メイドさんがんばります
まっこさん
1章 メイドさんと領都
01話 メイドさんはじめまして
あんのお転婆ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!
………
…こほん、失礼しました…私はティアと申します。現在グラン=バルトフェルト辺境伯のお孫様で次期辺境伯ラウール=バルトフェルトの第二子である長女のマリン=バルトフェルト様付のメイドをしております。
年齢は19歳・髪は黒でおさげ・身長は155センチとあまり伸びませんでしたがその分「付くべき所にはしっかり付いた」という感じです。瞳はトパーズ、こちらも「諸事情」で丸メガネをかけておりますが目が悪いというわけではありません。
好きな物はかわいい物・甘い物。嫌いな物は特にありませんが苦手な物は「火」。今でこそ慣れはしましたが小さい頃は見るだけで泣き叫んで我を忘れるレベルで嫌いでした。その理由は後程…。
…というわけで朝っぱらからお部屋を脱走して使用人を翻弄しながらお庭を駆け回っているおt…お嬢様を回収しに行きたいと思います。少々はしたないですが窓を開け屋敷の3階から飛び降り風魔法を発動、ふわりと着地しそのまま
魔力を後方に展開し弾かれたように前方にいる金色毛玉…もといお嬢様に肉薄し衝撃でお怪我をさせないよう速度を調節し…
「確保!まだまだですねお嬢様♪」
むぎゅぅぅぅっとお嬢様を抱きしめます。
「ぐぇぇぇ…悔しい…そして苦しい…」
胸に埋まる金色毛玉がぺちぺちと私の腕をタップするので我に返り力を緩めると綺麗な緑と青のオッドアイが現れます。
「おはようティア」
「おはようございますマリンお嬢様♪」
…あ、二つほど忘れておりました。大嫌いな物は私の家族とも言える「バルトフェルト家に害なす者」、大好きな物は「マリンお嬢様」です。
「んもぅ!何で毎回毎回すぐに捕まるの!?風魔法も合わせて逃げてるのにティアにはすぐに捕まっちゃう!」
と椅子に座り文句を言いながら髪を梳かされるお嬢様。あぁ…毎日梳いてますが飽きないほどの絹糸のような美しい髪…赤みがかった金髪、ストロベリーブロンドとでも言いましょうか…顔を埋めてスーハーしたい衝動に駆られますが鋼の理性で耐えつつ
「お嬢様の動きは単調ですし魔力の練度もまだまだですので魔力量が多いといえどもまだまだ遅れはとりませんよ♪」
とまぁ朝の恒例行事と化したこのやり取りを終え朝食の場にて
「マリンはまた脱走したのかい?そろそろ朝は侍従組か騎士組に見張ってもらわなきゃダメかねぇ…」
…と言い回しは違えど苦笑いするのは当主であり国家魔導具師のグラン様とその長男のラウール様とその長男のユーリ様。
「マリンももうすぐアカデミーに入るのですからもう少しお淑やかなフリを覚えなければいけませんよ?勉強ももちろんですがお相手の目星を付けるのも立派な目的なのですから。」
…と苦言を呈したフリをして身もふたもない事をおっしゃるのは侯爵夫人のマリア様とラウール様の奥方のロゼッタ様。
このお宅では割と女性陣の方が過激なのですがそれでも見本のような淑女であるのがすごいです。
「それじゃ抜け出す前に捕まっちゃうじゃない…。いまだにレンブラント・マクスウェル・ティアからは逃げ切れる気がしない…。それに私はお爺様の跡を継いで国家魔導具士になるのが目標だから結婚はあんまり考えられないかなぁ…」
「まったく…せっかく『サファイア』なのにちょっと勿体ない気もするけどマリンのアイディアで出したプラネタリウム…だったかしら?あれの評判もすごくいいものねぇ…。」
「長い事魔導具士やっとるが俺は実用一辺倒だからああいった物は思いつかなかった。おかげさまで王家への献上品としても好評だったしかなり売れているからまた何か思いついたら遠慮なく言っておくれ。」
この世界には魔法と魔導具と呼ばれるものが存在し生活に根付いています。
魔法は火を出したり水を出したり戦闘や日常生活のありとあらゆる所で使用されその尺度とも言えるのが魔力量です。
魔力量はその人が持っている魔力の総量の事で具体的な数値はありませんが魔法を発動した際に目の色が変わり、その色によって宝石になぞらえたランクがあります。
上から
ダイヤモンド
サファイア
ルビー
エメラルド
と魔力の高い人は四大石に例えられていますが一般的にはトパーズのようなオレンジがかった色になるのがほとんどです。その他にもオパールやアメジストなど珍しい色の場合は特殊な職業に就くことが多くオパールは【鑑定士】と言われる子供が5歳になると全員受けることが義務付けられている魔力量チェックの儀式を行う能力があると言われていてグラン様とユーリ様がそれにあたります。
魔導具は魔物の体内で生成される魔力を宿した石「魔石」やその人が持つ魔力を増幅し、それを動力として動く道具の事で魔力がなくとも使う事が出来るため綺麗な水が供給される水道・明かり・厨房・武器など人々の生活に多大な恩恵を与えている物でグラン様はその大家でもあります。
その中でも「魔導義肢」は病気や怪我で手足を失った人に希望を与えそれを発明したグラン様は国家魔導具士に認定されました。実は私も幼い頃に右脚を失っておりその恩恵を受けた一人でもあります。
「入学までの目標はティアの義足をもっとかわいいデザインにする事!お爺様のデザインはカッコいいけど女の人が着けるには無骨すぎるもの!」
え?何この天使?見た目だけじゃなく中身も素晴らしいとか…
「お嬢様…私は旦那様に立ち上がる足をいただけただけでも十分すぎる程ですのにそこまでしていただくのは贅沢にも程があります」
「私が作りたくてやってるからいいの!基本構造はもう教えてもらったから後は華奢にした分の補強とデザインだけだもの!」
「そうね、どうしても無骨だと社交に出る時に気後れしたり性格の悪い連中から色々言われたりするからベースが出来上がったらいっその事デザイナーも抱き込んで逆に見せびらかせるくらいに素敵なものにしてしまえるわね。」
マリア様も乗り気である。このご家族は騎士や使用人にも領民にもお優しく当然の如く慕われていて東西南北の辺境伯の中でもダントツの人気なのでその家に使える侍従としては鼻が高いです。
和やか(?)な朝食も終わりそれぞれのお仕事が始まろうかという時、ノックの音とともに執事筆頭のレンブラント様が現れ…
「そろそろご朝食もお済みかと思いますが腹ごなしの運動などいかがでしょう?」
---------あとがき------------------
ご覧いただきありがとうございます。初作ですので拙いところも沢山ありますが、もし楽しみにしていただける方がいらっしゃれば頑張ります。
加筆・修正等はあとがき・近況等でお知らせ致します。
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