第2話 令嬢との婚約

 ロームは、突然両親から他国の令嬢との婚約が決まったことを聞かされた。ロームは急な話に抗議をしたが、両親は国のためだと言って聞き入れなかった。



「政略結婚……か」



 ロームは忌々しげに呟いた。ロームは頭の中で、両親に対する悪態をついていた。


 くそ、まさかこんな方法で強引に結婚をさせようとするなんて! 当事者である俺に話も通さず婚約だと!?


 アンとかいう令嬢なんて知りもしないのに。確か、あの国は金や銀といった資源が豊富なんだったっけな。


 どうせ我が国の軍事力を高めるためにその資源を貰うつもりなんだろう。だからって、俺を国のための道具みたいに扱いやがって……!


 恋人のエリスのことは知っているはずなのに。身分が低いからと気に入ってはいないのは分かっていたが……。それでも令嬢であるエリスを表立って蔑ろにはできないと踏んでいたのに。


 ロームは怒りのあまりギリっと歯ぎしりをした。


 だが、すぐに気持ちを切り替えてエリスと過ごすための方法を考え始めた。



「最も手ばやいのは、婚約破棄……しかし……」



 立場的にはロームの方が上だ。したがって、アンから婚約破棄を申し出ることはできない。


 当然、ロームもそれは分かっていた。


 だからといってロームから婚約破棄を切り出せば解決ともいえない。両親という壁があるからだ。


 勝手に婚約を決められるのだ。当然、根回しもされているだろう。婚約破棄を申し出たとて、上手くいかない可能性が高い。



「例え婚約破棄できても……エリスと共になれなければ意味がない」



 ロームは一人、思考を巡らせていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る