白紙の中央に

ごぜん

白紙の中央に

 聞こえますか。

 私の声が聞こえますか。聞こえているようですね、よかったです。

 ここは真っ白ですね。何もない。どうしてこんなに真っ白なんでしょうね。

 あ、申し遅れました、私はきりこと申します。ここで暮らしている者です。ようやくこうして声を聞いてもらうことができました。本当によかった。

 このまま誰にも気づかれなかったらと思うと、本当に怖かったんですが、よかった。

 いきなり現れて何かと思われたかも知れません。用があるのかと聞かれれば答えられませんが、せっかくなので、ちょっとお話を聞いてほしいです。

 実は道に迷っていまして。気がついたらこんな真っ白な空間にいたのです。ここが何処か、全く見当もつきません。そして、どういうわけでここに迷い込んだのか。

 一つも分からないのです。でも多分私はここから出られません。もう何年も彷徨っているのに、ずっと真っ白なんです。おかしいです。歩いていても、誰にも出会わないんです。

 あ、でも以前、偶然出会った方もいました。しばらく一緒に歩いたり、話したりしていたのですが、いつからか、体が薄くなってしまいまして…最後は消えてしまいました。一体どうしてでしょう…

 はあ、このまま私も消えてしまうのかもしれません。怖いです。

 この世界は本当に寂しいです。いつか賑やかになる日は来るのでしょうか。そうなったら、あの人も戻ってくるかもしれませんね。あの人は、以前までは結構賑わっていたと遠い目をされていました。ああ見えて、私よりもずっと前にここにいたようです。でも、どうしてこうさびれてしまったのか。あの人にも分からないみたいです。彩がどうとか、言っていたような。彩……?

…ああ、結局何も分からず終いですね。

 でも何もない世界であなたと えて本 によかった。

 あれ、音が途切 て…

 ああ もう わりらしいですね。

 ま 寂しく りますね。

 聞いて れて、  がとう。

 ん?も かして  なん 、そうい ことか。

 こ でようや 分かり した。

 でも時 が  いよう すね。

 じゃ 、最 に一つ わせてくだ  い。

 聞こ なく っても、どう お元気 。

 こ 白 を、彩っ く さい。

 あな だった です 。この 界 彩れ 存在。

 私 はずっ 待って ます。

 どう 、おね  します。

 

 

 

 

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白紙の中央に ごぜん @am05

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