ヌメヌメ町

ナマコ

第1話

私は、土日の休日雨が降っていたが、気分が良いので近くの公園を散歩している。

かなりの大雨だが、私以外の親子連れもジョギングしている人達は傘を差していない。

当然服も体もぐしょぐしょになってしまうがナメクジ頭のおじさんも蛙頭の親子もみんな満足している。

もちろん顔全体にケロイド状の火傷跡のある私も。


数年前、地球に宇宙人が訪れた。

戦争で住む星がなくなったので、地球に飛来してきたそうだ。

一時期世界的なニュースになったし、私達地球人は快く向かい入れた。

だが政府が受け入れても、国民は受け入れがたい場合があった。

宇宙人の見た目は、蛙、ナメクジ、ナマコ、蛸、などなど、基本的にヌメッとして柔らかい感じの人達だった。

当然生理的に受け付けない人間達もいるし、ひどい場合は彼ら宇宙人を殺めてしまう人間もいた。

そこで、人間社会に馴染めない宇宙人達のために自分達だけの町を作り上げた。

通称「ヌメヌメ町」

そこでは、宇宙人のみ生活している町だ。

なんの衝突もなく平和にみんな暮らしている。


私がヌメヌメ町に引っ越した訳は、人間に疲れてから。

私は女の子でありながら、幼いころから虫や毒のある生物の本を読むのが大好きで、小、中、高と変わらなかった。

友達とか恋愛にも興味がなく、そんな私は変わっていると言う理由でからかいの的だった。

家族にも理解してくれなかった。

そんな生活が続いて、ほとほと人が嫌いになった。

人間なんかより虫のような生き物の方が純粋で美しいと。

そんな人間が就職活動なんてする気がなく、ずっと家に引きこもる生活をしていた。


ヌメヌメ町は私にとっては希望の光だった。

仕事も住まいもヌメヌメ町で探して死ぬまでそこに住めばいい。

何より人と関わらなくていいから。

当然家族は猛反対した。

そんな町に引っ越したくないと。

実質私は一人暮らしを余儀なくされたが、それでいい。

理解のない家族と永遠に縁を切っても構わない。

だが問題が生じた。

ヌメヌメ町の住人は人間を恐れている。

人間の私がヌメヌメ町に住人登録するにも、市役所ですら入れない可能性がある。

特に容姿の問題がある。

人間は自分達宇宙人の姿を毛嫌いしない理由が必要だった。

つまり、ヌメヌメ町に住みたいのなら、容姿を変えなければならない。

だから私は思いきって、顔に熱した油を被った。

死ぬかと思ったが、成功した。

幸い視力は無事で、見事に顔が崩壊した。


晴れて私はヌメヌメ町に引っ越すことができたのだ。

この町の人達は人間と違って、勤勉で真面目で優しい方々ばかりだ。

犯罪も何一つないし、私にとっては楽園そのものだ。

私は今までの人生の中で一番な幸せな時間を過ごしている。

これからもそれが続くだろう。

ケロイド状の火傷の顔で、笑みが溢れた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ヌメヌメ町 ナマコ @yominokoe08

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ