メブスタ男爵家調査依頼(八)
轟音。閃光。
学生時代から気付いてはいた。ラミカは魔術の才能に溢れ、幼少から当然のように操ってきたためか、その魔術は丁寧さと効率に欠ける。この【
「我が内なる生命の精霊、宿りて輝け!【
愛用の
だがこの圧倒的な存在に対して効果は微々たるものだった。小うるさげに出現させた、ただ一個の【
「ユイちゃん!」
「……っ、こっちは大丈夫、だよ!」
二十歩四方あまりの部屋が黒く染まった。闇色の球体が次々とラミカの【
「どうしたのラミカ!もう
「ううん、まだ大丈夫、だけど……」
「じゃあ弱気になっちゃ駄目!撃ち合わなきゃ!」
ラミカの
「わかった、でも……」
魔術の威力は術者の精神状態に依存するものだ。ラミカの【
逆に私は、と考えて急に
「万里を駆ける風の精霊、我が剣と共に舞い踊れ!【
軽く放り投げた
「ラミカ、【
「えっ、うん……」
その間こちらは時間稼ぎ。闇を撒き散らしながらラミカに迫る
「ユイちゃん、いくよ!」
「早く!」
だが不格好な手つきでラミカが投げた私の剣は、あらぬ方向に飛んで床を滑った。
一瞬の空白、異界の魔物も私達の間抜けぶりを
「来い!【
床に転がった剣は生き物のように跳ねて私の右手に収まった。先程までとは違い、天才魔術師の魔力を付与された
真横に一閃。骨と皮ばかりの手を二つまとめて両断した。
真上からの斬り下ろし。黒いぼろ布を真っ二つに裂いた。
「ラミカ、お願い!」
言い終わらぬうちに極太の【
「ぶへー……疲れたぁ」
ラミカは魔力よりも体力を使い果たしたのだろう。だらしなく床にお尻を着き、スカートから白い足と黒い下着を盛大に覗かせている。
崩れ落ちた壁、かつて窓であった穴、原型をとどめない調度品。光と闇の
メブスタ男爵テトリクスさんも全てが終わったことを悟ったのだろう、命なき妻よりも虚ろな目で宙を見つめていた。
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