第2話 マグ拳とは?

「アキラ……なのか?」


 問うてみたが自信がない。顔立ちはまんまアキラなのだが、金髪碧眼なのだ。しかも革のライダースジャケットなんか着ている。イメチェンだろうか? いや待て、これはゲームだ。ゲームの中にアキラがいるはずない。あいつは今、自分の家にいるはずである。


「そうだよ。この顔忘れたのか?」


 オレの問いを肯定するアキラ(?)。


「でも金髪だし」

「そういやキャラメイクで、金髪に碧い眼にしてたんだっけ」


 キャラメイクとは、オレがやった自分の容姿を決定するアレだろうか? アキラがそのキャラメイクで容姿を変えてここにいるということなのだろうか? だとしたら、


「何でウチにいるんだ」

「…………いやお前ん家にはいねえよ」



 何でもこのゲームはVRMMOとかいう種類のゲームで、端的に言えば、テレビ電話の未来版のようなものだ、と嘆息まじりに説明された。なるほど。それにしてもリアルだ。すぐに目の前にいるどころか、触れもしてしまうなんて、オレが本に逃避していた間、世間はとんでもなく進歩していたらしい。


 さてそんなオレとアキラは今、街を離れ草原にいる。何故いるのかというと、アキラがマグ拳の修行をつけてくれるのだとか。いらんお世話なんだが。


「で、どうだ? このゲームの感想は」

「感想と言われても、始めたばかりだからな。とりあえず、触れるぐらいリアルだということしか分からん」

「リン、お前ちゃんとチュートリアルやったか?」

「あの白い空間か。……何だか分からんうちに追い出された」

「マジか? そんなことってあるの?」


 オレもそう思うが、事実だから仕方ない。


「じゃあとりあえずスッゲー基本的なことから教えるわ。マグ拳が何か分かるか?」


 オレは首を横に振る。これも仕方ない。だってアキラ、マグ拳ファイターをやれとしか送ってこなかったじゃないか。


「はぁ、しょうがねぇなぁ。いいか、マグ拳のマグってのはなぁ、MANGA、ANIME、GAMEの頭文字から取られているんだ。つまり、マンガ、アニメ、ゲームのあんな技や、こんな魔法が使えるようになる! それがM・A・G、それがこのマグ拳ファイターなんだぜ!」

「…………」

「アレ? テンション上がらない?」

「オレ、マンガも読まないし、アニメも見なけりゃゲームもやらないんだけど」

「…………」


 どうもこのゲームオレと相性が悪い気がする。オレが踵を返して街へ帰ろうすると、


「いや待て、ちょっと待て、お前だってラノベくらいは読むだろう?」


 確かに。ラノベには目を通すな。


「そんなラノベの、あんな技やこんな魔法が使えるようになるんだぞ?」


 なるほど。そう考えるとテンション上がるな。

 オレはアキラの修行を前向きに受け止めることにした。

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