第6話 テレキネシス

 テレキネシスは難しいらしい。

 テレパシーがあるのだから、テレキネシスもあるのだろうと、アキラにコードを使ってパスで訊いてみたら、テレキネシスはなく、基礎魔法を組み合わせた応用魔法の部類に入るうえに、本格的にテレキネシスを使おうとすると、五番目のディメンションに入るので難しいのだとか(1〜5に向かって難しくなる)。

 なので一番簡単な、物を浮かすところから始めてはどうか、とアドバイスをもらった。

 これなら、2のバフで、デバフで質量に作用して軽くしたり、3のエフェクトで質量を変化させて軽くさせたりできるらしい。ちなみに何で違う魔法で同じようなことができるのかは、アキラも分からないそうだ。まあ、5のディメンションでもできるみたいだし、なんなら4のマテリアルで質量の軽い物を造ればいい訳で、単に自由度が高いと考えておいた方が良さそうだ。



「さて、まずは一番簡単らしい2のバフで物を浮かせてみる。から始めてはみるか」


 確かやり方としては、①物と自分とをパスで繋ぐ。②軽くなれと念じる。これだけだったな。簡単そうだ。

 オレはその辺に転がっている適当な石を左手にのせて、右手をかざすと、(軽くなれ〜)と念じてみる。

 …………浮くどころかピクリとも動かない。



『何が悪いんだと思う?』

『二度目のご利用ありがとうございます。じゃねぇよ。早すぎじゃね? まだ五分経ってねぇぞ』


 いや、知らんがな。パスだけ教えてどこかに行ってしまった奴に、言われる筋合いはない。


『多分それはイメージ力だな』


 どうやらただ念じればいい、という訳じゃなさそうだ。明確に浮いている石。軽くなっている石をイメージして、それを石に伝えなければならないようだ。


 という訳で二度目の挑戦。

 今度は明確にイメージする。

 この石は軽い。空気より軽い。この石に質量なんて無い。…………。

 そしてこのイメージを石に送る。

 届けえ、届けえ、お前は軽いんだ、浮ける、浮く、浮くんだ!

 そんなイメージを石に送っていると、一瞬、石が軽くなった気がする。いや、なったはずだ。そのままイメージを送り続けるオレ。

 すると、フワリと石が手のひらを離れ中空に五ミリほど浮いた。

 いやったーッとガッツポーズをしたところで、ポトリと地面に落ちる石。…………集中力大事。


 三度目の挑戦。

 浮く、お前は浮くぞー。とイメージを送っていると、さっきより早く石が浮いた。と思ったら、そのまま垂直に上空へヒュウーンと、糸の切れた風船のように飛んでいってしまった。

 そりゃあ、空気より軽かったらそうなるよな。


 四度目の挑戦。

 軽くなれ~、浮け〜、でも浮き過ぎるな〜、と自分でも何言ってんだって感じのことを考えながら、それでも真剣に念じていたら、なんとか、手のひらから三十センチほどの中空で石が留まった。

 成功である。


 はぁ、疲れた。もう今日は寝よう。…………どうやったらこのゲームお仕舞いにできるんだ?

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