第10話
帝都のすぐ手前にて、勇者と魔王軍大元帥の死闘が繰り広げる中、人類連合軍と魔王軍の戦いも終わりが見え始めた。帝都の元々の戦力と勇者の存在のかいあって、最初に優勢だった魔王軍の方が不利になってきたのだ。
当初、魔王軍が優勢だったのはストレング・ライスが勇者オルカート・ウィンターとエアスト・ノスモルに二人を相手に戦って勝利目前だったからだ。二人もの勇者を相手にしても、ものともしない実力を見せつけることで魔王軍の士気を上げてきたのだ。実際、エアストとオルカートは重傷で戦線を一時離脱を余儀なくされた。何事もなければ魔王軍の勝利は間違いなかった。
だが、今は違う。オルカートがとどめを刺される直前に現れたセイブンの登場によって状況は一変する。セイブンはストレング・ライスと一騎打ちで戦うことになり、そしてほぼ互角の戦いをこなしているのだ。その事実に誰もが驚いた。人類連合軍も魔王軍も、そしてオルカートも。
つまり、今度は人類連合軍の士気が上がり、逆に魔王軍の士気が下がったのだ。指揮官である大元帥がたった一人の勇者に苦戦し始めるのだから魔王軍の士気が下がるのは当然だった。それにストレング・ライス自身は短慮なところもあるが部下たちからは信頼もされている。それが仇となったわけだ。
「が、がはははは………! この俺様を、ここまで追い詰めるか!………」
「はあはあ………まだまだ、終わってねえぞ!」
戦い続けるセイブンとストレング・ライスは、もう互いに体もボロボロ、体力も魔力も尽きかけていた。そして互いに、後一撃出したら終わりというまで限界が来ていた。
「そうか、なら、次で決着だ! テメエの最後の根性を見せてみやがれ!」
ストレング・ライスは拳を巨大化させる。それに対しセイブンは聖剣に残りの魔力全てをかける。この戦いに決着をつけるために!
「おおおおおおおおおおおおお、『聖剣インパクトオオオオオオオオオオオオオオオオ』!!」
「おらあああああああああああああ、『理砕多留・魂叫阿吐(リサイタル・コンサート)』!!」
巨大なオーラを纏った聖剣と巨大な拳がぶつかった。勇者と大元帥。互いに残る全ての力を掛けて相手にぶつけあう力の押し合いのような状況は、第三者が踏み入れることができないほどの衝撃を巻き起こしていた。
「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」
しかし、そのぶつかり合いも必ず終わりが来る。どちらか一方が少しでも力が弱まれば負けるのだ。
「…………くくく、この俺様を、人間が……」
そしてそれは、ストレング・ライスの方が先だった。
「すまねえな……魔王様……」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
ストレング・ライスは、聖剣から放たれた強大な光の中に消えていった。つまり、魔王軍は指揮官を失ったということだ。
その後は、人類連合軍の大反撃。信頼された指揮官を失った魔王軍は統率も勢力を無くし、一気に士気も下がった。最初の優勢だった状況が嘘のように、逆転。最後は魔王軍の撤退により、人類連合軍の勝利に終わったのだ。
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