第4話

 大元帥クワイエット・ソースが撤退した後、三人の勇者が合流した。



「タヒナ! 無事だったか! よかった~」


「もう、セイブンは大げさ……なんて言えないわね。心配して来てくれてありがとう」


「しかし、追い詰められたと聞いていたけど逆転していたとは……流石は魔法賢者ポエイムだね」


「いやあ、それほどでもあるさ~」


「「っ!?」」


 そして、もう一人勇者が合流してきた。


「ポエイム、お前がタヒナを助けてくれたんだってな! 本当にありがとう!」


「助けてくれてありがとう! でも、バイパーさんの支援に言ってたんじゃないの? そっちは良かったの?」


 その通りだった。ポエイムは本来、魔王軍五大元帥のストレング・ライスと交戦していたバイパーの支援に向かっていたのだった。クワイエット・ソースと戦うタヒナの援護は困難なはずなのだが……。


「そうだったんだけどね~、もうバイパーさんが勝っちゃったらしくてね。僕はそんなバイパーさんの大怪我を地長に専念してたんだ」


「「バイパーさんが勝った!?」」


「なんと、バイパー殿は勝ったというのか!? 魔王軍五大元帥最強と言われたあのストレング・ライスに!?」


 セイブンもタヒナもオルカートも驚いた。ストレング・ライスは魔王軍五大元帥の中でも一番の実力者であった。好戦的で戦闘能力ならば魔王に次ぐといわれるほどの存在。それに勝ったという事実は衝撃的であった。


「そうさ~。まあ、打ち取れてはいないけど撤退はさせられたんだ。命に係わるほどの重傷付きだけどね」


「……いや、撤退させただけでも凄い功績ではないか。バイパー殿」


「しかしよぉ、重傷をおったなんて大丈夫なのかよ!?」


「しっかり治療したんでしょうね!?」


「うん、ばっちり……と言いたいんだけど、一命をとりとめることができた。それだけは言えるね。よく息を吹き返してくれたと思うよ」


 ポエイムは笑いつつも顔が少し青くなった。重症のバイパーの姿を思い出したのだ。今まで見たことも無いほどの重傷で、そのうえで息をしているのだから震えすらしたことも。


「……そんな状態のバイパー殿を救えたのは君がいてくれたおかげだよポエイム。しかし、これでバイパー殿は戦線離脱、いやもう戦場に立てるかどうか怪しいな……」

 

「そうだねえ……戦線復帰はとても無理かもしれないね……」


 勝利は嬉しいが、バイパーの状態を知って少し気落ちするオルカート。ポエイムも同じ気持ちだった。しかし、それでもめげない者もいる。


「何言ってんだ。生きてただけでよかったじゃねえか! これからは若い俺達で魔王軍を相手に戦ってやろうぜ! バイパーさんはもう十分戦ってきたんだろ? だったら今度は俺達が頑張る番だ!」


「そうよ、まだ戦いはこれからなんでしょ。いつまでもしんみりしない!」


「セイブン……タヒナ……」


「そうだね。君たちの言う通り、僕らも含め、まだ勇者はいるんだ。ここで立ち止まっている場合じゃないよね」


「その通り! 分かったなら他の皆も助けに行こうぜ!」


「あっ、待ちなさいよセイブン!」


 こうして魔王軍大元帥たちを退けた勇者たちは先へと進む。人類の勝利のために。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る