取ってー」
「はっ!」
今日も今日とて、部室にはゆったりとした時間が流れている。部活に昇格したからといって、そんな日常が変わることはない。変化があったとすれば、正式に部費を請求することができるようになったことくらいか。まぁ、そのために毎月研究成果を提出しなければならなくなったのは面倒だが。
「そう言えば、今年はどうするんです?」
「あー……もうそんな季節かぁ」
何だろうか。三人は何かを懐かしむような表情で話し始める。
こんな冬の真っ只中に、いったいどんなイベントがあるというのだ。
「風太君は初めてだもんねー、大会」
「大会? なんのです?」
「お前、本気で言っているのか?」
あきれたように側近君が声を上げた。どうやらこの部にとって、相当大きなイベントであることは間違いないらしい。
「S・スポーツっすよ! ほら、前に副部長と先輩がやったあれです」
「ん、あぁ……」
そんなこともあったな。なんだっけか。いかに質の高い睡眠ができるかを競う……そんな感じだった気がする。正直あの場のノリで言っていたのかと思ったが、実在していたのか。いまだに信じれないが、三人を見る限り嘘ではないらしい。
「あれですよね。初見殺しで俺が散々な目にあった……」
「馬鹿でも理解できたようだな。そうだ、あの競技だ」
「誰が馬鹿だ!」
「お前のことを言っているんだ馬鹿!」
「はい、ストーップ」
言い合いに発展しかけたところに、部長が割り込む。その目は、いつになくやる気に満ち溢れていた。
「とにかく、風太君は練習しておかないとねー。まだ一回しか経験してないし」
「はぁ……」
とはいっても、睡眠を練習するってなんだ? そんなことが本当にできるのか。
疑問に思っていると、部室の扉をノックする音が聞こえた。
「失礼するぞ」
「お、お疲れ様ー」
現れたのは会長だった。
今日は珍しく、生徒会の面々の姿はない。いや、前が異様だっただけか。
「お前たちに客だ。他校の睡眠部だと言っていたが……」
困り果てた顔で会長は言った。心なしか疲れているようにも見える。
それよりも気になったのは、部長たちだ。彼女の言葉を聞いてから、石像のように固まってしまって動かない。
「まさか……」
「だろうな」
「あー、来ちゃったかぁ……」
流れについていけない。だが、皆の反応を見ている限り、喜ばしい来客ではないのだろう。というか他校にも睡眠部なんてあったんだな。
「とにかく、応接室で待たせている。早く行ってやってくれ」
それだけを告げると、会長はそそくさと部室を後にした。
部屋にどんよりとした空気が流れる。部長たちをそこまで沈ませるなんて、来客はどんなやつなんだ。とはいえ睡眠部だ。どうせロクでもない人たちばかりだろう。だが、せっかく来た客を待たせるのもしのびない。
「あ、あの……とりあえず行きませんか?」
「あ、あぁ……」
「そうだね……」
やりにくいなホント。
気まずそうに歩く部長たちに合わせるよう、俺はのそのそと応接室に向かった。
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